大仏の目 | 風又長屋

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    徒然なるままに綴り候
    

☆大仏の目☆



  「あれ? どこだ? どこにいったんだ?」

ここは、むかしむかしの、奈良の大仏がある東大寺です。

ある日、大仏さまの目玉がぬけおちて、どこヘいったかわかりません。
さっそく、京都や大阪から、大仏づくりの親方たちをよんできて、
「大仏さまの目玉を入れかえるには、どれほどのお金がかかる?」と、値を見つもらせました。
すると、親方たちは、
「千五百両(1億円ほど)はかかる」
と、いうのです。

親方たちの考えでは、まず下で、大きな目玉をこしらえ、目玉ができたら、足場をくんで、大仏さまの目にはめようというものです。

寺の人たちは、
「高すぎる、千両にまけろ」と、いいますが、
親方たちは、 「それでは赤字です。こちらも商売ですから」と、いいます。

「まけろ」
「まけられぬ」
「まけろ」
「まけられぬ」

そこへ、江戸からきた見物のひとりが顔を出しました。
「わしなら、二百両(千四百万円ほど)で、直しましょう」
それをきいた親方たちは、
「ばかにもほどがある。なんでこれが、二百両で直せるものか」 と、笑いました。

ところが、江戸の男はこう考えたのです。
(目玉がぬけおちて、見つからんとすりゃあ、大仏さまのからだの中ヘおちたにちがいない。それをはめ直せばいいだけだ)

寺の人たちはお金がないので、江戸の男にたのむことにしました。 男が目玉の穴から中に入ってさがすと、やっぱり目玉がありました。
さっそく、かついで上にあげ、大仏さまの目に、ピタッとはめました。
坊さんや親方たちは、それを見ていましたが、
「あいつ、目玉をはめたはいいが、じぶんはどこから出てくるつもりだ。出口はないはずだが」
と、なおも見ていると、あれ、あれ、あれっ。
なんと、大仏さまの鼻の穴から出てきたのです。
みんなは感心して、
「ほほう、目から鼻へぬけおったわい」

それからです。
かしこい人のことを「目から鼻へぬける」と、言うようになったのは。



HP 2009.09.30より