3人で囲む食卓
つけっぱなしのテレビからは、今日の天気を伝える女性キャスターの明るい声が聞こえてくるけど
それ以外は誰も何も言わず、浅漬けのキュウリを齧る音さえもやけに大きく響いて聞こえた。
「雅紀、おかわりは?」
「いえ……大丈夫です」
「お前、タダでさえ痩せてんだから
もっとしっかり食べないと」
「……はい」
自分では結構食べてるつもりだけど、なかなか太れないのは体質のせいかもしれない。
「翔くんは?」
「俺もいい」
「あ、そ」
…………
…………
…………
いつもはもっと賑やか……というわけじゃないけど、今朝はいつもと違う気がする。
心做しか翔さんも機嫌が悪そう……というか
まだ眠いのかな?
それとも、オレが中途半端に起こしちゃった?
だから怒ってる?
潤さんの作ってくれた朝ご飯は、どれもとっても美味しいはずなのに
こんなんじゃ味がわかんないよ。
このままだと消化不良になりそうで、茶碗や皿に残っていたものをパパっと口に入れ、「ごちそうさまでした」と手を合わせ、席を立ったその時
「雅紀」
「は、はい」
翔さんがオレを呼び止めた。
「お前、来月の9日は何の日か忘れてないよな?」
「来月……?」
6月9日って……
「あ……」
「一緒に墓参りに行くからな」
「……はい」
母さんの命日だ。
つづく