南アフリカ、ブロンボス洞窟(下の写真の上と中央)ではこれまで様々な現代人的行動を示す文化遺物が発見されてきた洞窟だが、このほど赤色オーカーのクレヨンを用いて3つの斜交平行模様(cross-hatched pattern)を連ねたシルクリート製磨製薄片が発見された(下の写真の下)。

 

 

 

 

 

7.3万年前のMSAスティル・ベイ技術複合
 ブロンボス洞窟で長年発掘調査を続けているクリストファー・ヘルシルウッドや南ア、ヴィッツの考古学者ルカ・ポラーロロらのチームが、イギリスの科学週刊誌『ネイチャー』9月12日号で報告した。
 この薄片は、以前に見つかった貝殻製ビーズ、オーカー片に同じような斜交平行模様を線刻した遺物(写真)を備えたスティル・ベイ技術複合の石器群と同一層位から出土しているので、年代はほぼ7万3000年前の中期石器時代(MSA)に位置づけられる。

 

 

 研究チームは、顕微鏡観察と化学分析の結果、この斜交平行模様はヒトにより意図的に付けられたもの、と結論づけた。

 

ある意図の基に画像を記録
 この発見は、これまでヨーロッパなどで知られていた洞窟壁画などの抽象的・具象的図像より少なくとも3万年はさかのぼるという。
 斜交平行模様が何を伝えているのか、制作者の意味は不明だが、先に発見されているオーカーへの線刻と同様に、南部アフリカの早期ホモ・サピエンスが異なった技術を使って様々な媒体に意図的な画像デザインを制作する能力のあったことを示している。

 

MSAに現代人的行動の開花に何が
 最近、起源はもっと古いという報告もあるが(17年6月29日付日記:「最古の現生人類か? モロッコ、ジェベル・イルード出土人骨の31.5万年前という放射年代」を参照)、従来観に従えば20万年前頃に早期ホモ・サピエンスが出現した。彼らは、その後、モザイク的に現代人的行動を発展させていくが、約10万年間もアフリカに留まり続けた(これについても新説が出されている。18年3月1日付日記:「アフリカ外に出た最古の現生人類化石ミスリヤ上顎骨、19.4万~17.7万年前の驚き」を参照)。
 そしてMSA期に、ヨーロッパで見られた現代人的行動をほぼ一気にすべて備えた。この革新には、直前に早期ホモ・サピエンスに強いストレスがかかっていた可能性がある。

 

昨年の今日の日記:「スペイン、カタルーニャ州独立紛争、問題の核心は何か(下);中央政府はバスク州への波及恐れ、欧州諸国も自国への悪影響を憂慮」