初期宇宙のクエーサーから強烈に噴き出す分子ガス | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 アストロアーツ2月8日付記事、元はアルマです。

 初期宇宙のクエーサーから強烈に噴き出す分子ガス - アストロアーツ (astroarts.co.jp)

 

 概要>初期宇宙の銀河で、星の材料である分子ガスが激しく大量に噴き出すアウトフローがとらえられた。分子ガスは短期間で枯渇するとみられ、アウトフローが遠方銀河の星形成を抑制するという理論予想を裏付ける結果だ。

 

 >宇宙の歴史のなかで銀河がいつどのようにして星を作りにくくなるのかは、天文学の大きな謎の一つである。宇宙誕生後わずか15億年ごろの遠方宇宙に、すでに星形成が不活発な巨大銀河が存在しており、こうした銀河は活発な星形成時期を経験した後、何らかの原因で星形成が抑制されたと考えられる。

 

 初期宇宙に「すでに星形成が不活発な巨大銀河が存在して」いるというのは、天文学、特に宇宙論における謎の一つです。

 138億年という長い時間のなかで少しずつ星が形成され銀河が成長してきた、というのなら「小さく生まれて大きく育つ」わけなので分かりやすいのですが、あっという間に爆発的星形成が行われて巨大銀河が誕生し、そこで打ち止めというのは考えづらいです。

 

 ここで問題となるのは「活発な星形成」ではなく、それが終わった理由の方なのですね。

 宇宙は膨張を続けているので、宇宙年齢の若い時期ほど平均物質密度が大きかったのだから、「活発な星形成」が行われてもそれほど不思議ではない、という理解でよいのかな?

 

 >原因の一つとして挙げられているのが、銀河からのガスの噴き出しである「アウトフロー」だ。たとえば現在の宇宙では、渦巻銀河の円盤の上下に噴き出すアウトフローが観測されている。とくに、星の材料である分子ガスのアウトフローは、銀河内の星形成の進み具合を調節する大切な働きをする。銀河における星形成の抑制メカニズムを明らかにするには、初期の宇宙に遡って星形成とアウトフローの関係を調べることが重要となる。

 

 アウトフローという用語はときどき見かけますが、単に「外への流れ」という意味ですね。

 

 >分子ガスのアウトフローを生み出す可能性がある天体として、銀河中心の超大質量ブラックホールに物質が落ち込むことで明るく輝くクエーサーと呼ばれるタイプの天体が存在する。しかし、宇宙初期のクエーサーにおいて分子ガスのアウトフローが観測された例は、これまでに2天体しかない。しかも、その2天体で観測されたアウトフローは、星形成の進行を左右し銀河の成長に影響を及ぼすほど強いものではなかった。

 

 普通の天文現象では、銀河内のガスを銀河の外まで噴き出すことは考えられないので、その候補は絞られます。

 巨大ブラックホールに周囲の物質が落ち込むことが莫大なエネルギーが解放されるクエーサーは、最有力候補でしょう。

 それほど激しい現象であれば、これまでいくらでも観測されていそうなものですが、ほとんどないというのが不思議です。

 

 >北海道大学高等教育推進機構のDragan Salakさんたちの研究チームは、宇宙年齢10億年未満の時代において最も明るいクエーサーの一つ、みずがめ座の「J2054-0005」をアルマ望遠鏡で観測した。その結果、星の材料となる分子ガスがアウトフローとして銀河の外へ激しく噴出していて、初期宇宙の銀河の成長に大きな影響を与えていたとみられる強い証拠を世界で初めて得た。

 

 「北海道大学高等教育推進機構」って何?と思い、検索してみると

 >>北海道大学の目指す高等教育の実現を図るため、教育研究組織間の連携を強化するとともに、高等教育に関する研究を推進し、並びに国際的な教育事業を実施し及びその研究開発を推進し、もって北海道大学の教育機能の向上を図るとともに、全学的な教育及び学生の支援に資することを目的として設置されています。

 >>現在、高等教育推進機構には、教育企画機能、教育実践機能、教育研究機能、教育・学生支援機能を司る6つの部と2つのセンターが存在しています。<<

 

 学内の連携と国際的教育の推進機関といったところでしょうか。

 

 Dragan Salakさんは、セルビアの大学を卒業し、2008年に来日、筑波大学でPhDまで取っています。男性です。

 ご本人のサイトは英語のもののみで、日本語がどの程度お出来になるのかは不明です。

 現代科学の共通語は英語なので、日本語ができなくても研究に支障はないでしょうが。

 

 みずがめ座(Aquarius, Aqr)はトレミーの48星座の一つで、黄道十二星座にも含まれることから占星術のおかげで星座の中でも知名度が最も高い方だと思います。

 代表的な秋の星座ですが、3等星が3個で、あとは4等星以下の暗い星ばかりです。

 ニューエイジ系の影響で「アクエリアス」の方が通りがいいかもしれないと思ったのですが、それは20世紀後半という遠い昔のことで、現在ではスポーツドリンク名で定着しているみたいですね。

 

 >J2054-0005からの分子ガスのアウトフローは、観測者から見て手前側にあるガスがヒドロキシルラジカル(OH)分子固有の波長の電波を吸収することによって生じる「吸収線」を、いわば「影絵」のように観測することで明らかになったものだ。

 

 Wikiによると、ヒドロキシルラジカル(OH)は、いわゆる活性酸素と呼ばれる分子種のなかでは最も反応性が高く、最も酸化力が強い。

 しかし、そのために地上の環境下では長時間存在することはできず、生成後速やかに消滅するとのこと。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の画像をご覧ください。

 上は、クエーサー「J2054-0005」から噴き出す分子ガスのアウトフローの想像図とヒドロキシルラジカル(OH)分子のイメージイラストです。

 下は、分子ガス中のOH分子によって生じる吸収線の説明図です。

 放出されるガスは観測者方向へ向かうため、短い波長に吸収線の中心が移動(ドップラーシフト)します。(k:青方偏移)

 この様子が観測されたことからアウトフローが示されました。

 また、吸収線の幅が大きく広がっていて、アウトフロー中のOH分子が様々な速度であることが分かります。

 

 >詳しい解析の結果、分子ガスが典型的には毎秒700km、最大で毎秒1500kmにも達する速度で銀河の外へ噴き出していることがわかった。この速度をもとに計算すると、J2054-0005から流出する分子ガスの量は1年間に太陽質量の1500倍ほどになる。これは銀河で1年間に誕生する星の質量の2倍に相当し、星の材料となる分子ガスが激しく失われていることがわかる。分子ガスのアウトフローが遠方銀河の星形成を抑制するという理論予想を強く裏付ける証拠だ。J2054-0005では、今後約1000万年という天文学的に非常に短い間に、分子ガスが枯渇すると予想されている。

 

 分子ガスの噴出速度が最大で毎秒1500kmというと、光速度の0.5%ですね。

 

 要点は、次の通り。

 ・流出する分子ガスの量は1年間に太陽質量の1500倍

 銀河で1年間に誕生する星の質量の2倍に相当、星の材料となる分子ガスが激しく流出

 ・今後約1000万年という天文学的に非常に短い間に、分子ガスが枯渇すると予想

 

 宇宙年齢と比べてこれほど短い期間に分子ガスが枯渇してしまうのであれば、これまで観測されてこなかったことも納得できますね。

 

 

 ★ 今日は冷たい雨が一日中降りしきり、大雨の時間帯もありました。でも、冬の寒さは今日までで明日から次第に暖かくなるようです。あと数日で年度変わりです。

 

 ★★ 今日のロジバン 不思議の国のアリス178

   ni’o ba za ku .abu tirna lo nu cmalu stapa lo darno kei gi’e …

  [新段落] しばらくすると、アリスは遠くからピタピタという小さな足音を聞いたので、・・・

 tirna : 聞く,x1は x2(対象音声)を x3(環境音声)に対して;聞こえる,x2が x1に

;聴覚がある,x1には;可聴音だ,x2は。-tin- [生命・知覚・聴覚]

 stapa : 踏む,x1は x2を x3で。-tap- [動作・自己移動・活動的]

 darno : 遠い,x1は x2から x3(性質)に関して -dar-, -da’o- [空間・相対位置]

 

 gi’e で結ばれた複述構文で、長いので gi’e の前で切りました。

 最初に、時間経過を表す { ba za ku } [時間・方向・未来] [時間・距離・中]が置かれています。

 全体のx1は .abu です。

 gi’e の前までの主述語は tirna 「聞く」で、そのx2(対象音声)が抽象節 { lo nu cmalu stapa lo darno kei } 「遠くで小さく足音を立てるのを」です。

 stapa は英語のstampの連想で覚えましょう。

 出典は、

 lo selfri be la .alis. bei bu'u la selmacygu'e (lojban.org)