樹木医による樹木診断 その3 | 驚きの日々!祖師谷公園をめぐる四季

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森林インストラクター。ラジオ体操と太極拳で毎朝訪れる祖師谷公園には樹木や花、昆虫や鳥たちもたくさん。そんな公園の四季の変化をお届けしています。祖師谷公園散歩のお役に立てばうれしいです。なお写真のご利用はお控えください。

樹木診断はまだまだ続きます。

 

ここは湧水池近くのサクラの老木です。

すでに枯れた枝は切られて、

ほとんど太い幹だけになっています。

葉も一枚も出ていませんので、完全に枯れたとみていいでしょう。

 

せっかくの機会なので

樹木の会の役員も木づちでたたいて確かめてみました。

このサクラは通路にも近いので倒れる危険がないかを

チェックしつつ、近く伐採の対象になりました。

 

サクラから見晴らし広場への斜面に途中には

根元が空洞になったクリがあり、

手で押すとぐらつくまでになっていました。

 

子どもが思わず木登りをしたくなるような形で

もしも子どもがのっかって倒れたら危険であること、

回復の見込みは根元の状態からすると

ほとんど望めないことなどから

伐採もやむを得ないとの結論になりました。

 

続いてふれあいの森のサワラです。

幹に穴が開いていますが、

中がほとんど空洞になっています。

樹木は周囲が養分や水分の通り道である「辺材」と

樹木を支える役割をもつ中心部の「心材」からなっているのですが

中心部の心材がなくなっても

生命活動を担う辺材が生きていれば枯れることはないのです。

しかし風圧などに弱くなり倒木の可能性が高くなる。

根もしっかりしているので経過観察となりました。

 

そこにいた蛾はサワラの樹皮とほとんど同じ保護色でした!

 

その近くにサワラは先ほどのサワラとは反対で

辺材の部分がやられています。

 

シロアリなどの虫にやられてぼろぼろになっています。

今のところ部分的ですので、伐採までの必要はなく

経過観察となりました。

 

最後はニセアカシアです。

 

根元近くにはベッコウタケというキノコの一種も

認められました。

このキノコは根株の心材部分に侵入する腐朽菌で

表面に出てきた部分は子実体といって木でいえば花の部分。

ですから相当に菌にやられている証拠となります。

 

ここで登場したのが「レジストグラフ」という診断機器。

 

樹木が太くなるほど中の状態がつかみにくくなるので、

幹の東西南北の四方に印をつけ、

 

直径1.5ミリの細いキリを樹幹に挿入して

キリにかかる抵抗値を測定すると

材の健全度が読めるという優れもの。

 

この針が大きくふれている部分は健全さを表し

針がふれない直線部分は痛み具合を表します。

 

これを4方向から測定します。

 

測定値のグラフを位置通りに並べると

樹幹の状態がだいたいつかめるのです。

その結果は幹の北側を中心に幹の4/1近くが

菌にやられていることがわかりました。

 

一見すると元気に見えるのですが

菌が心材から入っていくため、

葉の茂り具合や花つきはなにも影響がみられなくても

ある日突然倒れるなどということが起きかねない、

やっかいな菌なのだそうです。

 

そばのもう1本のニセアカシアも根元に空洞があり

注意深く観察していくことになりました。

 

14:30〜17:30まで3時間をかけての

樹木診断でした。

東京都公園協会から2名の樹木医さん、

祖師谷公園サービスセンターのみなさん、

樹木の会の役員のみなさん、

お疲れ様でした。

 

木の診断法を知ることができた貴重な体験でした。

今後もこうした関係者のみなさまとコミニュケーションをとりつつ

公園の緑の保全に関わっていくことを

樹木の会の活動の一つに位置付けていければと思います。