日本のX線天文衛星「XRISM」がファーストライト | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 アストロアーツ1月11日付記事、元はJAXAです。

 日本のX線天文衛星「XRISM」がファーストライト - アストロアーツ (astroarts.co.jp)

 

 概要>JAXAのX線分光撮像衛星「XRISM」が初観測を行い、画像が公開された。広視野X線カメラによる画像と超高分解能の分光装置によるX線スペクトルが得られている。

 

 >2023年9月7日に小型月着陸実証機「SLIM」と相乗りでH-IIAロケットで打ち上げられた「XRISM」は、太陽電池パネルの展開や搭載機器の機能確認、姿勢制御モードへの移行などを行い、10月から軟X線分光器「Resolve」と軟X線カメラ「Xtend」のファーストライト観測を行った。

 

 「XRISM」はJAXAが2023年9月に打ち上げたX線分光撮像衛星で、地球を高度約 550 km の円軌道で周回しています。

 XRISMの名称は、X-Ray Imaging and Spectroscopy Mission の頭文字をとったもの。

 JAXAのサイトを見ると、「クリズム」と読むようです。

 これまでは「すざく」「ひとみ」などのひらがなの愛称を付けていましたが、XRISMについて愛称を付けるかどうかは未定とのこと。

 

 SLIMについては、次の記事をご覧ください。

 JAXAのSLIM、月軟着陸に成功! | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 日本の月着陸船SLIM続報 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 

 >まず、10月14~24日にXtendを使って、はくちょう座の方向約7億7000万光年の距離にある銀河団「Abell 2319」が撮影された。この銀河団は2つの銀河団が衝突している天体で、Xtendでは両方の銀河団の高温プラズマを明瞭にとらえている。また、38×38分角(満月1個分よりやや広い面積)というXtendの広い視野を生かし、銀河団の周辺まで一度に撮像できている。

 

 「Abell 2319」は、銀河団のカタログの一つ「エイベル・カタログ」 Abell Catalogue に掲載されている銀河団で、カタログ番号が2319ということです。

 エイベルは銀河団を研究した天文学者の人名 “George Ogden Abell 1927~83” から。

 

 「銀河団の高温プラズマ」といっても、一体何度くらいなのか分かりませんね。

 銀河団ガスは、約1億度とされます。

 

 >Xtendの視野の広さは、XRISMの前に活躍した日本のX線天文衛星「すざく」やNASAの「チャンドラX線天文台」のX線カメラの約4倍にもなる。観測対象と一緒に写った別の天体での予想外の発見につながったり、突発天体を同定したりするのに威力を発揮すると期待されている。

 

 「すざく」は、2005年7月にJAXAが打ち上げた、日本の5番目のX線天文衛星です。

 電力関係の不具合により2015年に運用終了しています。

 10年間も観測を続けたのであれば、十分活躍したといえるでしょう。

 

 チャンドラは、NASAが1999年7月に打ち上げたX線観測衛星(Chandra X-ray Observatory)。

 近地点は約1万km、遠地点は約14万kmという極端な楕円軌道を回っています。

 名前は、白色矮星の質量の上限を求めたインド出身のアメリカ人天体物理学者チャンドラセカール(Subrahmanyan Chandrasekhar)からとっています。

 また、チャンドラはサンスクリット語で月の意味でもあります。

 

 >12月4~11日には、大マゼラン雲の超新星残骸「N132D」をResolveで観測し、X線スペクトルを得た。Resolveは装置を0.05Kまで冷却し、X線光子を受光した際の温度上昇を検出してX線のエネルギーを精密に求める「X線マイクロカロリメーター分光器」だ。約2keVより高エネルギーの領域で使えるX線分光器としては世界最高の分解能を持つ。

 

 電磁波の観測のためには、観測機器が低温であることが必要なのですね。

 

 >X線マイクロカロリメーター分光器は日本の歴代のX線天文衛星である「ASTRO-E」(2000年)、「すざく (ASTRO-EII)」(2005~2015年)、「ひとみ (ASTRO-H)」(2016年)にも搭載されたが、いずれも打ち上げ失敗や軌道投入後のトラブルで十分な観測成果を挙げられていない。Resolveが定常観測にこぎ着ければ、JAXA宇宙科学研究所の24年越しの悲願達成となる。

 

 「すざく」は衛星としては10年頑張ったわけですが、その次である日本の6番目のX線天文衛星である「ひとみ」はトラブルで打ち上げ2か月後に運用終了となっています。

 「ひとみ」の状況 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 「ひとみ」後継機 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 

 それ以来、JAXA関係者や日本のX線天文学者たちは、今回のXRISMの打ち上げを悲願としてきたわけです。

 

 >今回の観測では、Resolveのエネルギー分解能が5eV以下を達成し、設計値(7eV)を上回る性能を実現していることが確認された。ケイ素・硫黄・アルゴン・カルシウム・鉄などの輝線の細かい構造がはっきりととらえられている。

 

 分光観測は、連続スペクトルに刻まれた吸収線を調べる場合と、連続スペクトルから飛び出た輝線を調べる場合とがあります。

 Resolve は、ケイ素・硫黄・アルゴン・カルシウム・鉄などの原子が放射する輝線を観測するのですね。

 

 >なお、現時点では、ResolveのX線入射部にあるベリリウム製の保護膜(厚さ250μm)を開放する操作ができていない。この保護膜は打ち上げ時に衛星内で発生したガスが検出器に付着するのを防ぐものだ。保護膜が閉じた状態でも観測はできるものの、約1.8keVよりエネルギーの低いX線が吸収されてしまう難点がある(保護膜が開くと300eVまで観測可能になる)。今後、機体の姿勢を変えて開放機構部の温度を変えるなどして、保護膜を開けることを試みるという。

 

 地上の望遠鏡であればトラブルがあっても直ちにその場で対処できますが、天文衛星は宇宙空間を飛んでいるので普通はそういうわけにはいきません。

 ハッブル宇宙望遠鏡の場合は、もともとスペースシャトルで数回修理に行く予定とされ、実際何度も修理に行っていますが、それはやはり例外的ケースです。

 

 >1月5日に行われた記者説明会で、「XRISM」プロジェクトマネージャの前島弘則さんは、「ファーストライトの画像データを見た科学者たちの議論が尽きない様子に、エンジニアとして「ああ良かったな」と思いました」と現在の思いを語った。また、「XRISM」チームPI(研究主宰者)の田代信さんは、Resolveで得られた分光データについて、「私自身も「すざく」にたずさわっていましたが、当時と同じ天体を見ているとは思えないほどの分解能で、何度見ても衝撃的です。こうした鋭いスペクトルが得られることで、同じ天体について従来の2倍、3倍、あるいは桁で違う情報量を得ることができ、科学者としてわくわくしています」と述べた。

 

 「XRISM」の分光データと比較する対象として「すざく」のデータが出てきますが、それは両者の間に入った「ひとみ」が失敗したからです。

 

 >さらに、NASAとともにXRISMプロジェクトに参加しているヨーロッパ宇宙機関(ESA)のFabio Favataさん(前ESA科学局プログラム室長)は、「今回のXRISMの成果は素晴らしいもので、X線天文学を研究するすべての研究者が待ち望んでいたものだと保証します。とくにN132Dは私自身も40年前に研究していた天体で、このデータの素晴らしさがよくわかります。XRISM以前と以後で、高エネルギー天文学を通して見る宇宙の姿は変わって見えるはずです」とXRISMへの期待を述べた。

 

 世界の仲間から激励のエールをもらった、といったところでしょうか。

 

 >XRISMは2月から定常運用を始め、最初の6か月は初期観測として約50個の天体を観測する。その後は全世界の研究者による公募観測の期間に移る。XRISMは装置の冷却に液体ヘリウムを使っており、定常運用はヘリウムが尽きるまでの約3年間を想定している。その後は機械式冷凍機を使って冷却する後期運用期間となる予定だ。

 

 やはり装置の冷却が重要で、3年経って液体ヘリウムがなくなり機械式冷却に移る後期は観測の質が落ちるのでしょうかね。

 まあ、そのときはそのときで観測すべきことはいくらでもあるでしょうが。

 

 それと、いつまでもクリズム呼びでは寂しいので、ひらがなの愛称が欲しくなりますね。

 

 

 ★ 日銀が金融政策決定会合で、マイナス金利政策を解除し17年ぶりに利上げを行うとのことです。これまでが異常事態だったのでようやく正常に戻るということではあるのですが、物価上昇が行き過ぎると今度は長期金利が高くなって、財政に致命的な問題が生じます。適度な物価上昇と賃上げ、それに基づく税収増による財政再建というサイクルが軌道に乗るかどうか、難しい経済運営を迫られることになります。

 

 ★★ 今日のロジバン 不思議の国のアリス174

   .i .i’e nai ca’o tai klaku .i le’o ko ca sisti li’u»

  「いつまでも泣いてばかり。いますぐやめなさい、いいわね!」

 .i’enai : 非難。それの良さを認めずに支持しない気持。<- i’e 喝采 ->i’ecu’i 保留

 ca’o : 進行。~している。~の間/において。相制詞ZAhO類 <- cabna 現在

 tai : ~に似た形をした。法制詞BAI類 <- tamsmi 似ている

 le’o : 攻勢。心態詞(修飾系)UI5類。 -> le’ocu’i 無抵抗, le’onai 守勢

 sisti : やめる/中止/終了する,x1(者)は x2(動作/過程/状態)を。-sti-

     x2は完了しているとは限らない

 

 アリスの発言の最後で、li’u で発言を閉じています。

 最初の文の主述語は { ca’o tai klaku } で、x1はアリス自身ですが、省略されています。

 時々出てくるのですが、こういうときの tai の意味合いが分かりません(;_;

 2番めの文の主述語は { ca sisti } 「今やめる」で、そのx1は命令2人称 ko です。

 出典は、

 lo selfri be la .alis. bei bu'u la selmacygu'e (lojban.org)