冥界の管轄する東嶽宮(とうがくきゅう)の祭神は、中央が東嶽大帝(とうがくたいてい)、向かって右が鄷都大帝(ほうとたいてい・冥界の入り口は四川省の鄷都名山にあり、その管轄神)、向かって左が十殿閻王(じゅうでんえんおう)です。第五殿の閻王は、名裁判官の包公(ほうこう)です。
東嶽大帝の脇侍の向かって右の役人は「世世因果」と書いている簿册をもち、向かって左の役人は、大理盆地の人々の寿命を記した「生死簿」(せいしぼ)をもっています。鄷都大帝の向かって左の脇侍の役人は、『三十六獄刑法』(さんじゅうろくごくけいほう)と、判例集である『二十四彙総案』(にじゅうしいそうあん)をもち、生前の行為の審判は厳正で、判例集もあることから、冥界の刑法整備は徹底しています。法学が盛んなようで喜ばしい限りです。
山門には寿命が尽きた人の魂をとりに来る白無常(しろむじょう)こと白衣差神(大理漢語:バイイーチャイセン)・黒無常(くろむじょう)こと黒衣差神(ハイイーチャイセン)で、同時に白衣財神・黒衣財神と呼ばれて、財神信仰にもなっています。差神は「差」(チャイ)が派遣されることを意味するのですが、財産の「財」(ツァイ)と発音が似ているので、財産の神様

地蔵王菩薩(写真は今回下にまとめています)
である財神となったようです。なぜか黒衣差神の神像はなく、財神殿があり、「一見發財」(ひとたび出会えば財をなす)と壁の上に大書しています。白衣差神は、白帽子に「一見人才」(ひとたび出会えば人、才をなす)と書いてあり、芭蕉の団扇を紙傘を持っています。
東嶽宮の裏には地蔵寺があり、冥界を司る地蔵王菩薩(じぞうおうぼさつ)を祀っています。東嶽大帝と仏教で衆生を救済する地蔵菩薩が協力して死者の魂を管轄しているのです
地蔵殿では中央が地蔵王菩薩・向かって右が大黒天神(だいこくてんじん)で、これは大理盆地に唐代から続くインド密教の影響です。いまでも多くの村で村神(本主という・大理漢語:ペンツー・ペー族語:ウズ)になっています。向かって左は道教の太乙救苦天尊で、仏教・道教ともに亡者の魂の救済をします。
亡者の救済が重要な意味をもつのは、中国では本来の寿命を全うする「寿終正寝」(じゅしゅうせいしん)できなかった異常死者(夭折・事故死・戦傷死・自殺など)は、それ自体が罪となり、亡くなった場所に魂がどどまって、冥界に行けないことも多く、異常死者の魂は、枉死者の魂とされて、地下冥界の役所である「陰曹地府」(大理漢語:インツァオディーフー・いんそうちふ)の入り口にある枉死城(おうしじょう)に集められ、地獄で服役してから転生しなければなりません。枉死城は紙銭などを燃やす金炉の隣にあり、枉死城でも紙銭を燃やして、亡者の救済を図ります。
金炉では、願文を入れた紙函を燃やしますが、その際、ポンという音が出ると、願いが届いたことになります。紙函の包み方が大事です。
東嶽宮の前には枉死城・血湖池(けっこち)・奈何橋(ないがきょう)があり、まい。生前の罪があると、奈何橋(奈何は「仕方がない」という死者の嘆きの意味がある)を渡ることが出来ず、牛頭・馬面の獄卒に血湖池に落とされます。そこには蛇がうごめいていて亡者を苦しめます。
死者を身近にもつ祭祀者たちは、その冤魂(えんこん)を救うために、血湖池にはしごを落とし、蓮華の灯明を血湖池に浮かべて、冥界に苦しむ死者の霊を救済します。
じつは明日も祭祀は続き、明日旧暦八月十六日は、外地で死んだ者や、異常死者の魂を送る日です。
写真1.東嶽大帝
写真2.鄷都大帝
写真3.十殿閻王
写真4.地蔵王菩薩
写真5.大黒天神
写真6.太乙救苦天尊
写真7.白衣差神(白無常)
写真8.黒衣差神(黒無常)の府堂
写真9.奈何橋・血湖池と亡者救済のハシゴと蓮華灯
写真10.枉死城

























