高速電波バーストの謎に迫るマグネターの双子グリッチ | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 アストロアーツ2月21日付記事、元は京都大学です。

 高速電波バーストの謎に迫るマグネターの双子グリッチ - アストロアーツ (astroarts.co.jp)

 

 概要>強磁場を持つ中性子星「マグネター」のX線観測で、高速電波バーストに付随して自転が急に速くなる「グリッチ」が2回連続で検出された。高速電波バーストの発生機構の解明につながると期待される成果だ。

 

 最初に「高速電波バースト」の解説があります。

 

 >高速電波バーストは、数百メガヘルツから数ギガヘルツの電波帯で1ミリ秒以下という非常に短い時間に起こる突発現象だ。2007年に初めて報告されて以降、そのほとんどが天の川銀河外に起源を持つことがわかっていて、高速電波バーストを起こした天体の母銀河が特定された例もある。しかし、高速電波バーストを起こす天体の正体は明らかになっていなかった。

 

 高速電波バーストは Fast Radio Burst の訳で、英語では FRB と略します。

謎の天文現象としてホットな話題であり、その正体の解明に世界の天文学者が取り組んでいます。たとえば、

 ネーチャー今年の10人(2019) | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)  「4.Victoria Kaspi 」の箇所以降

 サイエンス誌2020年のブレークスルー | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp) 5です

 

 >そんな中、天の川銀河内に存在する「マグネター」(強磁場を持つ中性子星)の一つ、こぎつね座の「SGR 1935+2154」が、2020年4月28日にX線バーストを頻発し、さらにそのX線バーストの一つと高速電波バーストが同時に検出された。この観測から、少なくとも高速電波バーストの一部はマグネターを起源としていることが明らかになった。ただし、観測が少ないため、発生機構はまだ明らかになっていない。

 

 マグネターについては次の記事をご覧ください。

 △パルサーってどんなものなの? | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp) 4です

 

 こぎつね座(Vulpecula; Vul)は夏の星座で、はくちょう座とわし座に挟まれている小さな星座です。
一番明るい星でも4等星なので、目立ちません。

 

 英文wikiによると、「SGR 1935+2154」は、銀河系内にあり地球から3万光年離れているとのこと。

 

 X線と電波はどちらも同じ電磁波ですが、波長の桁が全く異なります。

 ですから、両者が同時に検出されるというのは決して当たり前のことではないのです。

 

 2020年4月28日のX線バースト頻発により「少なくとも高速電波バーストの一部はマグネターを起源としている」のは、共通認識となっています。

 

 >その約2年後の2022年10月10日、SGR 1935+2154が再び類似したX線バーストを頻発しはじめた。この現象にいち早く気が付いた台湾国立彰化師範大学のChin-Ping Huさんたちの研究チームは、前回と同様に高速電波バーストが発生することを期待して、国際宇宙ステーションに設置されたNASAのX線望遠鏡「NICER」やX線天文衛星「NuSTAR」に緊急観測を要請し、同月12日から4日間にわたるモニタリング観測を行った。

 

 「X線バーストを頻発し」始めたので、高速電波バーストも発生することを期待して緊急観測を行ったと。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の上の画像をご覧ください。

 SGR 1935+2154のモニタリング観測のイメージイラストです。

 こういうのを見るといつも思うのですが、画家の描いた絵を見て理解が深まるのかどうか疑問です。

 

 >観測開始から2日後の14日、期待どおりにマグネターが高速電波バーストを起こした。残念ながら地球の影であったため高速電波バーストそのものの瞬間にX線観測はできなかったが、バーストの発生前後の2日間にわたって、かつてない高頻度のX線観測データが得られた。

 

 地球の影に入ったため「高速電波バーストそのものの瞬間にX線観測はできなかった」というのですが、それなら高速電波バーストそのものの観測はどのように行ったのかな?

 

 >マグネターを含む中性子星は表面にホットスポットと呼ばれる高温の領域があり、そこからのX線が自転に伴ってパルス的に放射されるので、そのパルスを観測すれば星の自転を測定できる。HuさんたちはX線パルスの到来時間を詳しく解析し、今回の高速電波バースト前後の時間でSGR 1935+2154の自転がどのように変化したかを調べた。

 >その結果、この天体は高速電波バースト発生の約4時間前と4時間後に、急激に自転が速くなるグリッチ(スピンアップ・グリッチ)という現象を起こしていたことが明らかになった。

 

 中性子星のホットスポットからX線が放射されるのですね。

 

 グリッチとは、高速回転する中性子星の自転が突然速くなる現象です。

 中性子星の外核では、中性子が摩擦のない超流体になっています。

 中性子星の自転は時間とともに遅くなりますが、摩擦なしで流れている超流体は遅くなりません。

 両者の自転速度の違いがあまりに大きくなると、超流体は角運動量を地殻に伝達し、自転が急に速まるという現象がグリッチで、地震に例えられます。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の真ん中の画像をご覧ください。

 マグネターSGR 1935+2154のX線パルスの自転周波数の変化(上)と、それぞれの時刻での周波数の時間変化率の絶対値(下)です。

 上図では、上の方が自転が速くなっています。

 青いデータ点は観測値、オレンジの線はモデルを示します。

 赤の点線は高速電波バーストが起こった時間(図の時刻原点)、紫の点線は2回のグリッチの時刻を示しています。

 ただ、クリックしても拡大しないので、見にくいです。

 

 >このようなグリッチはこれまでにもいくつかの中性子星で観測されているが、高速電波バーストに付随して観測されたこと、短期間にほぼ同じ強度で2度連続して観測されたことは今回が初だ。また、今回の双子のグリッチはこれまでに観測された中で最大級であることもわかった。

 

 「双子のグリッチ」とは、「高速電波バースト発生の約4時間前と4時間後」に起こった2回のグリッチのことを言っているのですね。

 

 双子のグリッチが高速電波バーストに付随して観測されたのは、今回初とのこと。

 また、グリッチとしては最大級であると。

 

 >2度のグリッチの間で自転が急激に減速していることから、何らかの方法でエネルギーが放出されたと考えられる。観測データを元に計算したところ、放射によって失われたエネルギーは10%程度と見積もられた。放射エネルギー以外の理由で減速が起こった可能性を示唆するものである。

 

 グリッチ自体は自転が突発的に速くなる現象ですが、2つのグリッチの間では自転が急激に減速していたということです。

 これは「何らかの方法でエネルギーが放出された」ことを意味しており、かつその失われたエネルギーの大きさから「放射エネルギー以外の理由で減速が起こった可能性を示唆」していると。

 

 >今回の研究では高速電波バーストが起きる際にマグネターの自転が短時間で大きく変化していることが示され、マグネターの活動と高速電波バーストとの関連を解明するうえで有用な成果が得られた。今回のような電波とX線を結びつけた多波長観測や、高頻度なマグネター観測などにより、さらに研究が進展することが期待される。

 

 宇宙最強の磁石であるマグネターの活動と高速電波バーストの関連がさらに解明されることを期待します。

 

 最後に、アストロアーツ掲載の下の画像をご覧ください。

 今回の研究成果を描いた4コママンガ「マグネターって不思議!SGR 1935+2154編」です。

 「不思議すぎない!?」とありますね。

 

 

 ★ 今日は雨の一日でした。この時期(3月下旬~4月上旬)の長雨を「菜種梅雨」といいます。一方で、二十四節気は清明(三月節)がこの時期で、今年は明日4月4日です。清明は晴れのイメージですが、本家の中国でも雨が降ることはあったようです。

 清明の漢詩など | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 

 ★★ 今日のロジバン 不思議の国のアリス184

   .i la .alis. tai cinmo lo ka tolpacna kei ja’e lo nu bredi lo nu cpedu lo nunsidju ma kau

  アリスは、もう切羽詰まっていて、誰でもいいから助けてほしい気分。

 tai : ~に似た形をした。法制詞BAI類 <- tamsmi 似ている

 cinmo : x1はx2(感情)をx3について覚える;x1は感情的/ムードに浸っている。-cni- [生命・感情]

 tolpacna : 絶望的だ <- tol+pacna 希望, tol<- to’e 段階反対

 pacna :期待する/希望する/願う,x1は x2(事)を x3(見込み/確率0~1)で;x2は望まれている [生命・態度]

 ja’e : ~を結果として/となって。法制詞BAI類 <-jalge 結果

 bredi : 準備できている/用意が整っている/覚悟している,x1は x2(事)に向けて。-red-, -bre- [過程・制御過程]

 cpedu : 頼む,x1は x2(事)を x3(者)に x4(態度/方法)で。-cpe- [言語・コミュニケーション] 「依頼」「懇願」「注文」「呼ぶ」など

 nunsidju : 救助だ <- nun+sidju, nun<- nu

 

 全体の主述語は { tai cinmo } で、そのx1が { la .alis } 、x2が { lo ka tolpacna kei }で、「絶望的な感じになっている」です。

 さらに、後ろから ja’e で始まる法制節が掛かっています。

 法制節内の主述語は bredi で、そのx1はアリスでしょうが省略されており、x2(事)が { lo nunsidju } 、x3(者)が { ma kau } です。

 bredi は英語の ready の連想で覚えればよいでしょう。

 出典は、

 lo selfri be la .alis. bei bu'u la selmacygu'e (lojban.org)