拝啓 ポチコ殿 | 風又長屋

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    徒然なるままに綴り候
    


☆拝啓 ポチコ殿☆





ポチコ殿、貴女が我が家から姿を消してもう、8年の月日が流れました。本当にあっという間の時間の流れでございます。昨夜、貴女の夢を見ました。一番元気のある頃の貴方でした。

雪が積もっておりましたから、季節は冬だったのでございましょう。思い出しますよ。貴女が、わたしの隙を狙って、雪の降る夜、リードのないまま外へ逃亡した夜のことを


近所の方に迷惑をかけたら大変と、必死に貴女を追いかけ名前を呼びましたね。貴女はわたしの所へ近寄ってきては、逃げ去り、あたしをからかっていましたね。

とうとう、貴女を家の中へ戻すことは無理と諦め、就寝しましたが、朝方、かみさんがふと玄関前に目を向けると、貴女は車のボンネットの上で、玄関を開けてもらうのを待つように、チョコンと座っていたというではありませんか。かみさんが玄関を開けると、脱兎のごとく、家の中に飛び込んだという話は、今もお茶を飲みながら話題にあがっておりますよ。



居間でよく、「かくれんぼ」をしましたね。わたしがカーテンや、机の下に隠れ、貴女の名前を呼ぶと貴女はどこにわたしが居るのかと、声のするほうをキョロキョロ懸命になって探していましたね。その様子がとても、可愛く愛苦るしかったですよ。



夏の暑い日、チャリンコで10分ほどの川へ行きましたね。
あの時、あまりの暑さのせいか、貴女は急にその石狩川へ飛びこんでしまいましたね。あのときはわたしは、焦りましたよ。川の流れは急で、貴女がどんどん流されていくし、名前を連呼しているうち、足を滑らせてドボンと川の中へ落ちたわたしでしたね~。もう、貴女どこじゃなく、自分のことで精いっぱいでしたよ。
ようやく、岸にはいのぼり、改めて貴女を探しましたよ。そうすると、かなり向こうから、貴女が私を目指して一生懸命走ってきましたねぇ。あの光景は一生忘れることが出来ませんよ。二人でずぶぬれ状態でチャリンコで帰ったのを懐かしく想いだされます。




そんなか、貴女は年々体力が落ちてきて、晩年には外でオトイレに行くときも、自分では歩けず、私が抱えて行きましたねぇ。そして、用をたしたあと、あなたが立ちあがることが出来ず、そのまま倒れこんでいったのには驚きましたよ。あの頃から、もうそろそろ、お迎えが来るのかと思っておりましたが、三か月はがんばっていましたね。




お迎えが来るとき、かみさんの腕の中で最後の息を引き取ったとき、かみさんはボロボロボロボロと、大粒の涙を流したそうです。私の勤め先にも、すぐ電話がまいりましたよ。


息子たちと火葬場に行ったと、翌日の夜に聞きましたが、あたしは死に目にあっていなかったので、まもなく、貴女の二代目が欲しいと口にしたとき、かみさんは、貴女の息をひきとったときを思い出し、二度と、あのような悲しい目にはあいたくないと、許してくれませんでしたよ。




今頃どうしているのでしょうねぇ。私も随分歳をとりました。あなたとともに、過ごした14年間は夢のようです。でも、貴女と巡り合ってほんとうに良かったと思っています。
貴女のお陰で、どれだけ、家の中が明るく楽しかったことでしょう。ありがとうね、ほんとうにありがとう。いずれ、貴女のところに行きますからね。また、かくれんぼして一緒に楽しく遊びましょうね。

そうそう、貴女の写真を100枚近く、HPの「アルバム」に載せておきましたからね。暇なとき、覗いてみてくださいね。  

                

貴女を愛する父より

                  
                 
ポチコ殿御中
HP 2009.11.19 より