目次
1.名人防衛!
2.叡王戦は最終局へ
3.今後のタイトル戦
4.藤井聡太八冠のライバル
1.名人防衛!
藤井聡太名人に豊島将之九段(34歳、現時点)が挑戦する第82期名人戦七番勝負は、第4局終了時点で名人から見て3勝1敗となりました。
ただ、将棋の内容は熱戦も多く、星の差ほど一方的ではないように見受けられました。
並行して進んでいる叡王戦で名人がすでに2敗しているので、名人は不調では?という見方も多かったようです。
第5局は5月26・27日の両日、北海道紋別市「ホテルオホーツクパレス」で行われ、後手豊島九段が飛車を四間に振る対抗形となりました。
タイトル戦での振り飛車採用は、菅井八段以外だと珍しいと思います。
ただ、名人が居飛穴とした後は評価値が藤井曲線を描く展開となり、名人が快勝しました。
これで、名人の4勝1敗で初防衛となりました。
おめでとうございます!
これまでの実績から見て2日制のタイトル戦で八冠がタイトルを奪われることは当面ないとは思っていましたが、とりあえず最重要の名人位防衛が果たせて良かったです。
いつも通り、今期名人戦を表の形でまとめておきます。
また、今回から対局の時間割(スケジュール)も載せます。
第82期名人戦七番勝負(2024年4月~5月)
名人 藤井聡太八冠 vs. 挑戦者 豊島将之九段
2日制・持時間9時間・ストップウォッチ
主催 毎日新聞社、朝日新聞社
通算 王位戦 日にち 先後 戦 型 手数 勝敗 .
438 第1局 24/4/10・11水木 先手 横歩取り 141 ○
440 第2局 24/4/23・24火水 後手 相掛かり 126 ○
442 第3局 24/5/8・9水木 先手 後手雁木 95 ○
443 第4局 24/5/18・19土日 後手 横歩取り 95 74
444 第5局 24/5/26・27日月 先手 四間飛車 99 ○
(注) 勝敗は藤井八冠から見たもので、○が勝ち、数字は負けで通算何敗目かを表す。以下同様
名人戦 場 所 .
第1局 東京都文京区「ホテル椿山荘東京」
第2局 千葉県成田市「成田山 新勝寺」
第3局 東京都大田区「羽田空港第1ターミナル」
第4局 大分県別府市「割烹旅館もみや」
第5局 北海道紋別市「ホテルオホーツクパレス」
対局の時間割
(1日目) (2日目)
9:00 対局開始 9:00 対局開始
10:00 おやつタイム 10:00 おやつタイム
12:00~13:00 昼食休憩 12:00~13:00 昼食休憩
15:00 おやつタイム 15:00 おやつタイム
18:30頃 封じ手 17:00~17:30 夕食休憩
終局
2.叡王戦は最終局へ
将棋界の新年度は、叡王戦五番勝負と名人戦七番勝負から始まります。
名人戦は、すでに5月27日に名人防衛で決着が付きました。
対して、叡王戦は第3局終了時点で藤井叡王から見て1勝2敗となり、すでに後がありません。
特に、タイトル戦での連敗は今回が初めてです。
それに伴い、名人戦の箇所でも触れた八冠の不調が囁かれ、理由として歯の矯正などが挙げられています。
本日5月31日(金)、第4局が千葉県柏市「柏の葉カンファレンスセンター」で行われ、角換わり腰掛銀となりました。
徐々に叡王が有利を拡大していき(藤井曲線)、132手で叡王の勝利となりました。
今期五番勝負はこれで2勝2敗、決着は最終局に持ち越すフルセットの展開となりました。
最終第5局は、来月6月20日に山梨県甲府市「常磐(ときわ)ホテル」で行われます。
先後については、改めて振り駒が行われることとなります。
第9期叡王戦五番勝負(2024年4月~6月)
叡王 藤井聡太八冠 vs. 挑戦者 伊藤匠七段
1日制・持時間4時間・チェスクロック
主催 不二家 特別協賛:ひふみ
通算 王位戦 日にち 先後 戦 型 手数 勝敗
437 第1局 24/4/7日 先手 角換わり腰掛銀 107 ○
439 第2局 24/4/20土 後手 角換わり 87 72
441 第3局 24/5/2木 先手 角換わり腰掛銀 146 73
445 第4局 24/5/31金 後手 角換わり腰掛銀 132 ○
第5局 24/6/20木 振駒
叡王戦 場所 .
第1局 名古屋市「か茂免」
第2局 石川県加賀市「アパリゾート佳水郷」
第3局 名古屋市「名古屋東急ホテル」
第4局 千葉県柏市「柏の葉カンファレンスセンター」
第5局 山梨県甲府市「常磐ホテル」
対局の時間割
09:00 対局開始
10:00 午前のおやつ
12:00 昼食休憩
13:00 対局再開
15:00 午後のおやつ
3.今後のタイトル戦
藤井八冠はすべてのタイトルをもっているので、一年中タイトル戦を戦っています。
新年度は名人戦と叡王戦で始まりましたが、それらが終わると次は棋聖戦と王位戦です。
ともに挑戦者はすでに決定しています。
棋聖戦五番勝負の挑戦者は、山崎隆之八段です。
今期は二次予選から登場して、決勝トーナメントを勝ち抜き、4月22日に佐藤天彦九段との挑戦者決定戦で勝利して挑戦者となりました。
山崎八段は43歳で、本人は最後のタイトル挑戦となることを意識しているようです。
棋聖戦五番勝負の日程は次の通り。
第94期ヒューリック杯棋聖戦五番勝負(2024年6月~7月)
棋聖 藤井聡太竜王名人 vs. 挑戦者 山崎隆之八段
1日制・持時間4時間・ストップウォッチ
主催 産経新聞社 特別協賛 ヒューリック
棋聖戦 日にち 場所 .
第1局 24/6/6木 千葉県木更津市「竜宮城スパホテル三日月」
第2局 24/6/17月 新潟県新潟市「高志の宿 高島屋」
第3局 24/7/1月 愛知県名古屋市「亀岳林 万松寺」
第4局 24/7/10水 兵庫県洲本市「ホテルニューアワジ」
第5局 24/7/23火 静岡県沼津市「沼津御用邸東附属邸第1学問所」
次に王位戦ですが、挑戦者決定の仕組みは、次の通りです。
・紅組、白組という2つの挑戦者決定リーグがあり、各6名で争う。
・挑決リーグ計12名のうち4名はシードで、前期七番勝負の敗者、挑決リーグの成績が2位以上の者。残り8名は、当期予選を勝ち抜いた者。
・紅組優勝者と白組優勝者で挑戦者決定戦を戦って、挑戦者が決まる。
挑戦者決定リーグがあるのは王位戦と王将戦で、リーグ残留は順位戦A級や竜王ランキング戦1組の在籍に準ずる価値があるとされます。
今期は、紅組では斎藤慎太郎八段が、白組では渡辺明九段が、ともに4勝1敗という成績で優勝しました。
昨日5月30日(木)、渡辺明九段が斎藤慎太郎八段との挑戦者決定戦を制して、挑戦者となりました。
渡辺九段は、かつては複数タイトル保持者でしたが、次々と藤井挑戦者にタイトルを奪われて無冠となりました。
久々に満を持しての登場で、借りを返したいとの発言もありました。
王位戦七番勝負は毎年7月~9月に行われますが、今年の日程はまだ発表されていません。
4.藤井聡太八冠のライバル
羽生善治九段(十九世名人有資格者)には羽生世代と呼ばれる同年代のライバルが何人もいるのに対して、藤井八冠には同年代のライバルがなかなか現れませんでした。
しかし、ようやくライバルと呼べそうな存在が登場しました。
それが伊藤匠七段と藤本渚五段のお二人です。
匠七段は、藤井八冠と同学年の21歳。
昨年秋に竜王挑戦、今年2月に棋王挑戦、そして4月に叡王挑戦と藤井八冠に対するタイトル挑戦が続いています。
その内容も竜王戦、棋王戦では1勝も挙げられませんでしたが、叡王戦では上で見たように2勝を挙げており、藤井八冠を苦しめる存在となっていることは誰しも認めるところでしょう。
藤本五段は、藤井八冠より学年で3年下の18歳です。
一昨年10月にプロデビュー。
昨年度は、藤井八冠と並んで、中原十六世名人(引退)が若い頃に打ち立てた歴代最高勝率0.8545を破るかどうかというデッドヒートを演じました。
結果はともに年度最後の時期の敗北により記録更新はできなかったのですが、藤本五段のお名前は将棋ファンの脳裏に刻み込まれたものと思います。
藤井八冠とお二人の基本的な情報についてまとめておきます。
棋士番号 名前 生年月日 年齢 段位 プロ入り 順位戦 竜王戦
307 藤井 聡太 2002/7/19 21 竜王名人 2016/10/1(14) 名人 竜王
324 伊藤 匠 2002/10/10 21 七段 2020/10/1(17) C1 1位 1組
333 藤本 渚 2005/7/18 18 五段 2022/10/1(17) C2 52位 6組
(注) 順位戦と竜王戦は現在の所属クラス。
棋士番号 名前 A級以上 1組以上 対局数 勝数 負数 勝率 .
307 藤井 聡太 3期 3期 445 370 74 0.8333
324 伊藤 匠 ― 1期 194 144 49 0.7461
333 藤本 渚 ― ― 81 65 16 0.8024
(注) 対局数以降は通算。藤井八冠と匠七段の勝数と負数の合計が対局数より1だけ少ないのは、両者の対局で持将棋1局があるため。勝率の計算では分母から持将棋を除いている。
さらにもう一人、まだ15歳の山下数毅三段をライバルの一人に挙げる声もあります。
山下三段は竜王戦6組に登場し決勝まで進みましたが、惜しくも決勝で藤本五段に敗れ歴史的快挙とはなりませんでした。
将来楽しみな棋士候補ではありますが、まだ奨励会員なので、プロ入りしてからその実力を判断すべきだと思います。