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かずのつぶやき

産婦人科周辺トピックスのスクラップブックです

米国生殖医学会「変ネタ」3発

 先日、ハワイで開催された米国生殖医学会(ASRM2014)で発表された研究でちょっと面白いものを引き続きご紹介します。

【第二弾】

 パートナーの排卵期、男性もストレス

 不妊症の治療中のカップルにとって、排卵期はとても大切な数日ですが、女性はもちろんのこと、男性にとっても強いストレスを感じる時期でもあるようです。

 韓国・CHA University 泌尿器科不妊治療センターのSH Song博士たちは、排卵日に合わせて性交を持つ、タイミング療法を受けている男性パートナーでは、パートナーの女性の排卵期にストレスレベルが明らかに高まり、性機能障害の発現率も高まったとする研究結果を先日開催された米国生殖医学会で報告しました。
 O-315 SH Song et al, “Psychological Stress and Sexual Function of Male Partner of Infertile Couple During Fertile Period”
 まぁ、予想された結果が実証されたってわけです。

 博士たちは今回、1年以上妊娠への努力の後、不妊治療あるいは妊孕性(妊娠できるかどうか)の評価を求めて受診したカップルの男性パートナー236例に対して、面談と身体診察、精液検査、ホルモン検査を行い、性機能については国際勃起機能スコア(IIEF-5)を用いて調査を行いました。
また、バイアグラなどの勃起不全(ED)治療薬の使用経験についても質問しました。

 そして排卵期におけるタイミング療法に関連したストレスレベルについて、10段階の疲労に対するビジュアルアナログスケール(VAS)により回答を得ました。

 無精子症や性腺機能低下症(男性ホルモン:テストステロン低値)、基礎疾患に慢性疾患を有する男性などは除外しました。

 その結果、パートナーの女性が排卵期とそうでない時期、すなわち、性交渉を持たなければいけない時期と、別にセックスしなくていい時期におけるVASスコアには明らかな差が認められました。

 また勃起不全は、軽症~中等度(IIEF-5スコア16点以下)が8.9%、軽症(17~21点)が42%に見られましたが、排卵期ED治療薬を使用していたのは5.8%のみでした。

 博士たちは「不妊カップルを診療する医療従事者は男性患者の問題を見逃さないよう留意すべき」と指摘しました。そして問題が見られる場合には適切な助言をするよう呼びかけました。

 博士らの研究について,男性生殖機能・泌尿器学会(Society for Male Reproduction and Urology)のPaul J. Turek会長は「男性は排卵期の性交が“予定”に組み込まれていると大きなプレッシャーを感じる。このストレスは不妊のストレスが加わることによって増幅され,妊娠の試みと失敗が毎月続くことで繰り返し失望感を味わうことになる」と説明しています。

 「不妊治療下でストレスを感じるのは正常な反応であり,EDの治療薬を服用することは間違っていないことを男性に伝え,安心させるべきである」とコメントしました。
 
 ちょっと(だいぶ)古いですが、志村けんと研ナオコのコント、「ご飯にする?お風呂にする?それとも寝るぅ?」「ぬぁま(生)たまごぉ~~」を思い出したのは私だけでしょうか。

 精液の所見をみても、いつも元気なひともいますが、よかったり、悪かったりの差が大きいひともいますね。男という動物は結構デリケートな動物なんですね。

 そりゃ、女性のほうが直接体に負担がかかるので、何倍も大変なことは重々承知しております。

 はい。

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米国生殖医学会「変ネタ」3発

 最近、ジジイになってきて、夜早く寝てしまうのでブログ書きのペースが極端に落ちています。。今日はがんばります。

 先日、ハワイで開催された米国生殖医学会(ASRM2014)で発表された研究でちょっと面白いものをご紹介します。

 【第一弾】

 体外受精、受精卵を腟の中で培養


 体外受精(IVF)を含めた生殖補助医療(ART)は今や不妊治療の“標準治療”ともいえるもので、体外受精や顕微受精(ICSI)などによって生まれた赤ちゃんは、日本では2012年度は27人にひとりに達します。

 しかし、治療費が高額なために治療を断念せざるを得ない例もおおく、不妊症に悩む夫婦に大きな負担をかけています。

 ARTによる不妊治療のコストがかさむ理由に受精卵を育てる(培養)する培養室の設備と運営に多大な費用がかかります。

 今回、米国・Center for Assisted Reproduction のKevin Doody博士がカプセル型の容器を用いた腟の中の“体内培養”により、従来の培養室における“体外培養”と同じくらいの妊娠率を達成したとする試験の結果を報告しました。
O-362 K Doody et al, “A Randomized Prospective Controlled Trial Confirms the Safety and Efficacy of Extended Intravaginal Culture of Embryos with INVOcell Compared to Laboratory Incubators” 本当ですかね。

     こんなんを腟の中に入れるそうです。。。

 この容器は米国・INVO Bioscience社が開発したINVOcellというカプセル型のしろものです。

 この中に受精卵を入れて、女性の腟の中で数日間培養します。

 腟の中は胚の発達に適したpHと温度が維持されているため、自然妊娠と同様の環境下での培養が期待できるそうです。


 従来の方法では受精させた胚を培養室の中で、厳格に管理された特殊な環境の下に数日間培養されますが、この培養を特殊な容器を用いて女性の体内(腟内)で行うもので実用化されれば不妊治療のコストを大幅に抑制できる可能性があります。

 博士たちは18~38歳の不妊女性33例を対象に、受精卵を培養室で培養した場合とINVOcellで培養した場合で妊娠率を比較する比較試験を行いました。

 採卵後の授精は両群とお同じ標準的な手法で行われましたが、その後、一方のグループはそれぞれ10個までの受精卵をINVOcellに入れ(体内培養群)、もう一方のグループは従来の培養室(体外培養群)で培養しました。

 その後両群で子宮に1~2個の胚を移植しました。

 妊娠率は同程度で体外培養群16人中10人、体内培養群、INVOcellを用いたグループは17人中10人が妊娠中だそうです。

 博士たちは「ARTでは高額な費用が障害になる場合が多く、その理由のひとつが培養室での空気清浄などの空調設備をはじめとするさまざまな設備費用や培養士などのスタッフの雇用である」と説明しています。

 またINVOcellを用いた腟腔内培養が現在の培養室での培養と同等の成果おおさめることができれば、より多くの不妊カップルが生殖補助医療の恩恵を受け、赤ちゃんを授かることができるだろうと話しています。

 まぁ、どんなもんなんでしょ。

 検索してみましたが、詳しい方法はよくわかりませんでした。ご存知の先生いらっしゃたら話のネタに教えてください。

 ただ、今回の研究の対象者、18~38歳って若いですね。18歳の方ってどんな方なんでしょうか。

 17人中10人が妊娠というのはかなり高い確率です。日本の場合は年齢が高いこともありますが、妊娠率は3割に達しません。そもそもこの対象者がARTを選択する理由、例えば卵管がつまっている、重症の子宮内膜症であるなどの理由があるかも知れませんね。

 それにしてもペンギンじゃないんだから。。

           今後の研究に期待しましょう。


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 10代の重症ニキビ、子宮内膜症のサイン

 10代での重症のニキビは、子宮内膜症の発症リスクの増大に関連性がある可能性があることが米国・ハーバードメディカルスクールのJing Xie博士たちの調査で分りました。
Human Reproduction 2014 オンライン版 8月19日


 研究グループは1989年9月~2009年6月までの20年間に8万8,623例の看護師健康調査Ⅱ(NHS Ⅱ)のデータの中から10代の重症ニキビの有無別に子宮内膜症の発症について検討しました。

 その結果、追跡総数113万2,272人年(人数×年数)において、計4,382例が、腹腔鏡検査で子宮内膜症が確認されました。

 10代の重症ニキビのなかった女性グループに比べて、重症ニキビだったグループの女性の子宮内膜症のリスクは20%増加しました。

 その結果は抗生物質のテトラサイクリンやビタミンA誘導体のニキビ治療薬、イソトレチノイン(アキュテイン)使用による補正後もかわりませんでした。

 博士は「10代の重症ニキビは目に見える子宮内膜症予備軍のサインとして子宮内膜症の早期発見に役立つと思われる」と結論しています。

 この研究の問題点としては、今回、子宮内膜症と診断した症例は腹腔鏡検査、手術で確認したもののみのため、実際にはより多い子宮内膜症の症例が存在すると思われます。

 また、この研究の対象となったNHS Ⅱコホートは大部分がコーカサス地方の人たちで占められていて、人種的な偏りがある可能性があるということです。

 さて、ニキビの発症には男性ホルモンが関係しています。

 子宮内膜症の治療で、以前(私が医者になった頃のお話。今は使いません)はダナゾールという男性ホルモンの誘導体を使いましたし、低用量ピルでもアンドロゲン(男性ホルモン)作用の強いピルを選択する場合(註14行目)があります。

 思春期の重症のニキビでは男性ホルモンがしっかり出ていると思うのですが、逆に子宮内膜症は悪くなるのですね。

 男性ホルモンの量の問題ではなさそうですね。このへんは機会があったら専門の先生に聞いてみます。

 少し前「ニキビ治療にピルが効く」でも書きましたが、10代でニキビが目立つ女性はニキビの治療と子宮内膜症の予防のために低用量ピルを飲むのがいいかもしれませんね。

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