母さんが亡くなり、叔父である翔さんに引き取られたことで、オレは苗字が変わり、住む家も変わった。
正直、「相葉雅紀」から「櫻井雅紀」になることに、全く抵抗がなかったわけじゃない。
でも、本当なら児童養護施設に入れられてもおかしくない立場のオレが
翔さんが現れたことで
手を差し伸べてくれたことで
転校することも、友達と別れることもなく、むしろ恵まれた生活環境を与えられ、感謝はしても不平不満なんて言えるはずもなかった。
実際、不平不満なんてひとつもなかったけど。
新しい家は一軒家で、今まで住んでいたアパートより学校に近くて、生まれて初めて自分の部屋を与えてもらった。
家政夫の潤さんに手ほどきを受け、少しずつ料理も覚え、毎日が新鮮で楽しかった。
翔さんはあまりお喋りな方じゃないけど、時間があれば勉強を教えてくれたし、どんなに仕事が忙しくても学校の行事には必ず来てくれた。
「ねぇねぇ、あの人誰のお父さん?」
「若くてかっこいいね」
「うちのパパとは大違い!」
翔さんを見てキャーキャー騒ぐ女子達に、ちょっとだけ優越感を持ったりもした。
でも、3人で暮らし始めて3度目の6月。
母さんの命日だったあの日
オレは翔さんの本音を偶然聞いてしまったんだ。
つづく