人の心は複雑だ
複雑で難しい
頭ではわかっているのに
ちゃんと理解してるのに
それを100パー受け止めて
丸ごと全部受け入れられるかといえば
それはまた別の話しで
だから思い悩む
いつまでも
何年経っても
翔くんも
雅紀も
ずっと
ずっと
「36度5分……平熱だな」
「だから言ったじゃん、熱なんかないって」
ただ、突然胃が痛くなって目が覚めて、薬もなかったし、どうしようかと思って……
「そりゃあ、カップ麺やファストフードばっかじゃ
胃も痛くなるだろうな」
それに加えて、アルコールの瓶や缶。
分別してあるだけ立派だけど。
「とにかく、これ食って薬飲んでしばらく寝てろ。
その間、オレは部屋の掃除しとくから」
弱った胃に優しい、土鍋で炊いた鶏だしの中華粥。
友人の好物であることは、長い付き合いで知っている。
「それより、よかったの?
今日は墓参りに行くって言ってたじゃん」
散らかっていた(友人曰く、床に置いていただけで、別に散らかしてなんかない)雑誌を片付ける手が止まった。
そう、今日はあの2人と墓参りに行く予定だった。
翔くんのお姉さんで、雅紀の母親でもあるあの人の。
でも……
「いいんだよ。お前のほうが心配だったし」
「あ……そ、」
素っ気ない返事とはうらはら、赤く色づいた耳のことは敢えて黙っていよう。
2人で行かせたことを後悔はしていないけど、全く心配していないわけでもなく
ただ、色んな意味で互いに向き合う必要がある2人。
今日という日が、何かのきっかけになってくれたらいいんだけど……
「ほらほら、さっさと食べて薬飲む!」
「もう、急かすなよ」
翔くん、雅紀
お節介な家政夫でごめんな。
つづく