「どうして私は旅をしなくてはいけないの?」
私の当然の問いに対し、
「それがこの世界のルールだからだよ」
青年はそう答えた。
「ルール?」
「そう。この世界では自分の何らかの行動がきっかけで旅をすることになる」
「何らかの行動?」
「今君が水を飲んだのもそれさ。食事だったり、会話だったり、様々な行動には切符が隠されている」
「切符…」
さっきの車掌蟻もそんなことを言っていた。
「切符を手にしてしまったら必ず旅をしなくてはならないんだ」
「旅をしたくない場合は?」
青年はゆっくりと首を横に振る。
「汽車への乗車は拒めない。それはどんな罪よりも重いんだ」
「そうなんだ…。私はどこへ行くのかな?」
「ここの水を飲んだ場合、行き先は…」
ボォォォオオオ!
汽笛が上がった。
『間もなく発車いたします』
さっきの車掌蟻の声が車内アナウンスでそう告げる。
「必ずここへ帰ってくるんだ!そうしなければ君は…!」
シュボォー
けたたましい蒸気の音に阻まれ青年の声は届かない。
しかし、青年の必死の表情を見ている内に私の直感が警鐘を鳴らし始めた。
-ここに帰ってこなければならない-
シュッシュッシュッシュッ…
いよいよ汽車が動き始めた。
「ねぇ!ここの名前は!?」
声を振り絞る。
私には帰るべき場所の名前を知る必要がある。
「"名前のない泉"!」
予想外の返答に拍子抜けした。
「なによそれ!」
「それがこの駅の名前だ!」
シュッシュッシュッシュッ…
どんどんと泉は遠ざかっていく。
小さくなっていく青年が手に何かを持っていた。
それは…
①赤色の鍵
②黄色のコップ
③藍色のリンゴ
※どれかひとつ番号で選択してください。
9/21の更新はここまでです。
今後、不定期で連載します。
なお