お盆終わる(2)─大理古城東嶽宮の参道で紙銭を燃やす

  本日は昨夜に続いてPM2.5が街では一年で最大濃度を記録する日です。何故かというと、街の人、いや、大理盆地中の人が、イスラーム教徒を除いて、一斉に紙銭を燃やすからです。先祖の生活費は、東嶽大帝のもとに集められ、東嶽大帝から先祖に渡されるといい、そのため、人々は東嶽大帝を祭祀する東嶽宮に赴き、廟の前で先祖に送る紙銭を焼きます。

写真1.まずは東嶽廟脇の川の橋の上で、紙銭の灰を捨てる。先祖の魂が送り出される。私は、義母と義父の妹さんについていきました。
  

  昨日先祖たちに紙銭を焼き送ったのに、今日もこれでもかというくらい燃やします。ですから近年の冥界
は、インフレが問題となり、紙幣の額面も「一億元」など、ヴェトナムドンなみに額面も急上昇しています。

  

      写真2.東嶽廟脇の参道で紙銭を燃やす。


  そのため、朝も早くから双獅路には大理古城や盆地のペー族の村から婦人たちが集まって、もうもうと煙りが立ちこめ,目が渋くて開くことさえままなりません。上空は紫気に覆われています。



    写真3.地蔵寺で地蔵菩薩の先祖の冥界での加護を願う。


  ここでは線香・紙銭のほか、紙衣・紙靴・紙帽を燃やしますが、野を漂う無縁の霊に祭祀用品がかすめ取られないよう、燃やす際には石灰で円を描いて結界を作り、その中で燃やすことになっています。

写真4.紙銭を燃やす前に石灰で結界をつくり、無縁の亡魂が祭祀品や先祖の生活資金を奪うのを防ぐ。


  今年連れ合いを亡くしたお婆さんが、慟哭して紙銭を燃やしていました。いつきいても悲痛な叫びですが、この時期よく出会います。感情表現が礼儀ともなった慟哭の伝統文化が息づいています。

写真5.今年連れ合いを亡くしたお婆さんは慟哭しながら紙銭を燃やしている。
  本旧暦八月十五日に先祖は冥界に帰ります。朝、前の日の晩に燃やした灰を冥界の管轄神である東嶽大帝(とうがくたいてい)の神廟である東嶽宮の脇に流れる川に流し、流れる灰とともに祖先は帰ってゆくといいます(現在は環境汚染になるのが川に流すのは禁止で、橋の上に置いていきます)。


  郊外のペー族の農村でも、小川に灰を流しています。すべての川は冥界に通じるのです。冥界への道には、途中市場があり、生活に必要なものはそこで買うといわれています。


  大理盆地は東嶽大帝の信仰が盛んで、大理古城では西門外の双獅路(そうしろ)の山側にあります。もう一箇所、洱海(じかい)南側の凰儀鎮(ふうぎちん)という街にもあり、ここは地獄を再現したテーマパークがあって、生前罪を犯した魂が、日々「あべし」「ひでぶ」の責め苦を受けているのです。いずれの東嶽宮も、他の地方と比べて造作は本格的な体裁をもちます。


  その参道では、冥界の生活用品の紙製の衣服や靴、東嶽大帝に死者の加護を願う「疏表」(大理漢語:スービャオ・そひょう)と呼ばれる願文を売る代筆屋や、物乞いたちが列をなして店を出しています。


  願文の代筆屋は、その場で祈願者の名と住所、対象となる先祖の名などを代筆します。老婦人は字が書けない人も多いです。漢字は知識階級が支配の道具として知識を独占するということが原則の中国社会の伝統的なありかたでは、庶民が字を識ることが求められてこなかったので、逆に字を書くこと自体が商売になります。願文は紙函(しかん)に入れられて求める渡されます。一つ1.5元くらいです。

(つづく…全3回)



写真2.東嶽廟脇の参道で紙銭を燃やす。

写真3.地蔵寺で地蔵菩薩の先祖の冥界での加護を願う。

写真4.今年連れ合いを亡くしたお婆さんは慟哭しながら紙銭を燃やしている。

写真5.紙銭を燃やす前に石灰で結界をつくり、無縁の亡魂が祭祀品や先祖の生活資金を奪うのを防ぐ。