市役所勤務の現役保育コンシェルジュ、ナナです。


「幼児保育の無償化 幼稚園の預かり保育編」のいよいよ最終回です。


3回に渡って、幼稚園(認定こども園の幼稚園区分利用の方も含みます)を利用する場合の幼児保育の無償化制度についてお話してきました。


これまでのブログをまだお読みでない方は、こちらからどうぞお読み下さい。↓↓






さてさて。

大体のことはお伝えできたと思うのですが、今日は窓口などでよくいただく保護者さんのお声やご質問があるので、それにお答えする形で進めていこうかと思います。


保護者さんのお声①

認定こども園に1号認定(幼稚園区分)で通っていますが、仕事をしているので、本当は2号認定(保育園区分)で利用したくて市役所に保育園の申込みをしています。でも、空きがなくてなかなか入れません。

同じ園に2号認定(保育園区分)で通っている人は、朝7時半から夕方6時半まで預けても保育料の保護者負担はゼロです。けれど、私は午前9時から午後3時の間が基本保育時間で、早朝や夕方は預かり保育料がかかります。無償化制度が使えますが、1日あたり450円までしか補助してもらえないから、結局は自分で払わなければいけない分があり、負担が大きいです。

この不公平な感じに納得がいきません。


そうですねー。同じ園に同じように通っているのに、利用料が違うのはおかしいんじゃないかと思いますよね。

これはね、非常にお役所的な説明になって申し訳ないのですが、

1号認定と2号認定による制度の違い

だということに尽きます。

そんなことは分かってはいますが、私は仕事をしていて保育の必要性もあるのに!というところですね。

そもそも「認定こども園」というところは、

保護者の就労の有無にかかわらず預けることができる園です。こども家庭庁のホームページ内にもあります。↓↓


はい。

上記のようになっています。


これだけ読むと、人によっては

「認定こども園というところは、最初は幼稚園として入園して、仕事をしたくなったら保育園として利用できる」

と思われるでしょう。

しかし、「幼稚園として利用する場合」と「保育園として利用する場合」は全くの別物です。同じ園内でも幼稚園籍から保育園籍に移ることが出来ない場合があるんです。


園によって違いがありますが。

うちの市にある認定こども園の中には

「幼稚園籍から保育園籍の希望変更は原則認めない」とはっきりと入園前に告知しているところがあります。(原則っていう言い方が曖昧な気がしますが、この園で幼稚園籍から保育園籍に変わった人は今のところいません)

国の指針では「保護者の就労の有無にかかわらず預けることができる」となっているのに、その移籍を許可しないというのは、ちょっと首をかしげるところではありますが、園にもそれぞれの事情がある訳です。

一因には「保育士不足」があります。

幼稚園籍の子どもが保育園籍に変わりたいとの希望があった時には、次の3つの条件がすべて揃わないと不可能です。

●保護者に「就労」などの保育必要事由がある。

●その園の保育園区分利用を新規で申込む人よりも優先的に入所できる状況がある。

(新規の方に緊急性があるとか、保育士の子どもの入園決定が最優先!などの状況があれば、その方々の方が優先されることになる)

●保育園籍に変わるということは、早朝の時間や閉園時間前(18時半とか19時までとか)までその子を預かる体制を整える必要がある。その時間まで保育士の数を国の基準を満たす数で配置できるかどうか。


最後の理由で断られることが多いようです。保育士さんも「朝は9時からでないと出勤できない」とか「5時までなら働ける」とか、色々な事情がおありです。

ここでも「働き方改革」問題が響いています。


預かり保育を利用するより保育園籍に変わらせて欲しいと言われるお気持ちは分かりますが、なかなか現実は厳しいですね。

こういった方には

「園を変わるお気持ちがあれば、他の園で4歳児さんの空きのある保育園をご案内しますよ」

とお声をかけても、皆さん「いえ、子どもが慣れている園を変わるのはかわいそうだから」と言われますね。

そうですよね。そうなりますよね。


幼児保育の無償化制度が始まるまでは、3歳以上の方も保育園利用の方は世帯収入に応じた保育料を払っていました。預かり保育を利用する幼稚園利用の方が払う「保育料プラス預かり保育料」との差はそんなに感じなかったように思います。

それが、幼児保育の無償化という制度が始まり、国が高らかに「3歳以上のすべての子どもの保育料を無償化する!」と宣言してしまったから、ややこしいことになったのでは?と思います。

「すべて」というのは、ちょっと違うし。

「無償化」といっても、制限や上限があるし。


この流れで次、行きますね。


保護者さんのお声②

無償化になる上限額が、非課税世帯の方との差が大きい。課税世帯は預かり保育料が無償化になるのは1日450円までとなっているが、なぜ、そんな設定になっているのか。


はい。非課税世帯の方は年齢にかかわらず、保育料の負担について優遇されていますね。

そもそも「非課税世帯」とは、どういった世帯なのでしょうか。某銀行さんのホームページ内の表をお借りしますと、

こういったケースになります。
住民税には所得割と均等割があるのですが、どちらも非課税でなければ「非課税世帯」とはなりません。父、母ともに、です。
お勤めの方でしたら、給与明細などを見てください。市民税が1円でもかかっていたら「非課税世帯」ではありません。
ご自身が非課税世帯かどうか分からないという方はお住まいの市町の役所でお尋ねください。

それで、ですね。
ものすごーく平たい、大雑把な言い方をさせていただきますと、非課税世帯というのは「収入の少ない世帯」です。中には「生活するのに金銭的に困っている」という世帯もあるでしょう。

そこで、「非課税世帯」の生活が少しでも「健康で文化的」であるように(日本国憲法にありますね)、納税を免除して暮らしやすくなるように国の制度として様々なことを定めたのですね。
国民年金や国民健康保険の保険料の減免や医療費の負担軽減、臨時給付金などがそうです。そして、その一環の中に「保育料の無償化」があるのです。これは、「幼児保育の無償化」制度か始まるずーっと前からありました。年齢に関係なく0歳児から対応していました。
だから、「幼児保育の無償化」が始まってからも、非課税世帯については年齢を問わず、3歳になっていてもいなくても保育園の利用は無償化になるのです。そして、幼稚園利用の場合の預かり保育料についても課税世帯の方より優遇されているのです。

非課税世帯の方が課税世帯の方より優遇されている理由はご理解いただけたとしても、
「1日450円までって、何?」
という思いがおありの方、いらっしゃると思います。

2019年、この「幼児保育の無償化」制度が始まる前に、国は
認可外保育園の3歳児クラス以上の子どもの保育料を37,000円を上限に無償化する
と定めました。
その頃、認可保育園の3歳児クラス以上の子どもの保育料の最高額がそれぐらいだったのです。
保育料は市町によって異なりますが、37,000円が平均的なところでしたね。

この認可保育園の保育料37,000円を無償化するということになったので、認可外保育園に通う子どもも平等にといいますか、上限額をそこに決めたのです。認可外は保育料がピンキリですからね。上限額を決める必要はあったと思います。

そして、はい、保育園はそういうことに決めましたが、幼稚園はどうしましょうという話にはなった時、基本保育料と預かり保育料を合わせて37,000円に設定しましょうとなったのでしょう。
幼稚園は保育時間が保育園より短いです。保育時間に比例する形で、
幼稚園については、25,700円を上限に無償化する
と定め、37,000円との差額11,300円を預かり保育料の無償化の上限としました。

そして、1日の上限額を450円としたことについて。

この金額設定については、たぶんこういうことなんじゃないかなーと私が思うのが‥‥


就労などの保育必要事由があってこそ、この無償化制度は利用できるということなので、預かり保育はほぼ毎日使うよね?ということになったのだと思うのです。月に2〜3回とかの利用だけなんだったら本当に保育の必要性があるって言える?ということ。
この制度は本当に必要としている人に使ってもらいたいという意図があるんじゃないかなと思います。

だから、「ほぼ毎日」というのを月25日に設定し、11,300円を25で割って452円となったのかなと思います。2円は計算が面倒だから切り捨てたかな?

こうして1日の上限を設けることで、例えば土曜日とか幼稚園がお休みの日に1日丸々預けると預かり保育料は1日3,000円ぐらいかかるのかな?園によるけど。
そんな方が月に3回、そんな使い方をして「上限に達していないから9,000円全部タダになるんだー」ってことをなるのを防いでいるのかな?と思ったりします。

もちろん、毎週土曜日に仕事があるんですって方も本当におられると思います。でも実際は不正とまでは言わないけど、園から
「Aさんね、毎日預かり保育を使っているけど、あのお母さん、仕事はされていないんよね。なんで分かるかって?そりゃ、色々耳に入ってくるのよ〜」
って電話が入ってくるケースもありますしね。

あくまでも私の推測です!
気分を悪くされた方はごめんなさい。
市役所窓口では「なんで1日の上限額が450円なんですか?」と尋ねられたら、「国が決めた制度なので」としかお答えはしていません。私の推測なんかペラペラしゃべったら怒られます。
でも、こども家庭庁がなぜ1日の上限額を設けたのかをはっきりと説明していないから、納得されない保護者が多いのです。

もし、このブログがこども家庭庁の方に届くことがあれば、ご回答いただきたいですね。
(一応言ってみるタイプ)


はい。今日は本当に長くなりました。
最後までお読みいただいて、ありがとうございます。
「幼児保育の無償化 幼稚園の預かり保育編」はこれで終わります。
少しでも皆様のご理解が深まりましたら嬉しいです。