ジビエ食の脳内寄生虫 vs ダンジョン飯の生命の賛歌 | katoo the world

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アメリカ・サウスダコタ州で、親戚の集まりで熊肉を食べた人らが、脳などの臓器に侵入する寄生虫に集団感染した。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)が発表した。

CDCによると、集団感染は2022年7月に発生し、野生の熊の肉を食べた6人が旋毛虫症(トリヒナ症)と診断された。

熊肉は、集まりに参加した一人がカナダで狩猟をして手に入れたもので、野菜と一緒に焼いて提供された。しかし肉そのものの色が黒かったため焼き加減がわかりにくく、完全に火が通っていない状態で食べたという。

人に寄生する寄生虫は意外に多く、世界では約200種類、此処日本に於いても約100種類が記録されている。

近々では新型コロナ禍から解放され、世界中を往来出来る様になった為か、トコジラミがフランスで大発生し問題となっているし、「世界で最も人間を殺している生物」と悪名高い”蚊”も、様々な寄生虫や病原菌を媒介する。

想像するのも恐ろしい事だが、寄生虫による脳感染症の症例も多く、神経嚢虫症、エキノコックス症、住血吸虫症は熱帯地域では顕著な感染症である。

2020年にはアメリカはシアトルにいる68歳の女性が、水道水で鼻うがいをしていたことで脳を食べる珍しいアメーバを摂り込んでしまい、亡くなった訳で、地球温暖化が進む中で、寄生生物の生態系も、間違い無く変化している。
此処日本に於いても、寄生虫リスクは在る。

また、ある種類の寄生生物が脳内に寄生すると、身体を乗っ取られるかの異常行動に出る事が有るという。

特に衝撃的だったのが、寄生虫「槍形吸虫」が脳に寄生されたアリがどのような行動をするかを明らかにしたデンマーク・コペンハーゲン大学研究チームの発表である。

槍形吸虫は、最初の捕食者である、蟻に寄生する。
蟻の体内を進み、脳に達すると、蟻の行動を制御し、牧草地の草の先端に上り、風などで振り落とされない様にアゴでガッチリと草に噛み付かせて固定。
牛や羊と言った家畜に食べられる迄、蟻には最低限の生命活動しか行わせず、ジッとその時を待つ。

牧草ごと家畜に食べられた寄生生物は、またも家畜の体内を進み、脳に達すると、家畜の行動を制御し、次なる生物に捕食される様に仕向ける。
肉食動物なのか、はたまた人間に狩られるか、何れにせよ、野生の中で無防備な状況に晒し、捕食される迄その行動を抑制するのだ。

実はこの寄生生物は脳内の快楽中枢にも寄生し、寄生生物の発する微弱な電波により寄生主を快楽に取り込まれて動けなくさせると言うのだ。

単体で生存出来ない寄生生物にとって、より安全な寄生先の確保は最優先事項だ。

昆虫より小型動物、小型動物より大型動物、草食動物より肉食動物...、と言う様に宿主を変えて、自らの種を安全に増殖させる為に行動する。

だが、食物連鎖の頂点に君臨する人間に寄生した際、寄生生物はその後、何をどうして行くのだろうか?
現代社会に於いて、人間と言う安全な宿主に寄生さえすれば、更なる宿主を探す必要は無い。

...となると、次なる行動は、繁殖である。

人体内で、爆発的に増殖する寄生生物。
しかし、その生命機能迄を奪ってしまっては、自らの生命を絶つ事にも等しい。
一人の人体で保持出来る寄生生物には限りが有り、ソレを飽和し過ぎると、人体の生命活動にも支障が出かねない。

なので、寄生先が知らぬ内に、次の人間に感染する必要が有る。
性交渉がその最たるタイミングと言えよう。

恐らく飽和状態まで寄生生物に寄生された人間は、脳内に寄生する寄生生物による電気信号により、底無しの性欲を与えられ、手当たり次第に性交を始める筈だ。

その際、身体中に潜む寄生生物は、一斉に粘膜まで移動し、交配時に相手の体内に移動する。
連鎖的に繁殖と感染を繰り返し、人間を操る寄生生物こそが、地球上の実質的な支配者となるのだ。

コレを「ブラジル脳線虫による脳寄生障害」として、ホラーエンターティンメント小説として見事に昇華したのが、貴志祐介著「天使の囀り」である。

先述の寄生虫「槍形吸虫」はアリ~草食動物~その捕食者との順に寄生するが、「天使の囀り」ではカタツムリを宿主とする寄生虫ロイコクロリディウムについて、仔細に語られる。

ロイコクロリディウムは日本に於いても3種発見されている寄生虫で、寄生されたカタツムリは、本来隠れている筈の昼間に、葉の上などの目立つ所に出て、自ら鳥に捕食される行動を取る。

その後、カタツムリ諸共捕食されたロイコクロリディウムは、鳥の腸内に寄生し成長。
卵を生み、その卵は鳥の糞と共に排出され、その糞をカタツムリが食べる事で命のループを繋いでいく。

この生物学的事実に、私は打ちのめされた。

そして、是等の寄生虫に感染した人間が、最期に取る行動とは…。

是迄、貴志の得意として来たオカルトやヒトコワでは無い、些か常軌を逸したトンデモ過ぎる感染者の症状を、生物学的な裏付けを伴った執拗な迄の仔細な描写を前に、自らの脳を掻き毟りたくなる恐怖を痛感する出色の作品である。

脳食いアメーバー vs 最高の人生の終わり方
https://ameblo.jp/katoo-the-world/entry-12615942147.html

さて今回、アメリカ・サウスダコタ州で、親戚の集まりで熊肉を食べた人らが、脳などの臓器に侵入する寄生虫に集団感染した事がアメリカ疾病予防管理センター(CDC)より発表された。

集まりに参加した一人がカナダで狩猟をして手に入れたもので、野菜と一緒に焼いて提供。
肉そのモノの色が黒かった為、焼き加減が分かりにくく、完全に火が通っていない状態で食べたとの事で、些か寄生虫リスクが高い状況にはある。

特に野ざらしで生きている野生鳥獣は、何らかの寄生虫を宿しているので生食は無茶だが、旋毛虫はメジャーな寄生虫であり、75℃以上での1分以上の過熱で死滅すると言う。

本件においては、やはり食肉加工についての基礎知識の有無が、重要なポイントと言えよう。

実はこの私かとぅ、先日熊鍋を食したのだが、まー、コレが実に美味かった。

牛肉に近い食感ながら味が濃く、とは言え鹿肉や兎肉の様なクセも無くて食べやすい。

猪肉同様に普通に食肉として流通出来るレベルの味わいだと感じたが、やはり畜産により品質管理されていない野生鳥獣は、調理する者にも食する者にも相応の知識が必要である。

頂いた熊鍋は店主自らが狩猟したジビエを、大切に加工~下拵えして料理として供している納得の逸品。

漫画「ミスター味っ子」や「美味しんぼ」、「ゴールデンカムイ」からの知識程度で恐縮だが、そもそもジビエは、猟師自身が相当上手く血抜きをしなければ、脂っこく獣臭くて食べられたモノでは無い。

基本はしっかり加熱する調理が肝要で、その為にもブロック肉やステーキとしてでは無く、薄くそぎ切りにしなければならない。

また、加熱する事で肉が硬くならない様にするには直火焼きでは無く、蒸し焼きないし煮込む調理法に適している。

何れにせよ、食肉として品種改良されていないジビエは相当にアクも出るし、香草やスパイスと言った香味食材が必要になるので、寄生虫リスクのみならず美味しく頂く為にも直火焼きはおススメしない。

ただ、アメリカ・サウスダコタ州とは言っても、カナダ国境には程近く、実際に参加者がカナダで狩猟をして手に入れた熊肉と言う事で、この辺りの食肉加工知識が無かったモノか、どうにも疑問が残る。

日本に於けるマタギとは、「自然と人間の調和を取る聖職」と敬意を向けられるが、カナダに於いてはレジャーとしての狩猟がメジャーだ。

勿論、様々な制約をクリアし、万全な安全対策と自然環境保護をクリアして、初めて狩猟許可を得る事が出来るのだが、ソレは食肉としてでは無く、毛皮や角の採取と言った「名誉」を求めたモノであり、食肉文化としては乏しいのでは無かろうか?

勿論、各国に於いて文化は違うし、当然是非が有るモノでも無い。

だからこそ、「名誉」を求めるならばその為の知識や知恵が必要だし、「食用」であればソレもまた然りである。

だから、「肉そのモノの色が黒かった為、焼き加減が分かりにくく、完全に火が通っていない状態で食べた」と言う体たらくは、些か命を頂いた熊や生命を育んだ大地への敬意を欠いた愚行と断じずにはいられない。

遅ればせながら漫画「ダンジョン飯」にハマっている。

名作ゲーム「Wizardry」の世界観そのままに、討伐したモンスターを如何に美味しく頂くか、をテーマとしたギャグ漫画なのだが、ダンジョン内で長年に渡り、モンスター食を経験して来たメンバーが腕によりを掛け、その命を大切に頂く姿勢には、思わず敬礼の想いが募る。

「食べる分だけいただく、これが鉄の掟だ」

「わしはこの迷宮で10年以上魔物食の研究をしている。魔物食に興味をもってもらえることが何よりも嬉しいのだ」

「まず食生活の改善!!生活リズムを見直し!!そして適切な運動!!その3点に気をつければ、自ずと強い身体は作られる!!」

「適度な疲れは飯をうまくする」

「何かを手軽に済ませると何かが鈍る。便利と安易は違う」

「ダンジョンも畑も一緒だ。ほったらかして恵みを享受することはできない」

「何より…ここで育ったものを食べ、自分からもダンジョンに分け与える。そのように暮らしていると、ようやくこの迷宮の中に入れたように思える。それが嬉しい」

「食わせなければ。若者には飯を食わせなければ」

「迷宮の外より中にいる魔物のほうが大概うまい。同じ魔物でも、深層のほうがうまいぞ」

「ここでは食うか食われるか。必死にならなければ食われるのはこちらだ。腹をくくれ!」

上記は魔物を倒す為の激では無い。

倒した魔物を前にして、如何に安全に美味しく頂くかを議論する哲学である。

そして、ソレは何時しかギャグ漫画などでは無く、「食する事=生きる事」と言う、人類、魔物問わず、全ての生物に向けた「生命の賛歌」かに心に響くのだ。

「人を漬物石に使うな」

エルフの魔法使いが放った一言も、真理と言えばそうなのかも知れない。

かとぅ