『木のお酒』という新しい嗜好品の選択肢 | 西新宿 Bar BenFiddich(ベンフィディック)

西新宿 Bar BenFiddich(ベンフィディック)

BenFiddichの店名は店主の鹿山博康から由来【Ben】→【山】【Fiddich】→【鹿】
畑を持つ農家バーテンダーであり『Farm to glass』を提唱
日本在来種の自生する草根木皮をもカクテルに変える新しい可能性を模索
アブサン、薬草酒、古酒がゴロゴロ転がるBar

BenFiddich店主の鹿山です。



木から醸しアルコールを生成するという事。


この度、
BenFiddich 店主 鹿山博康
エシカルスピリッツ社共同事業として
木から醸しアルコールを造る
『木のお酒』『Wood spirits project』
始動します。


日本にはおよそ700種類の樹木がある。


とゆう事は700通りの『木のお酒』ができる。


そんな夢のような話しが現実味を帯びてきた。



紀元前8500年の古代メソポタミアから
酒造りが確認されてから一万年以上
穀物原料、果実原料、乳製品、蜂蜜などから
人類はお酒を醸し続け精度を上げてきたが
木からアルコールを生成する事がなかった。


それは木に含まれる
リグニンの細胞壁があることにより
木に含まれるセルロースが
糖に変換されることを阻害してきたからだ。
(セルロースはブドウ糖から構成)

木本植物は
セルロースが50%
ヘミセルロースが20%
リグニンが30%
で構成されている



このリグニンの成分の細胞壁の厚さが
0.004ミリ〜0.002ミリ

よって0.001ミリで木材を破砕する事により
リグニンの細胞壁を壊し
セルロースを糖に転換できる技術がわかった

造り方の詳細は2020年に
僕が森林総合研究所へ伺った記録を
ブログに書いてあるので見てみて欲しい。





『木のお酒』ができるとどんなことができるか?




【①ダブルコンソメスタイルのウィスキー】

例えば日本のウィスキーで有名な熟成樽は
ミズナラの木の樽であろう。
そもそもウィスキーの味わいというのは
木の樽の熟成の影響によって生まれる。
それをミズナラの木から
醸して蒸留して造ったミズナラの原酒を
さらにミズナラの樽で熟成を施す。
ミズナラブーストウィスキーの完成だ





【②丸ごとジン】


これも①と同様で
ジンも穀物原料のスピリッツに
ジンの香りの主軸要素であるネズの木の実
であるジュニパーベリーをスピリッツに
浸漬させ再蒸留したものだが
ネズの木から醸してアルコールを生成し、
そのネズの木から実る
ジュニパーベリー、又は枝葉も加えればもう
世界初となる丸ごとジンという
ロマンが形成される。






【③熟成を待たずとものタイムトラベル】

例えば樹齢400年の木があるとしよう。
木というのは年輪の幅を見れば
現代の場所から逆算して遡れる。
樹齢300年〜400年の部位だけを使い醸し
アルコールを造る事が可能。
ウィスキーで50年熟成が存在するが
やはりウィスキーの50年物というのは
味わいは勿論の事、50年前に当時の人々が
仕込んだものが時を経て
現代で『飲んでいる』という事実の多幸感が
嗜好品の極意でもある。
然しながらこの『木のお酒』というのは
50年待たずとも飲めてしまう。
はたまた300年、400年前の素材を
アルコールにして嗜めてしまう。
その時代に想いを馳せることができるだろう。
いつの日か

お客様
『杉の木をロックで』

バーテンダー
『樹齢部位100年物と200年物がありますがどちらになさいますか?』

なんてゆうやりとりがいつの日か起きるかもしれない。






【④産地違いのテロワール】

これはワインの世界観と似ている。
その土地の風土が反映され
屋久島杉、木曽五木、新宮、白神山地など
木材界のブルゴーニュやボルドーのような
木の銘醸地の選択肢も出てくるだろう。
はたまた
南向きの日当たりの良い斜面で育った
グランクリュな特級Woodエリアなども
指定され皆の心は踊るだろう。

お客様
『新宮はあるかい?』

バーテンダー
『はい。本日は熊野古道が入荷しました。参拝道から程近い南斜面特級エリアでございます』






【⑤有難きエリアのお酒】

例えば伊勢神宮は20年に一度建て替えられる
式年遷宮というのがある。
とゆうことは伊勢神宮の廃材を手に入れる
チャンスがあるのかもしれない。
聖域で生きてきた伊勢神宮の
有難き木材を調達し醸しアルコールを造り
蒸留する事ができれば
聖域リミテッドエディションも可能だ。
そんなのが手に入るのならば僕ならば実家の
神棚にでも飾っておきたい。






そう、『木のお酒』は新しい嗜好品の価値観を
生んでくれるのだ。楽しみにしてて欲しい






【今後の我々のスケジュール】

いま着々と木から醸しアルコールを生成する
『木のお酒』『Wood spirits project』の
蒸留所の建設計画が我々民間で進んでおり
第一弾の木材調達エリアは僕の故郷、
奥秩父山系を背にした
埼玉県比企郡ときがわ町の材木で
作る予定で動いています。

ときがわ町自慢の謳い文句は『木の村』

慈光寺建立1300年の歴史がありそこに当時
全国から工匠が集められ後に定住。
脈々と木工の技術が継承され
江戸時代にも荒川の源流であることから
木がお江戸まで運ばれ活用されてきた
木の歴史があるのが僕の故郷ときがわ町

戦前はナラ、クヌギなど広葉樹が
山を占めていたものの
炭焼き(木炭)などで枯渇。
戦後は人が手が加えられる場所は
杉、檜を植林。
今の日本の森林問題の現状をお手本のように
地でいってるわかりやすい場所がときがわ町

林業家の高齢化に伴い担い手の減少
放置林の増加
労力に見合わない現状

様々な課題があるのが今の日本の森林問題。

また林業家にとって
端材の活用方法は永遠の課題

例えば杉を切って製材した時に
建材で使われる部位は芯の部分であり
外側は端材となり捨てられる。
それでもいま皆が知恵を絞って薪にしたり
積み木や本棚など活用方法を見出している。

然しながら香りの良い部位は
捨てられる外側の端材に多く含まれる
青印が建材で使われる杉の芯の部位
赤印が端材となり捨てられる杉の部位



香りが多く含まれるのは外側の端材部位。
これはわかりやすく言うと芯は老齢であり
外側は若い為である。

我々が『木のお酒』で
使うのは香りの良い端材の
部位であるということ。


これは『木のお酒』と『林業家』
にとっても良い相互関係となるのだ。


ときがわ町の森林問題、今後の改善等
僕らの『木のお酒』『Wood spirits』の
プロジェクトでお役に立てられたらと思ってます。



2022年には
皆様に良い報告ができるよう努めて参ります。



BenFiddich 店主 
鹿山博康