アメリカが12日、UNESCO(ユネスコ=国連教育科学文化機関;写真=ロゴを背にしてのUNESCO総会)からの脱退を表明した。同日、イスラエルもUNESCOから脱退を明らかにした。
アメリカの脱退は2度目
アメリカとイスラエルとは、もともと国連機関の中でも特にUNESCOと相性が悪い。特にアフリカ諸国など加盟国数が多い発展途上国のイデオロギー偏向が目立ちだした1980年代に入って顕著になり、84年にはたまりかねてアメリカは1度は脱退している。
国連では5大国の安保理常任理事国の意向がほぼそのまま通る。したがって安保理常任理事国が結束して決議をすれば、国連総会でそれに反するどんな決議をしようと、加盟国全体はそれに拘束される。
ところがUNESCOなど、国連の専門機関は、1カ国=1票が原則で、アメリカのように20%前後の分担金を払う超大国も、太平洋の小さな島国も、平等の1票を持つ。そうした不公平な状況を苦々しく思っているところに、自国の意向に沿わない決議などが、途上国の数の多数で通ることに、アメリカが切れる根源がある。
パレスチナの加盟で分担金拠出を停止
84年に脱退したアメリカも、その後、運営の公正性をUNESCOに約束させて2003年に復帰した。
ところがほどなく、その「担保」も取り払われる。2011年、イスラエル占領下のパレスチナ自治政府が、イスラエルの承認も無く、それどころかイスラエルの猛反対を押し切る形で、国家でもないのに、UNESCO加盟が承認されたのだ。
アメリカは、再び切れ、脱退こそ思い留まったものの分担金の拠出をやめた。
イスラエル猛反対のヘブロンを文化遺産に登録
そこにこの7月7日、ついに堪忍袋の緒を切らせる事態が起こる。6月のイスラエル・ヨルダンの旅で僕は訪れなかったが、イスラエル占領下、パレスチナ自治区にあるヘブロンの旧市街(写真)が、イスラム教の「イブラヒム・モスク」、ユダヤ教の「マクペラの洞窟」などの文化遺産があるとしてパレスチナの申請で世界文化遺産に登録されたのである。
イスラエルは、ヘブロン旧市街の「マクペラの洞窟」はユダヤ教徒にとってはアブラハムらユダヤ人の祖先の墓があるとされ、ユダヤ教徒との関わりが考慮されていないとしてイスラエルの同意も無く勝手に世界遺産に登録したとして猛反発した。
登録の決定を、イスラエルのネタニヤフ首相は「ユネスコの新たな妄想的な決定だ」と非難し、国連への拠出金を100万ドル減らすと決めた。
トランプ政権は過去最高の親イスラエル
今回のトランプ政権によるUNESCO脱退の決定は、それが直接のきっかけだが、積もりに積もった分担金滞納額も5億4000万ドル余り、日本円で600億円余りに膨らんでいて、これも脱退決定の理由だとアメリカは説明している。
アメリカにすれば、脱退でUNESCOがさらに反米、反イスラエルに傾くことを懸念し、できれば留まりたかっただろうが、何しろトランプ政権には上級顧問に正統派ユダヤ教徒のジャレッド・クシュナー氏(トランプ大統領の娘のイバンカさんの夫)がいる(写真=ユダヤ教徒の民族衣装のキッパをかぶって嘆きの壁に詣でるクシュナー氏。その隣は国務長官のティラーソン氏)。
イスラエルはアメリカの脱退を歓迎、自国も脱退へ
今のトランプ政権ほどイスラエルの意向がダイレクトに届く政権は、アメリカ政治史上これまでなかった。イスラエルが反発している以上、アメリカがUNESCOに留まる理由はない。
イスラエルは、むろん大歓迎だ。ユネスコ脱退を表明した声明で、イスラエルはトランプ政権の決定を「勇気があり、道義にかなった」ものだと称賛した。イスラエルの単独脱退ではニュースにもならないが、アメリカが脱退したとすれば、UNESCOの政治的偏向をクローズアップできるからだ。
日本も「南京虐殺」の記憶遺産登録で苦汁
僕は、アメリカとイスラエルのUNESCO脱退に賛意を表したい。
実は、日本もUNESCOの政治的偏向に苦い思いをさせられているからだ。2015年10月の「南京虐殺」の記憶遺産登録である。
この時、日本の反対にもかかわらず、たった1人の委員のずさんな審査で、「南京虐殺」が決まった。スターリニスト中国が提出した資料には歴史家の異論のあるものも多く含まれ、まさにスターリニスト中国のプロパガンダにUNESCOが政治利用されたのである。
日本は、これに抗議し、翌16年、一時、分担金の支払いを保留したが、アメリカと違い、腰が定まらず結局、年末に分担金を支払った。
これ以上の反日プロパガンダ続けば日本も脱退を!
しかしUNESCOが、日本の抗議に反省した風は無く、今年、またも韓国の「慰安婦問題」を記憶遺産に登録する審査をしている。
もしこれも記憶遺産に登録されるなら、今度こそアメリカ、イスラエルに追随し、UNESCOを脱退すべきだ。
日本の税金が、敵対的な国の政治的プロパガンダに流用されるのは決して容認できない。
昨年の今日の日記:「TPPは日米民主主義陣営が腐敗した覇権国家、中国に世界貿易秩序を作らせないために絶対必要」