新年、おめでとうございます。
今年は、どのような年になるのか、平和は、景気は、世界の動きは、不透明感に満ちている。
今年を展望するのに、昨年1年間を振り返ってみるのも意味のないことではないだろう。そこで1日遅れだが、昨年2015年のビッグニュースを振り返りたい(本当は一昨年12月28日にアップしたように、昨年中に公開したかったが、暮れに日韓外相会談を控えていることもあり、越年してしまった。ご寛恕を)。
なお、以下の2015年世界10大ニュースは、僕のの個人的関心から選んだので、必ずしも世間一般のとおりではない。また漏れもあるかもしれない。読者におかれては、この他に何か重要なものがあるとお考えになったら、ご教示いただきたい。
①中国株式市場クラッシュ、株バブルの崩壊、人民元安誘導で、日本株など世界の市場が大動揺。6月から始まった中国株式市場の崩壊的暴落は、スターリニスト中国当局にありとあらゆる市場介入によっても止められなかった(写真=激しい下げに頭を抱える「株民」)。ついに8月の人民元安誘導に至り、チャイナ・ショックは世界に波及した。
このバブル崩壊は、昨年のスターリニスト中国の厳しい経済状況の反映であり、将来の破綻を先取りしたもの、と見る。だから並みいる大ニュースでも、これを1位に選んだ。後から振り返った時、あのバブル崩壊が中国のスターリニスト支配の終わりの始まりだったとなるのではないか。
なお一時2万円台まで上げ、日本株式市場にもチャイナ・ショックは波及した。4月には15年ぶりに2万円台に乗せ、6月24日には高値2万0952.71円をつけたが、チャイナ・ショックの大波を受け、9月29日には1万6000円台に下落した。その後、回復基調に戻り、年末30日には1万9000円台に乗せて引けた。
②TPP大筋合意(10月5日)。2年余りの漂流の末、10月、参加国12カ国でようやく大筋合意した。軍事的、政治的覇権ばかりでなく、AIIB創設で経済覇権も目指すスターリニスト中国を排除した形で、交易条件の世界標準を決めた画期的合意である。日本は、発効と共に工業製品の大部分の関税をゼロにし、関税で守られた農林水産物も81%は関税をなくす。この巨大自由貿易協定の衝撃は大きく、早速、韓国、フィリピン、インドネシア、タイなどが参加を表明している。政府は12月24日、発効に伴う経済効果を公表。それによるとGDP押し上げ効果は年間14兆円、80万人の新規雇用を生む。なお経済力がダントツに大きい日米両国が批准しなければ発効しないが、日本は今年年央まで、アメリカも早ければ年央には批准される見込み。
③野心的な温室効果ガス削減を盛ったパリ協定採択(12月12日)。今まで不可能とされた温室効果ガスの世界的削減が、途上国も含めて合意された。産業革命以後の気温上昇を1.5℃未満に抑えるよう努める、と具体的目標を設定し、21世紀後半に人為的な排出と吸収を均衡させる、と明記した。途上国を含め、最も安価で運転容易な石炭火力発電所は、今後、建設は不可能になっていく。
④集団的自衛権の行使の要件などが定められた安保関連法が成立(9月19日)。戦後70年、一国平和主義にたぐらをかき、惰眠をむさぼっていた日本の安全保障が転機を迎えた。日本を取り巻く安保環境は、スターリニスト中国の膨張主義と大規模無差別テロの脅威などで大きく変わっている。日本は、アメリカやオーストラリアなどとともに、世界平和に積極的に貢献することが求められる。
⑤「慰安婦」問題、日韓外相会談で合意(12月28日)。暮れも押し詰まった28日に掉尾を飾る大ニュース。自由と民主主義の理念を共有する日韓両国の協力にとって最大の障害だった「慰安婦」問題は解決に向かう。アメリカも関与した「最終的かつ不可逆的解決」の合意文言で、日本は国際社会へのイメージダウンとなる「『慰安婦』問題蒸し返し」の悪夢から解放される。
⑥原油暴落1バレル=30ドルそこそこに。昨年に続いて、原油価格は下げ続けた。WTI先物で33ドル台、ドバイで32ドル台をつけた。大きな要因は、①と関連するスターリニスト中国の経済減速である。これにより、原油がぶ飲み主体が消え、供給過剰は日常化した。今年はWTIで30ドル台割れを試すか。
⑦パリ同時多発テロ(11月13日;写真=犠牲者を悼み、共和国広場の市民による献花)とシャルリー・エブド襲撃(1月7日)。ISILなどイスラム原理主義過激派に洗脳されたホームグロウン・テロリストの襲撃で、フランスは戦後最大の犠牲者を出す。また日本人ジャーナリストの後藤健二氏らも、シリアでISILテロリストにより惨殺される(1月)。チュニジアでも国立博物館参観の日本人が巻き込まれるテロ(3月18日)。
⑧イラン核合意(7月14日)。イランと安保理常任理事国5カ国+ドイツの間で延々と続けられたイラン核開発制限を巡る議論が、難産の末、やっと決着。核合意は、7月20日に国連安保理で決議が承認され、90日後の10月18日に発効した。これによりイランは、当面10年間程度は核兵器開発をできなくなる一方、欧米は経済制裁を緩和する。イランの原油輸出が今年にも始まる見込みで、それを織り込んで世界の原油市場が大幅下落する一因となった(⑥参照)。
⑨欧州に経済「難民」100万人超。シリア内戦で、ギリシャ経由で大量の経済「難民」が押し寄せ、世界に波紋を広げた。豊かなドイツを目指す経済「難民」の通過路のハンガリーは国境を閉鎖、旧東欧圏を中心に経済「難民」受け入れ分担を求めるEUに拒否する国が広がった(写真)。経済「難民」の数は、前年の倍以上で、半数以上はシリアからの経済「難民」だ。パリ同時多発テロの犯人の中にも、シリアからの偽装「難民」が含まれていた。
⑩内外でトップ主導による企業不正が発覚。4月、東芝の会計不正が発覚、歴代3社長は、引責辞任。また9月、ドイツの名門フォルクスワーゲンで、世界規模の排ガス性能偽装が発覚、不正を主導した社長が辞任した。
この他に選外として、
・ISIL(自称「イスラム国」)がパルミラ制圧(5月21日)、世界遺産の神殿や文化財の大規模破壊を行う。ただしこれがピークで、年末にイラク政府軍がラマディ奪還するなど、ISILの敗勢が強まる。
・ノーベル生理学・医学賞に大村智・北里大特別栄誉教授、ノーベル物理学賞に梶田隆章・東大宇宙線研究所教授の日本人2人がノーベル賞授賞。
・ユーロ圏財務相会合でギリシャの金融支援合意(8月14日)
がある。
この他、エンジンの呼称で1度は金星周回軌道投入に失敗した日本の金星探査機「あかつき」が12月9日に奇跡的に再投入成功の明るいニュースがあった。また惑星探査機関連では、アメリカの探査機「ニュー・ホライズンズ」が7月14日に準惑星・冥王星に最接近、人類に初めて冥王星の素顔(写真)をプレゼントしてくれたことも忘れられない。
昨年の今日の日記:「現代の『ワイツゼッカー』神話を創り上げ、それに囚われた『進歩的』メディア・文化人たちの罪」