2020年代が幕開けした。昨年の令和の始まりが、現代史の上でほとんど意味が無いのと同様に、2020年代と言っても、その前の2010年代と異なる意味は、ほとんど無い。
 

本格的な人口減時代に​
 しかし心機一転の心構えという意味では、節目になるかもしれない。
 昨年暮れ、表参道のあるレストランの窓から新装成った新国立競技場を見る機会があった(写真)。今年は、もう日本では開催されることがないかもしれない夏の東京オリンピックが開かれる。日本の存在感を世界に示す、画期的イベントである。

 


 昨年暮れには、少子高齢化がさらに加速するという暗いニュースもあった。2019年の出生数が統計を取り始めた明治32(1899)年に統計を取り始めて以来初めて90万人を割った。死亡者数から出生数を差し引いた人口の自然減は51万2000人と、こちらも初めて50万人の大台を超えた。わずか1年で鳥取県が消滅するほどの減少で、 人口減少も深刻である。​
 

老後の備えには貯蓄より投資を​
 若者層の縮小と反比例するかのような高齢層の増加は、高齢層に偏った社会福祉が持続不能であることを予示する。
 現役世代は、したがって老後を考えた自助努力が絶対に必要だ。将来得られるであろう年金は、老後の支えの補助的程度に考えた方がいい。
 それには、今から資産を蓄積し、増やしていくことが不可欠だ。
 それには貯蓄より、投資がふさわしいのも、これまた明らかだ。
 1つの数字がある。
 

企業は配当に手厚い、給料だけでは資産は増えない​
 法人企業統計によると、2000年度から18年度までの間に、金融を除く企業の純利益は7.4倍となった。この間、人件費の伸びはわずか3%だったのに対し、株主への配当は5.4倍に増えた。
 企業は、ITや機械化といった合理化で人をほとんど増やさず(人件費の伸び3%の数字を考えると、この間に多少の賃上げもあったはずだからむしろ人は減らしていると考えられる)、内部留保と株主への配当を増やしたことが分かる。
 この数字を見せられれば、株式投資をしない手は無い、となる。バブル崩壊の時代と異なり、今は株の値上がり益と共に配当を期待できる環境でもあるのだ。
 フランスの左派的経済学者トマ・ピクティは、逆説的だが「キャプタルゲインは、常にインカムゲインを上回る」と指摘したのは、まさにそのことだ。
 

まず節約して種銭貯め​
 以下は、まだ投資を始めていない人向けだ、すでに投資経験のある方はスルーしていただいてかまわない。
 投資をするには、まず種銭が必要だ。今、それを持つ人はいいが、無い人は、まずそれを貯めることから始める。
 カネのかかる付き合いをほどほどにし、外食を控え、光熱費を節約し、メガキャリアのスマホを格安スマホに変える。それで、月に2万円程度の原資をひねり出し、積み立てを始めよう。
 ある程度貯まったら、ミドルリスク・ミドルリターンのREIT(不動産投資信託)に投資を考えて良い(写真=REITの決算報告書)。ただし闇雲に買ってはいけない。​

 

 

REIT投資はまずIPO狙い​
 まずネット証券に口座を開く。既に持っている人は、それを活用する。
 口座が出来たら、その証券会社のMRFにお金を送金しておく(ただしSBI証券は取り扱いはない)。これは、元本割れは無い代わりに限りなく0に近い金利(収益)しかない待機ファンドである。
 そしてこまめにサイトを覗いて、REITの募集がないかどうか探す。
 新規上場(IPO)があれば応募する。公募価格は普通は1口10万~30万円程度だ。これは、手数料無しで買えるが、抽選で当たらないことも多い。当たれば、普通は上場初日に買いが集まり、10%前後の値上がりが見込める(不人気REITだと、稀に公募価格割れもある)。
 ただ値上がりしたとして、すぐに売ってはいけない。こうした銘柄は、少しずつだが着実に値上がりしていくからだ。僕が持っているREITの中には、IPO時からすでに2倍以上に値上がりしたものが3銘柄ある。
 含み益を楽しみながら、半年に1度、分配金をもらえる。こんな美味しい投資はない。
 

公募増資にも旨味​
 次に、既上場のREITの公募増資である(これも人気銘柄だと、抽選で当たらないことがある)。この旨味は、最終基準日の終値から、通常2%割引で、しかも手数料無しで買えることだ。こちらはIPOと違って、すぐの値上がりは見込めない。じっくりと持ち続け、半年に1回の決算の後に送られてくる分配金を楽しみに待つ。分配金は株の配当に相当するものだが、利回りは平均で3.5%前後もある。
 ただこれも、すぐに使ってしまってはならない。MRFなどの待機ファンドに入れておき、種銭の一部にしていく。
 

市場で購入する場合はネット証券を通じて​
 これも外れたら、市場で指し値をして買うしかない。手数料がかかるが、ネット証券なら格安だ。対面の証券会社だと、1%程度の手数料を徴収されるので、その後のパフォーマンスに大きく影響する。だから対面の証券会社から買ってはならない。
 REITは、不動産が裏付けとなっているので、リーマンショックのようなことが無い限り、大きな値下がりのリスクはない。その代わり、株のような大きな値上がり期待も乏しい。しかし長期的には必ず報われるだろう。前述したように僕の場合、初期の頃に買ったREITで倍以上に値上がりしたものもあるのだ。
 

オフィスビル、賃貸マンション、物流施設対象のREITを​
 REITは、投資対象によっていろいろある。最も安定しているのがオフィスビルに投資するREITで、賃貸マンションに投資するREITも、着実に賃料が上昇するので、値上がり期待が高い(上述の3銘柄は、偶然だがすべてマンションに投資するファンドだ)。
 物流施設に投資するREITも、アマゾンや楽天などのネット通販の盛り上がりで手堅く、ほとんど値下がりリスクはない。
 全体に共通して言えるのは、三井不動産や三菱地所など旧財閥系大手不動産や三井物産や三菱商事などやはり旧財閥系商社、さらに物流では外資系など、スポンサーが名門のものなら間違いはない。無名に近い不動産会社系のREITは、組み入れ不動産がスポンサー企業が手放したいものを組み入れているケースがあり、値上がり期待は乏しい。
 また総資産が2000億円以上あるREITは、流動性も高く、かつ日銀が不定期に買い入れるので、値下がりリスクはさらに小さい。ただもちろん新規上場のIPOは、こんなに資産がないから、この場合は既上場の公募増資か市場で購入するケースについてである。
 こうしたREITを買えば、値上がりと分配金という2つの利益が得られる。
 

避けたい商業施設投資REITとインフラファンド​
 避けたいのは、商業施設への投資を専門にするREITだ。アマゾンの席巻するアメリカでは、アマゾン・エフェクトで、商業モール・ショッピングセンターがどんどん潰れて閉鎖している。ここに投資しているREITも大きく値下がりしている。
 アマゾン・エフェクトは、いずれ日本にもやって来る。すでに地方の商業施設の中には空き室も散見される。東証上場のREITでも、商業施設が投資対象のREITの値動きは悪い。
 またREITよりも高利回りをうたうインフラファンドも、避けたい。こちらは主に中規模太陽光発電所に投資するファンドだが、固定価格買い取り制度初期の高価格での買い取り価格がベースになっている。しかし、その高い買い取り価格は、20年で終わる。その後は市場価格となり、とても高い分配金は出せない。あと10数年だけ、というのは、ハイリスクである。
 

株への投資はある程度経験を積んでから​
 株式については、言及しなかった。これはとうていこの欄で言い尽くせないほどの注意点やリスクがある。しかも最低投資単位がREITよりも高い。ある程度、慣れた人でないと、手を出さないのが無難だ。
 こちらはREITで投資経験を積んでから、にしよう。
 その代わり、積み立てNISAやiDeCoで、毎月少額ずつパッシブファンドを買い続ける方が賢明だ。短期的には値下がりする時もあるが、長期的には必ず報われるからだ。
 新しい年、資産形成のスタートとしたい。

 

昨年の今日の日記:「2019年、どう動くか? 日産自動車とルノーのアライアンス、下手をすると日産自は『第2の東芝』に」