一時はブームになったEV(電気自動車)に陰りが出ている。
テスラの世界販売台数が15四半期ぶりに前年比減
2日にアメリカのEV最大手テスラが発表した2024年1~3月期の世界販売台数は、前年同期に比べて9%減の38万6810台と、市場予想を大きく下回った。四半期ベースで前年実績を割り込むのは、20年4~6月期以来、15四半期ぶりのことだ。
株価も6%以上の大きな下落となっている。
マーケットは、これまでもテスラの苦境を予測しており、1年前の7月高値に比べて約4割安になっている(グラフ)。今やテスラは、アメリカの「マグニフィスント・セブン(壮麗なる7社)」の一角から滑り落ちた。
このことは、世界の投資家がEV専業メーカーであるテスラの将来性に悲観していることを物語る。それは、ライバルのBYDの株価も、昨年高値の2割安程度でウロウロしていることからもうかがえる。
なぜ一時、ハリウッドスターにモテモテだったEVのテスラが低迷しているのか。かつての目覚ましい躍進から見れば、現状は「低迷」と言うしかない。
そのことを端的に示すのは、中古車価格が著しく下落している現状だ。
それは、ガソリン車が成熟した技術であるのに比し、皮肉にもEVの技術革新が目覚ましいからだ。つまり今乗っているEVから新しいEVに乗り換える時、下取りに出す中古EVが、「時代遅れ」に近いものになっているのだ。航続距離や充電時間など性能面で、数年前の中古車でも新車に大きく後れを取っている。
ガソリン車より著しい中古車価格の下落
さらに技術革新が大きい車なので、それに合わせてテスラが新車の値引きを繰り返していることもある。例えばテスラの主力セダン「モデル3」(写真)は、新車価格の半値くらいの2万~3万ドル程度で、中古車市場で取引されている。
アメリカのある中古車検索サービス会社による230万台超の中古車価格の調査では、2023年10月の中古EVの平均価格は、前年に比べて34%も下がった。中古車は年を重ねると減価するのは当たり前だが、この間、中古車全体の下落率はたった5%だった。
つまり車としての「資産価値」は、ガソリン車に比べて大きく落ちるのだ。これは、リースで車を乗っている人や大手レンタカー会社にはたまらない。リースカー利用者は、乗っていた中古EVの査定が大きく下がるから、次もEVとはなりにくい。レンタカー会社は、保有資産の減損損失が大きくなる。
値下がりリスクの大きなEVをユーザーは買うか?
営業に大量の社有車を保有する会社や大手レンタカー会社は、相次いでテスラを手放している。これがまた中古車市場でテスラのEVがだぶつくことになり、価格の下落に拍車をかける。
技術革新がこれからも続くEVの宿命だが、ユーザーにとっては高コストの上に中古車が大きく値下がりするとなると、EVを乗り続けたり、新たに購入したりするのに二の足を踏むことになるだろう。
一時期はテラスの時価総額はトヨタの5倍もあったが、最近は差が縮まっている(グラフ)。20年後半にテスラがトヨタを逆転したが、再逆転も先の話ではなさそうだ。
昨年の今日の日記:「ブドウの栽培化は1万1000年前頃にコーカサス地方と中東で同時に起こった」