2017年にVAB、つまりWRX-STIの前期型(C型)を買い、2019年に後期型(最終F型)に乗り換えたワシですが・・・
もう販売終了となってしまったので今さら感は大ですが、2台乗り継いでいろいろと分かった点もあり、これから中古車を探す方もいらっしゃるでしょうから、レビューしてみようと思います。
さて、スバルは毎年のように年次改良(年改・マイナーチェンジ)があり、昔乗っていたGC8セダン(GF8ワゴン)などはA,B,C型、D,E型、F,G型と2度もビッグマイナーチェンジがあり、そのたびに外観も性能も進化しました。
おまけに普通バージョンの他にSTIバージョンもあり、さらにその中で普通バージョンと競技志向の「typeRA」に分かれていて、とてもややこしいラインナップでした。
それに引き換え、VAのラインナップはとてもシンプル。
typeSかノーマルかという違いはありますが、これは豪華装備がつくかそうでないか程度の違いでしかなく、走行性能としては同一。
そして前期A,B,C型と後期D,E,F型では、エンジンは全く同じ。
細かい部分では差異がありますが、一長一短な部分もあるので、VABは前期か後期かどっちにしたらいいか、を悩む方もいるかもしれません。
(前期型)
(後期型)
なお、自分で徹底的にいじったりレストアすることができる方なら、中古車はとにかく安く買えばいいと思いますが、そうでない方なら「なるべく高年式・低走行の車を買いましょう」としか言えません。
古くたくさん走ってる車が安いのは当たり前で、安いからと飛びついたはいいがアチコチ壊れたり交換が必要だったりして、トータルでは余計に高くつくことも往々にしてある話。
中には納車から日を経ずしてエンジンブローし、100万クラスの出費に見舞われることもあるのです。
ただ、それを言ってしまうと「じゃあ後期のF型で決まり」となってしまいますし、実際には高年式・低走行でもまともにメンテをしていない車もあれば、低年式・多走行でもきっちりメンテされている車もあるでしょうから、ここではそういう要素は抜きにします。
【前期・後期の比較】
あくまで前期型・後期型で同じ走行距離・同じ程度の使用感だとしての話。
「好きな方でいいじゃん」「新しいほうがいいじゃん」
となってしまうと話が終わってしまうので、掘り下げてみましょう。
*外観系
違うのはフロントバンパー・グリルとヘッドライト回り、あとはリアスポイラーの有無くらいなので、これは好きなほうで…としか言いようがありません。
ただ、ヘッドライトは後期型がロー・ハイともに同色の明るいLEDになり、ステアリング連動にもなったので、後期型のほうが視認性が向上しています。
*内装系
パワーシートやシートヒーターの有無はありますが、基本的には同じ。
それに少し走りに振る方なら少なくとも運転席は社外品に換えるでしょうから(純正シートは本当にクソ)、気になりません。
ただ、遮音性は後期型が上。
言われなければ気づかない程度ですが、例えばフロントガラスの板厚UPや細かい部分の吸音材追加など改良されています。
大きく変わったのはメーター類。
(前期)
(後期)
メインのメーター回りもMFDも後期型はかなり視認性が良くなり(というか前期型が悪すぎた)、またナビも画面が大きくなりました。
なので総じて言えば後期型のほうがかなり良いということが言えます。
ただしエアコンのダイヤルは、前期型のダイヤル式の方がはるかに操作性が良い(運転中でも直感的に操作できる)。
ちなみにシートは、競技をする方ならフルバケ一択でしょうけど、ワシはセミバケ。
なぜなら、普段は買い物も旅行もあり、それらのほうが使用時間のほとんどを占めているから。
食わず嫌いではなく、過去に二度フルバケにした経験からです。
↑ワシコレでした。
↓コレけっこういいと思います。高いから買わないけど…
*エンジン~吸排気系
これはスペック上は全く同じ。
ただ、ECUでチューニングをしたのか、後期型のほうがトルク感がある気がします。
またマフラーの音も前期と後期では若干異なります。
遮音性の違いで車内で聞こえる排気音が異なって聞こえるのは当然ですが、車外からも音が違って聞こえるので、マフラーもどこか内部の作りが変わってるのかも。
まあ性能的な違いはほとんどないと言えます。
しかし吸気系は前期後期どころか、基本設計はGC8後期からさして変わっていないどころか、インテークパイプの品番で言うとGRBと同じという有様。
もともとこの吸気レイアウトのせいでGC8の時代からレスポンスが悪いと言われていたのにVABになっても根本改良されてないというのはまた…。
※VABはエアクリBOXのかみ合わせが悪く僅かに隙間が開きます。設計ミスじゃないの?
一点、気になることがあって、後期型でジムカーナ走行をして水温が100度以上に上がるとエンジンチェックランプが点灯し、フューエルセーフが入ってしまうことがよくありました。
そうなるとバッテリーを外して10分放置して解除するか、あるいは専用機械で解除するしかなく、それがまた面倒。
前期型ではそんなことがなかったのになあ。
もし何か制御系に変更が加えられているとしたら、「走る」人は前期型のほうがいいのかな?とも。
*足回り
ベースグレードがカヤバ足、typeSがビルシュタインというラインナップは前後期とも同じ。
後述の駆動系の変更に伴って、後期型は柔らかめになっています。
純正のカヤバ足の比較でも、減衰力が若干弱められ、リアのスタビライザ径も小さくなっています。
個人的には後期型のほうが上質な乗り心地で好きですが、足回りを換えてしまう人にはあまり関係がないでしょう。
個人的にはオーリンズがお勧め。
仕様変更で好みの足にしてしまいましょう。
*制動系
ブレーキは大きく変わりました。
前期はそれまでGD~GR(GV)型と続いてきた、お馴染みブレンボキャリパー(ツーピース型、F対向4POT/R対向2POT)。
後期はレクサス等にも採用されているらしい、モノブロックのキャリパーとドリルドローター。
後期はF対向6POT/R対向2POT。
キャリパー自体の物理的な制動力と耐久性は、後期型が圧倒的に優れています。
モノブロックなので、キャリパーが「開いてしまう」ことはまずなさそうですし、パッド面積が前後ともかなり拡大(F1.24倍、R1.5倍)しているので、その意味での純粋な制動力はかなり高くなっています。
しかし難点も。
後期キャリパーに合うパッドが少ないのです。
それはこのキャリパーが採用されたのが新しく採用車種が少ないためで、そうなると製品自体少ないのは仕方のないところ。
そして製品が少ないと、それだけ値段も高め。
さらに後期型はローター径が拡大され、履けるホイールが18インチ以上となりました。
そのうえ後期はローターも高い。
このローターがクセモノで、厚みが変わらないまま径が拡大されたので、それだけ相対的には薄くなり、さらにドリルド加工がされたことにより、歪みが出やすくなってしまいました。
そう考えると、サーキットでは前期型がオススメということになります。
キャリパーが開いてしまったらいっそ新品にするか社外にすればよいし、そのコストは後期型のパッドやローターの代金でペイできてしまいそう。
街乗りしかしない、カッコよければいいというなら後期でもいいですが、走り倒したいという場合はむしろ前期がいいように思います。
(↓前期型)
(↓後期型・めっちゃ高い)
なんだか、後期のローターを社外品に換えてしまうと保証が効かなくなるとかいう話も聞くのですが、純正ローターって1枚4万とか・・・?
わしは今後の消耗品代を予想し、それでVABを降りてZD8に鞍替えしました。
*駆動系
ここも前期と後期では大きく変わりました。
フロントがヘリカル、センターがドライバーズコントロースセンターデフ(DCCD)、リアがトルセンという仕組みは一緒ですが、DCCDが前期は電子制御にメカニカルデフがセットされ、後期は電子制御オンリーになりました。
メカニカルデフのせいで締結力が強く安定性が高めな半面、コーナリングでややアンダー傾向にあったのです。
ちなみに街乗りだけならLSDはそのままで十分ですが、スポーツ走行をするなら機械式(多板クラッチ式)に換えるとかなり面白くなります。
サーキットを流す程度ならノーマルのままでもいいと思いますが、サイドターンのあるジムカーナだとリアは機械式が必須。
で、ジムカーナでもフロントにも機械式を入れるとかなり面白くなります。
VABはフロントデフがミッションケースに入っているので、オイルをそれなりのものにして交換頻度も増えてしまいますが、フロントに入れるとものすごく面白くなりますヨ。
ちなみにVABは前期も後期も、ブレーキとクラッチのラインが共通化されました。
これは整備上で地味に問題で、なんで吸気系はGRBから変わらないのにわざわざココを変えたのか・・・
ラジエターファンが、後期型になって強化されました。
こういう点はオイソレとチューニングできないので、後期のほうがいいです。
とはいえ劇的な変化はないですし、後期型の部品を取り寄せることもできそうですね。
あとは後期型の中でも最終F型が、なぜかひっそりとパワステポンプ・ウォーターポンプが強化されたそうです(スバルも宣伝してない。大々的に宣伝すればいいのに)。
当時から噂はあったものの確証はなかったのですが、どうしても油圧パワステはポンプがいかれてしまうことが多く、またウォーターポンプも10万キロは持たないので、VABで純正パワステ/ウォーターポンプを取り寄せると、F型のものが届くようです。