今、日本では卒業シーズンのようだ。
オレも幼稚園、小学、中学、高校と4回卒業式を味わった。
特に想い出に残っているのは幼稚園と高校の時の卒業式かな。
今回は幼稚園は置いておいて高校の時の事を話そう。
中学の時、まあまあ勉強は出来る方だったので、いちおう市内でナンバーワンと言われている進学高校へ入る事が出来た。
高校一年の一学期は勉強をがんばった。
同学年の定員450名の中で成績は18番だった。
(堀内、桑田の背番号と一緒、ははは。オレは巨人ファン。)
悪くない。
このまま、早稲田か中央大学へ進学する事が予想された。
しかし、人生はツイストの連続だ。(世良公則、サム・クック!)
中学の頃からギターを弾いていて、3つ上の先輩のバンドのギタリストが急遽出来なくなったので、そのバンドに誘われた。
あの頃の3歳の違いはかなりデカい。
そのバンドに加入するのはかなり緊張したが、トライしてみたい、という気持ちが勝ってそうした。
夏休みに市内のライブハウスで初めて演奏した。ジャズクラブみたいな場所だ。
演奏後、アフターパーティーみたいな雰囲気で先輩達や年上の女性達が酒やたばこをやりながら、ワイワイ雑談している雰囲気を味わった。
同じ時期にジョンレノンの伝記を読んだ。
突然、高校での勉強が馬鹿々々しくなった。
勉強を一切辞めた。
2学期の成績。
ビリから2番のブービー賞。
その状態は卒業するまで続いた。
周りのみんなは偏差値などを気にして、先生たちにおべっかを使っていた。
オレや就職という道を選んだ連中はそんな事おかまいなしに、高校ライフをエンジョイしていた。
わざと遅刻したり、午前中の授業はふけて、お城がある山に登ったりしていた。
その代わり、学校から帰宅後は毎日ギターを弾いていた。ギターを弾くことが楽しくてしょうがなかった。
別にこれが自分が世界に出た時に勝負する為の武器になる、という風には思っていなかった。
と、同時に誰にも負けないという若さがあった。
高校3年生の時に三者懇談があった。
担任の先生(若い女性で初めてクラスを受け持った吉岡先生)、母親、オレ。
進路の話だ。
「フジモト君はどうしたいのでしょう。大学に進学する場合はいくつか候補がありますが。」
「ああ、オレ? オレはもう大学に行く気は無くて。とりあえず東京に出て世界で通用するロックンロールバンドを結成するから。」
「お母さまはそれでよろしいんですか。」
「この子は言い出したら聞かない子で。この子のやりたいようにやらせます。」
「て、いうか先生、オレ以外の生徒の面倒をみるの大変でしょう?オレと話すときぐらい、リラックスして休憩しなよ。」
まあ、そんな感じのノリだった。
ませたガキだった。
そして卒業式に突入。
オレはみんなに言った。
「あの普段のわけのわからない厳粛なムードをぶち壊してさ、思いっきり楽しくやろうぜ!」
「そうだな!」
みんな賛成してくれた。
卒業生入場。
俺達はまるでボクサーかプロレスラーが蔵前国技館に入場するようなかたちで、両手を高々と掲げ、入場した。
そんな事を予想していない2階席に座った父兄たち。
もう総立ちで歓喜していた。
割れんばかりの歓声!
ははは、そうそう、これがロックンロールだよ!
(校長先生はこんな最悪な卒業式は初めて、と言っていたけど、サマーミロ。お前らみんな面白くないんだよ。)
式を終え、みんなクラスルームに戻った。父兄も一緒に。
担任の吉岡先生の最後の言葉。
途中で感極まって泣き始める。
オレの母親がオレに叫ぶ。
「カズ、何やってるの。早く先生のそばに行って慰めてあげなさい!」
オレは同じクラスの野球部の主将の山中君を誘って先生のそばに駆け寄った。
「先生、大丈夫だよ。この一年ありがとうね。先生のおかげでみんな楽しい時を過ごす事が出来たよ。」
吉岡先生とはあれ以来会っていないが、幸せな人生を送っている事を祈る。
卒業式の後は当然みんなで街に繰り出した。
ヤンキーの先輩達、普段は厳しかった古文の先生などに出くわす。
オレ達も居酒屋でいい感じになって、途中で出会った女の子達とカラオケボックスに行く。
オレの仲間で「粒」というあだ名の男がいて、そいつは酔うと、服を全部脱ぎ捨てて、すっぽんぽんになるという癖があって。
それでせっかくゲットした女の子達も逃げるように退場。
「おい、おっさん。たのむで!」
そんな感じでオレの卒業式は終了した。