優秀な家政夫のおかげで引越しも予定より早く終わり、3人での生活が本格的に始まった。
雅紀はとてもおとなしい少年だった。
イマドキの中学生がどんなもんかなんて知らないが、俺らの頃は
少なくとも俺の中学生時代と比べると、雅紀はおとなしくて控えめな少年……という印象だった。
もちろん、緊張もしていたんだろう。
いくら俺が彼の叔父とはいえ、子どもの頃から知ってたわけじゃない。
会ったのはついこの間のことだ。
それなのに、いくら事情があるとはいえ、いきなり同居することになって
しかも、そのせいで苗字まで変わって
もし俺が雅紀なら、たとえここが自分の家でも落ち着かないし、むしろ反抗的になってしまうかもしれない。
なにより俺自身、中学生の雅紀とどう接していいのかわからず、つい言葉少なになってしまっていた。
「雅紀、これテーブルに並べてくれ」
「雅紀、明日もジャージ持ってくのか?」
「雅紀、保護者宛のプリントがあるなら
ちゃんと出しとけよ」
正直、ここに潤がいてくれたことに
俺と雅紀の2人きりじゃなかったのことにホッとしていた。
「翔くんは、その子を愛せるの?」
「その子の父親のせいで有紀さんは……」
そんなの、本当は俺にだってわからない。
わからないけど
「翔くん、お願い」
それが姉さんの……俺が初めて好きになった人の望みだから
俺は全てを受け入れるつもりだし、受け入れたつもりだった。
つづく