自分でも、どうしてそんなことを言ってしまったのかわからなかった。
でも、気づいた時には言葉となって、オレは翔さんに向かって聞いていた。
「翔さんはオレのこと、嫌いですか?」と。
「はあ!?雅紀お前、なに言って……」
「それともアレですか?
オレのこと、憎いですか?」
「おい雅紀、お前さっきから何言ってるんだ?」
あの日からずっと聞きたかった。
でも、怖くてずっと聞けなかった。
これまでと変わらない態度の翔さんに
あの日の夜聞いたことは、全部夢だったのかもしれないと、何度も思った。思い込もうとした。
オレは何も知らない。
何も聞いていない。
そうすることでしか自分の心を守れなかった。
でも、辛いのはオレだけじゃないから
悲しいのもオレだけじゃないから
大切な人を失ったのは、翔さんだって同じだから
「翔さん、正直に答えてください。
オレのこと、嫌いですか?
オレのこと、憎いですか?」
「雅紀!!」
「オレさえいなかったら
オレさえ生まれてこなかったら
そしたら母さんは
きっと死なずに済んだかもしれないのに……」
バシッ!!
左頬に感じた痛み。
オレはその日、初めて翔さんに叩かれた。
つづく