魔女の子(2-2)



「オレらにコーヒーぶっかけておいてトンズラとは良い度胸だな」

3人組の男が目の前に立ちはだかる。

いやいや、あなたたちの顔なんて知らないから。
近くの席だったらあなたたちの顔覚えてるはずだし、コーヒーこぼした時点でそっちも何か言ってくるよね?

店を出てすぐ絡まれるとは。
回りの人も関わりたくないと、避けて通り過ぎていく。
朝から何やってるんだろ。

「ん? お前ら手袋してるな。『指無し』か」

「だったら何?」

僕はぶっきらぼうに答えた。

「別にこの町では珍しいもんでもねえけどよ。奇形のキモい奴はいるだけで不愉快なんだよ。コーヒーかけた分と不愉快にした慰謝料払って消えてくれよ」

3人組のリーダー格の男がニヤニヤと手を出す。
後ろにいる2人は腕組みして僕らを見ていた。
相手するのも面倒臭い。

「何だ? 変な術でも使うか? ショボい事しか出来ねえんだろ。この前の奴も指先に火付けるだけのへなちょこだったしな。タバコ吸う時にしか役に立たねえつーの」

3人で笑い出す。
ひとしきり笑って奴らはナイフを握りしめる。
目付きも鋭くなった。

「早く出せよ。それとも怪我したいのか?」

相手の言葉にため息が1つ。
やれやれ。

「············ワン」

小声で。
大した能力じゃないけど。

発動した途端に奴らの様子が変わる。

「何か、急に重くなってね?」

取り巻きが騒ぎ出す。

「あのガキの雰囲気。ヤバいかも」

少し、顔色が悪くなったように見えた。

一歩。

「な、何だよ!」

もう一歩。

「来るな!」

さらに一歩。

さすがに能力に気付いただろう。
表情が固まっていた。

「お、覚えてろよ!」

奴らは逃げ出した。
一体何がしたかったんだか。

「力、使ったね」

「少しだけ」

「別にそこまでしなくても良かったんじゃない?」

メルはフフフと笑った。

「元はと言えば私がコーヒーこぼしたのが悪いんだもんね」

「別にメルのせいじゃないし」

顔が熱い。
上目遣いなんてズルいよ。

「ふふふ」

ふいに男とも女とも言い切れない声が聞こえた。



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