14時07分配信 フィスコ
■日本の余震・原発、欧州債務の懸念で円買い戻し
ドル・円は、前週末に米予算協議で合意が成立、政府機関の一部閉鎖が回避されたことを受けてドル買いが先行し、85円16銭まで上昇。だが、国内輸出企業や投資家のユーロ・円の売りに連れて反転、東北・関東地方での強い余震をきっかけにポジション調整の円買い戻しが強まった。また、福島第1原発事故が国際評価尺度で最悪のレベル7まで引き上げられたことで、商品相場安、株安、リスク回避の円買いが強まり、予想外に増加した米新規失業保険申請件数を嫌気したドル売りもあり、82円95銭まで下落した。野田財務相がG7(主要7カ国)の為替市場での協調姿勢を引き続き要請していく方針を示したことで介入警戒感が広がり83円台後半に反発したが、欧州債務懸念によるユーロ・円の売りに連れて82円95銭に反落。
■日米金融政策の方向性の相違背景にドル底堅い推移
今後のドル・円は、ポジション調整のドル売り・円買いの一巡により、米国(出口戦略への思惑)と日本(緩和政策の長期化)の金融政策の方向性の相違を背景に、ドルは底堅い推移になると思われる。4月14日のG7(先進7カ国)財務相・中銀総裁会議で、円売り協調介入の継続で一致したことも、ドルを売りにくくするとみられる。
材料としては、米経済指標で3月住宅着工件数・住宅着工許可件数(19日)、3月中古住宅販売件数(20日)、4月フィラデルフィア連銀業況指数(21日)の発表があり、出口戦略への思惑に絡みで結果が注目される。
米国の金融政策については、量的緩和第2弾(QE2)の早期終了または規模縮小、出口戦略への動向が注目される状況が続いている。しかし、今週は、イエレン米FRB副議長が「米経済はまだFRBが超緩和金融政策の解除を開始するほど強くない」、「商品価格の上昇は金融政策の変更を正当化しない」と述べ、また、ダドリーNY連銀総裁は「早すぎる金融引き締めに過度に意欲的になるべきではない」、「FRBがQE2を完全に実施しない場合は驚きに値する」と発言。FRB幹部の発言ではハト派的なトーンが目立ったことで、出口戦略への思惑は盛り上がらず、やや弱まる形になった。
一方、4月13日に公表された米地区連銀経済報告(ベージュブック)では、「米国経済活動は全般的に引き続き改善」との見解が示された。個別では、「大部分の地区で雇用市場は全般に力強さを増した」、「製造業が依然回復を牽引、雇用の拡大につながる」とされ、雇用に関して上向きの見方が継続。また、「小売売上は10地区で少なくとも小幅拡大」として、個人消費の底堅さが指摘された。ただ、住宅市場は低迷状態が継続、また、7地区の企業が「日本の震災と原発事故の結果として、販売と生産の混乱を経験もしくは予想」と懸念も示された。同報告は4月26-27日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)の参考資料になる。
日本の金融政策については、日銀は「震災の影響をはじめ経済・物価動向を点検し、必要な場合には適切な措置を講じる」と表明しており、状況によりさらなる追加緩和を検討する姿勢が継続されている。4月21日に西村日銀副総裁が横浜市での金融経済懇談会に出席、会見する予定であり、現行の金融政策の方針が改めて示されると思われる。
なお、4月20日に日本の3月の貿易収支が発表される。東日本大震災、福島第1原発事故を受けて、生産減退による輸出減、復興に向けた輸入増から、今後は貿易黒字の縮小や赤字化の可能性が見込まれるとの見方が広がるなか、3月の貿易収支にその兆候がみられるのかどうか関心が高まっている(黒字幅は縮小の予想)。
4月14日に開催されたG7(先進7カ国)財務相・中銀総裁会議では、3月18日の円売り協調介入について野田財務相が謝意を表明、成果があったことが確認されたもよう。そして、今後も市場を注視し、過度な変動には協調して対処し、市場の安定化を図ることで一致したと伝えられている。
また、4月14日から15日まで開催のG20財務相・中銀総裁会議では、共同声明で結束して日本を支援する方針を表明。世界経済の不均衡是正については、G20のGDPの5%以上を占める国(米、中、独、仏、日など7カ国)を、第2段階(さらに集中的に不均衡を測る)の分析対象とすることで合意した。
今後の主な予定は、18日(月):(米)4月住宅市場指数(NAHB)、19日(火):(日)3月消費動向調査、(米)3月住宅着工件数・住宅着工許可件数、20日(水):(日)3月及び2010年度貿易収支、2月第3次産業活動指数、(米)3月中古住宅販売件数、21日(木):(日)西村日銀副総裁会見(横浜)、(米)2月住宅価格指数(連邦住宅金融局)、3月景気先行指数、4月フィラデルフィア連銀業況指数、22日(金):米・英・欧・独・豪・NZ・加・南アはグッド・フライデーで休場。
[予想レンジ]
ドル・円82円50銭-85円00銭