誰かが言った――。
『母は強し』
本当にその通り。
世の母は、本当に強い。
オカンという生き物は、生物学者も驚くほど
とくにこれと言った知識も能力も持たなくたって
なんか強いのだ。
なんかわからんけど強い。
これが最強なのだ。
うちの母の話なんですけどね。
神妙な面持ちで、ダチョウを語りだしたんですよ。
「ダチョウってめちゃめちゃ頭悪いらしいわ」
第一声から放たれる会話のレベル的に、
その神妙な面持ちはいらないなと思いながら
ダチョウの頭の悪さを聞いてたんですよ。
「もしな、背中に私が乗るとするやろ？（乗るなよ）
ほならな、逃げだすねん。ダチョウは。（そらそう）
でもな、5秒くらいでなんで走ったのか忘れるねん
可哀想やろ？」
ほっといたって。
そこはほっといたって。
「でもな、めちゃめちゃ目がいいのよ。ダチョウ。
3キロ先でも余裕で見えちゃうの。
ほんでめちゃめちゃ足速いわけやん？
だから天敵が寄ってきたら猛ダッシュで逃げるから
足とか、ほとんど恐竜みたいな骨格やのに現代まで生きてるの」
そう言って、さらに神妙な面持ちを深めました。
「でもやで、脳が小さすぎて
逃げてるときに
なんで逃げてるのか忘れるねん
可哀想なくらいアホやん」
そう言いながらブハハハッ！
と爆笑して、母はキッチンになにかを取りに行きました。
そして、冷蔵庫を開けながら堂々と
「あれ？ 私なに取りに来たっけ？」
とつぶやきました。
私は今年一番の神妙な面持ちで
「ダチョウやん」
と伝えました。
これが、オカンという生き物の生命力です。
ダチョウと同じくらい忘れっぽくて
ダチョウよりも圧倒的に足が遅くて
ダチョウよりも圧倒的に視力が悪くて
強く生き残ってる！
母は強し！ という言葉は
力があるわけでも、足が速いわけでも
能力があるわけでも、なんでもなくて
大丈夫、
なんとかなる！
という思いの強さなのだ✨
そんなわけで、誰のオカンでもないけど
大丈夫、なんとかなる✨
だけは強く持っていきたいと誓うのでした。
美言3336『なんとかなる』