数百万光年規模でダークマターを初検出 | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 アストロアーツ2月15日付記事、元はすばるです。

 数百万光年の規模でダークマターを初検出 - アストロアーツ (astroarts.co.jp)

 

 概要>かみのけ座銀河団から数百万光年にわたり延びるダークマターが検出された。これほどの規模で宇宙の大規模構造を形作るダークマターの網目分布が検出されたのは初めてのことだ。

 

 ダークマターについて基本的なおさらいをしておきましょう。

 ダークマターは漢字で書けば暗黒物質で、物質ではあるけれども「見えない」ことが最大の特徴です。

 「見えない」というのは、電磁波で観測できないことを意味します。

 しかし、物質なので質量をもち、その質量の及ぼす重力が「見える」物質や光(電磁波)に対して影響を及ぼすわけです。

 

 ちなみに、宇宙に存在するエネルギーの約70%がダークエネルギーで、残りの約30%が物質です。

 物質30%のうち電磁波で観測できる「普通の物質」は約5%にすぎず、残りの約25%はダークマターとされます。

 ダークというのは正体が分かっていないという意味合いもあるので、宇宙で人間に分かっているのは5%だけとも言えます。

 ちなみに、普通の物質のうち星を形成しているのはその約7%にすぎず、残りの約93%は星間あるいは銀河間に存在するガスの形態で存在しています。

 

 >宇宙の質量の大部分を占めると考えられているダークマターは、宇宙網(コズミックウェブ)と呼ばれる細長い糸状のネットワークの形で存在すると考えられている。宇宙網は銀河や銀河団、さらには超銀河団同士を結びつけているが、「糸」が見えにくいため、これまでは銀河やガスの観測をもとにネットワークの構造が推定されるにとどまっていた。

 

 ダークマターは銀河、銀河団、超銀河団とその周囲に存在していますが、さらにそれらをつなぐ「糸」の形でも存在しています。

 しかし、「糸」は観測しづらいため、これまでは推定に留まっていたわけです。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の上の画像をご覧ください。

 宇宙の大規模構造が網目状に分布していることを示すシミュレーション結果です。

 ダークマターの「糸」が何本も交わる「節」の部分に銀河団が形成されます。

 

 >韓国延世大学のKim HyeongHanさん、James Jeeさんたちの研究チームは、銀河団同士をつなぐダークマターの糸(フィラメント)を検出するため、かみのけ座銀河団に着目した。約4億光年彼方のかみのけ座銀河団は私たちから最も近い大規模な銀河団の一つで、うすく広がったダークマターの構造を検出するのにうってつけの対象だ。

 

 かみのけ座(Coma Berenices; Com)は春の星座で、しし座のしっぽ(デネボラ)とうしかい座のアークトゥルスの間にある星団からなります。

 紀元前2世紀のエジプト・プトレマイオス朝の女王(共同統治者)ベレニケ2世の髪の毛とされますが、トレミーの48星座には含まれず、近世になってから星座として認知されました。

 最も明るいβ星でも4等星で、暗い星しかありません。

 ただ、かみのけ座には銀河北極があり、星間物質の量が最も少ない方向なので、多くの銀河が見えます。

 

 かみのけ座銀河団は地球から約3.2億光年の距離に位置し、1000個以上の銀河が密集しています。

 中心部には2つの巨大楕円銀河、NGC4874とNGC4889が存在します。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の真ん中の画像をご覧ください。

 かみのけ座銀河団の雄姿(?)です。

 右側中央より少し下に見える少しボヤッとした黄色っぽい2つの天体がNGC4874とNGC4889です。

 左側がNGC4889で、右側がNGC4874です。

 (その上の明るい光を放つ2天体は銀河系内の恒星です。)

 

 >ただし、その見かけの広がりは大きく、研究に必要な領域を十分にカバーできる望遠鏡はほとんどない。そこでKimさんたちは、国立天文台・天文データセンターが運用するサイエンスアーカイブ「SMOKA」で公開・配布されている、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam(HSC;ハイパー・シュプリーム・カム)」の画像データを利用した。

 >研究チームは、写っている銀河の形がダークマターの存在によってごくわずかに歪められるという「弱重力レンズ効果」を精密に測定し、ダークマターの分布を調べた。その結果、銀河団の中心部からダークマターが放射状に数百万光年にもわたって延びている様子が初めて明らかになり、その構造が宇宙網の一部であることが明確に示された。感度・解像度がともに高く視野の広いすばる望遠鏡の能力が、存分に活かされた成果だ。

 

 「重力レンズ効果」とは、地球と天体A,Bが次のような直線的配置になっているとき、天体Aの(ダークマターを含む)質量によって周囲の時空が歪んで(これが重力)、天体Bの光が増幅されることです。

   地球 ― 天体A ― 天体B

 このとき天体Bの像は必ず歪み、また1つの天体が複数の像を結ぶのが通例です。

 天体Bの観測に使われるのはもちろんですが、天体Aのダークマターを含む質量やダークマターの分布を推定するのにも使われます。

 

 「弱重力レンズ効果」とは、写っている銀河の形がダークマターの存在によってごくわずかに歪められることを指すのですね。

 

 「銀河団の中心部からダークマターが放射状に数百万光年にもわたって延びている様子が初めて明らかにな」ったというのが、今回の研究成果です。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の下の画像をご覧ください。

 かみのけ座銀河団の領域で検出されたダークマターの分布が、青緑色で示されています。

 背景はHSCで撮影された画像。

 ダークマターが銀河団の中心部(画像中央)から放射状に延びていることがわかります。

 

 >今回の成果は、現在広く受け入れられている宇宙の構造形成理論(標準理論)を検証する上で重要な証拠になるとみられる。「近年、異なる観測手法間で得られる標準理論のパラメーター値に食い違いがあるという指摘がなされ、宇宙の理解への課題となっています。天文学者たちはこれを解明すべく、基本的な仮定を一つ一つ注意深く再評価しているところです。今回の発見もそのような試みの一つといえるでしょう」(Jeeさん)。

 

 「異なる観測手法間で得られる標準理論のパラメーター値に食い違いがある」という点ですが、良い例がハッブル定数の推計です。

 ハッブル定数とは宇宙の膨張率のことですが、定数とよぶのは、宇宙のどこで測っても一定であるからであって、時間的には変動するものとされます。

 誤解しやすいので、ご注意ください。

 現在のハッブル定数は約70km/s/Mpc、1メガパーセク当たり約秒速70キロメートルとされます。

 ところが、これより細かい数値を求めようとすると、問題が生じるのです。

 

 遠方銀河の観測による推計は、次のような計算式になります。

   宇宙の膨張率 = 遠方銀河の後退速度/その銀河までの距離

 一方でハッブル定数はビッグバンの残光である宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の観測(赤方偏移)からも推定できます。

 銀河の後退速度による推計値は約67km/s/Mpc、CMBによる推計値は約71km/s/Mpcであり、双方の誤差の範囲は重なりません。

 これは、現在の宇宙論が抱える重要な謎の一つです。

 (他の謎としては、ダークエネルギーの正体、ダークマターの正体などが挙げられます。)

 現在、宇宙論も素粒子論も行き詰っているので、この面から突破できればよいのですが。

 

 

 ★ 今日のロジバン 不思議の国のアリス179

   gi’e sutra lo nu sudgau lo kanla te zu’e lo nu viska lo nu ma kau klama

  急いで涙をふいて、何が来ているのかを見ようとしました。

 sutra : 速い/すばやい/敏速/俊敏だ,x1は x2(動作/事)に関して。-sut- [プロセス・制御プロセス]

 sudgau : 乾かす,g1は s1を s2(液体)を取り除いて <- sud+gau, sud<- sudga, gau<- gasnu

 sudga : 乾燥している/乾いている,x1は x2(液体)を欠いて。-sud- [物理世界・物性]

 gasnu : する,x1(者)は x2(事)を。-gau-

 tezu’e : ~を目的/目標として。法制詞BAI*類 <-zukte 「x3のために行為/実行する」

 

 gi’e で結ばれた複述構文の後半で、主述語は sutra 「素早く~する」、そのx2が { lo nu sudgau lo kanla } 「目を乾かす」です。

 { te zu’e lo nu } で導かれる法制節の主述語は viska 「見る」で、そのx2が間接疑問抽象節 { lo nu ma kau klama } 「何が来るのか」です。

 出典は、

 lo selfri be la .alis. bei bu'u la selmacygu'e (lojban.org)