日本の月着陸船SLIM続報 | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 JAXAの小型月着陸実証機(SLIM)の月面着陸成功(2024/1/20)については、すでに記事にしました。

 JAXAのSLIM、月軟着陸に成功! | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 

 今回はその続報です。

 

 まずSLIMの成功の基準です。

  SLIMミッションの成功基準(サクセスクライテリア)

   基準           内容                       

 ミニマムサクセス  小型軽量な探査機による月面着陸を実施すること。

 フルサクセス    精度100m以内の高精度着陸が達成されること。

 エクストラサクセス 高精度着陸に関する技術データ伝送後も日没までの一定期間、月面

           における活動を継続し、将来の本格的な月惑星表面探査を見据え、

           月面で活動するミッションを実施すること。

 

 SLIM には、LEV-1 と LEV-2 という2機の月面探査ロボットが搭載されており、月面着陸直前に(月面上空 1.8 m で)切り離されることになっていました。

 LEV は Lunar Excursion Vehicle の頭文字をとったもの。

 

 LEV-1 : 内蔵されたバネを伸縮させ、月面を跳躍移動する月面探査ロボット。2台の広角カメラを搭載し、直接地球にデータを送信することができる。

 本体は、2.1 kg.

 

 LEV-2 : タカラトミー、ソニーグループ、同志社大学とJAXAが開発した、変形機構や動物の動きなどの玩具技術を応用した小型月面探査ロボットで、HAKUTO-R ミッション1に搭載されたものとほぼ同じもの。2台の広角カメラを搭載し、LEV-1を経由してデータを地球に送信する。

 質量約 250 g,直径約 8 cm (変形前の球形状態。野球のボールとほぼ同じサイズ)

 

 月面車とか火星探査車というのは、普通は車輪やキャタピラを使って移動するものですが、LEV-1 はバネを使ってビョーンと跳ねて移動するのですね。

 月面は地上と比べて重力が小さいので、これは上手い方法なのでしょう。

 

 LEV-2 は、変形型月面探査ロボットで愛称 SORA-Q.

 タカラトミーは、チョロQという自動車の玩具(おもちゃ)を製造販売しています。

 SORA-Q はその技術を応用したもの。

 月面に放出・落下したときは球形状態で、着陸後に外殻部分が左右に分かれて車輪となり、中からカメラが立ち上がり、月面のレゴリス上を走行。

 左右の車輪を同時に動かす「バタフライ走行」、別々に動かす「クロール走行」の2種類のモードを駆使して最大で30度ほどまでの傾斜の移動に対応。

 詳細は動画も含む次のサイトをご覧ください。

 SORA-Q|タカラトミー (takaratomy.co.jp)

 

 

 以上が、SLIM と LEV-1、SORA-Q についての前提知識です。

 ここからは、JAXA による1月25日付発表(一つではなくいくつもあり)から。

 

 >2024年1月20日、月面に着陸間際の小型月着陸実証機(SLIM)から超小型月面探査ローバ(LEV-1)が月面に展開され、取得したテレメトリデータの分析により、月面での活動が行われたことを確認しました。

 >今般、LEV-1はLEV-2共に日本初の月面探査ロボットとなりました。また、月面から質量2.1kg(うち通信機は90g)の超小型の月面探査ローバにより地球への直接通信に成功しました。地球から約38万キロ彼方からデータを直接送信した事例としては世界最小・最軽量と考えられます。加えて、ローバの月面での跳躍移動、LEV-2との月面ロボット間通信、移動含む完全自律機能を実現したことは、世界初の快挙であると共に、今後の月面探査ミッションに有用な技術実証が達成できたと考えており、将来のミッションに活用してまいります。さらに、アウトリーチとして行ったLEV-1からのUHF帯電波の送信は、国内外の多くのアマチュア無線家のミッション参加を促し、続々と受信の報を頂いており、月面探査において一般の方々に直接の参加の機会を設けることができました。 <

 

 LEV-1 に関する次の事柄について、達成・実現が確認されたということです。

 ・世界最小・最軽量の月面探査ローバによるデータ直接送信

 ・ローバの月面での跳躍移動

 ・LEV-2(SORA-Q) との月面ロボット間通信

 ・LEV-1からのUHF帯電波の送信を、国内外の多くのアマチュア無線家が受信しミッション参加

 

 >SLIMが当初の目標着地地点から東側に55m程度の位置で月面に到達していることが確認できました。・・・

 SLIMの主ミッションであった100m精度のピンポイント着陸の技術実証は達成できたものと考えられます。 <

 

 ・世界初の「ピンポイント着陸成功」

 の確認です。

 これで「SLIMミッションのフルサクセス達成」と判断できますね。

 おめでとうございます。

 

 >変形型月面ロボット(Lunar Excursion Vehicle 2(LEV-2)、愛称「SORA-Q」、以下「LEV-2」)は、小型月着陸実証機(SLIM、以下「SLIM」)の撮影に成功しました。これにより、LEV-2 は超小型月面探査ローバ(Lunar Excursion Vehicle 1(LEV-1)、以下「LEV-1」)と共に、日本初の月面探査ロボットになり、世界初の完全自律ロボットによる月面探査、世界初の複数ロボットによる同時月面探査を達成しました。さらに、LEV-2 は世界最小・最軽量の月面探査ロボットとなりました。 <

 JAXA | 変形型月面ロボットによる小型月着陸実証機(SLIM)の撮影およびデータ送信に成功

 

 SORA-Q が撮影した月面と SLIM の画像が載っているので、ぜひご覧ください。

 身体は小さくてもやるジャン、と感心します。

 ・LEV-2 は世界最小・最軽量の月面探査ロボット

 一寸法師かな?

 

 >この画像は、LEV-1 を経由して地上へ転送したものであり、これにより LEV-1・LEV-2 間の通信機能が正常に動作したことが確認できました。また、LEV-2 が収納状態の球体から変形したことから、SLIM から放出された後に、正常に月面で展開・駆動したことも併せて確認できました。さらに、LEV-2 が自律制御で、オンボードの光学カメラを使って撮影した複数枚の画像の中から、SLIM が画角内に写っている良質な画像を画像処理アルゴリズムにより選定し、送信したことも分かっています。 <

 

 SORA-Q は、画像を撮影する機能を備えています。

 しかし、直径 8 cm 程度の球形に収まる小ささなので、撮影した画像を自らが地球に送信することはできません。

 いったん LEV-1 に送って、LEV-1 経由で地上に転送したということです。

 つまり、先に書いてあった、LEV-1 と SORA-Q という2つの月面探査ロボット間の通信が上手く行っていることを意味します。

 また、SLIM 本体の姿勢がよく分かるこの画像は、SORA-Qがいくつも撮影した画像のなかから自分で最も良いものを選んで送ったということです。

 SORA-Q って、頭もいいジャン!

 

 次は、SLIMに搭載したマルチバンド分光カメラ(MBC)による撮影画像です。

 JAXA | 小型月着陸実証機(SLIM)搭載マルチバンド分光カメラ(MBC)による撮影画像の公開について

 

 「257枚の低解像度モノクロ画像を撮像・合成して、景観画像を作製したもの」とのことです。

 「観測対象岩石を選別し、相対的な大きさがイメージできるような愛称をつけ」たということで、6個の岩に(トイ)プードル、しばいぬ、ブルドック、かいけん、あきたいぬ、セントバーナードという名前が付けられています。

 

 

 ここからは、NHKニュースウェブ1月29日付記事です。

 日本の月探査機「SLIM」 太陽電池の発電確認 通信確立し月面調査再開 JAXA | NHK | 月面着陸

 >着陸直前に2基のメインエンジンのうち、1基になんらかの異常が発生し、想定とは異なる姿勢で月面に着陸したことから、探査機に搭載された太陽電池に太陽光があたらず、発電ができていませんでした。

 

 >このためJAXAはいったん探査機の電源を切り、今後、太陽電池に太陽光が当たって電力が復旧すれば探査機が自動的に起動して運用を再開できる可能性があるとして復旧に向けた作業を続けてきましたが、28日夜までに太陽電池が発電し、地上と探査機との通信を確立することに成功して運用を再開したと29日朝、明らかにしました。

 

 >すでに科学観測を始めているということで、探査機に搭載されている特殊なカメラを使って月面にある岩石を撮影した画像を合わせて公開しました。

 

 SLIMの復活おめでとうございます!

 月面は昼夜の温度差が非常に大きく昼は 100 ℃ 以上の高温にもなるので、そのなかで搭載した電子機器が正常に動作したのはさすがですね。

 トイプードルと名付けられた岩の表面の画像も送られてきています。

 

 

 次は、NHKニュースウェブ1月27日付記事です。

 月面着陸成功の「SLIM」人工衛星からの撮影に成功 NASA | NHK | 月面着陸

 >今月20日、月面への着陸に成功した日本の無人探査機「SLIM」の姿を、月の上空を飛ぶ人工衛星から撮影することに成功したとNASA=アメリカ航空宇宙局が発表しました。

 >NASAは月を周回する人工衛星が上空80キロ付近から撮影した、「SLIM」の着陸地点の画像を公開しました。

 

 こちらについては、掲載されている画像をご覧ください。

 

 

 ★ 今日のロジバン 不思議の国のアリス158

   ni’o .abu ca’o platu lo nu co’e ta’i ma kau

  [新段落] それをどうやろうか、アリスは計画をはじめました。

 ca’o : 進行。~している。~の間/において。相制詞ZAhO類 <- cabna 現在

 platu : 計画/設計/デザインする/企てる,x1(者)は x2(物/事)を x3(事)のために。-pla-

 co’e : 不特定述語。意味と取る項が不特定の述語を表す。代述詞GOhA類。-com-, -co’e-

 ta’i : ~を方法/手段として/~式に。法制詞BAI類 <- tadji

 

 主述語は { ca’o platu } で、そのx1が .abu 「アリス」、x2が出来事抽象節 { lo nu co’e ta’i ma kau } です。

 出来事抽象節内の主述語は不特定述語 co’e で、それに間接疑問法制句 { ta’i ma kau } が掛かっています。

 platu は英語の plan と結び付けて覚えればよいですね。

 出典は、

 lo selfri be la .alis. bei bu'u la selmacygu'e (lojban.org)