数学、立体幾何の話題です。
ジョンソン立体とは、正多角形の面だけから構成される多面体(これを整凸多面体という)のうち 正多面体、半正多面体、正角柱、反正角柱 以外のものです。
全部で92種類あり、J1~J92という番号が付いています。
ジョンソン立体は、J1~J48の第1類、J49~J83の第2類、J84~J92の第3類に分類されます。
(以前は類ではなくグループと呼んでいましたが、長いので「類」にします。)
ジョンソン立体の第1類とは、正角錐、正台塔、正丸塔、およびそれら同士と正角柱、反正角柱を組み合わせてできる多面体のことです。
合計48種類あります。
これまでもジョンソン立体を何回か取り上げてきましたが、今回はその構成要素つまり面、頂点、稜の数を整理します。
今さら何故そんな基礎的なことをやるのかって?
それは、この後でジョンソン立体の構成要素のつながり方を取り上げる予定なのですが、基本立体(と私が名付けたもの)以外は構成要素数をこれまで一度も確認していなかったことに気付き、その前に整理しておこうと思ったからです。
第3類は一つ一つが “個性的” すぎて、まとめて扱う意味があまりないのですが、第1類と第2類はある意味 “一般化” できます。
今回は第1類を取り上げます。
なお、第1類に含まれる正角錐や双角錐と、正角柱、反正角柱は後で見るように類似した性質をもつため、今回は正角柱、反正角柱も一緒に取り扱います。
当然ながら、両者とも無限系列です。
手順としては、次の2段階になります。
a.次の記事で紹介した「新たな記号法」に基づき、第1類の “一般化” を行う
ジョンソン立体を表す新たな記号法1 | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)
b.それぞれの構成要素数を表の形で示す
aは前準備ですが、その際に同じ系列と見なせる正多面体や半正多面体も含めておきます。
そうすることにより、bで構成要素の計算を同様に行うことができるからです。
たとえば、「n>」は正n角錐を意味します。
ジョンソン立体の範囲では、3 ≦ n ≦ 5 です。
n=3の場合は正4面体Tですが、それも含めることにします。
正n角錐は、正3角形の面n枚、正n角形の面1枚、3価の頂点n個、n価の頂点1個、稜2n本をもちます。
同様に、「n=」は正n角柱を意味し、nの範囲は 3≦n (無限系列)です。
n=4の場合は立方体Cですが、それも含めることにします。
正n角柱は、正方形の面n枚、正n角形の面2枚、3価の頂点2n個、稜3n本をもちます。
ここで、第1類と正角柱、反正角柱の全体を「新たな記号法」により、正n角錐 n>、正n角柱 n=、正n角反柱 nz、・・・というふうに分類していきます。
丸塔は正5角丸塔 5r しか存在しませんが、それも nr と表記します。
(実はニアミス立体まで広げれば、正6角丸塔 6r もあります。
File:Diminished rectified order-6 truncated triakis tetrahedron2.png - Polytope Wiki (miraheze.org) )
それから派生する立体についても同様です。
そうすると、nを含む多面体は全部で23種類となります。
それらは次の通り。
n> : T, J1, J2
n= : 3=, C, 5=, …
nz : O, 4z, 5z, …
n=> : J7, J8, J9
nz> : J10, J11
n<> : J12, O, J13
n<=> : J14, J15, J16
n<z> : J17, I .
nc : J3, J4, J5
nr : J6
nc= : J18, J19, J20
nr= : J21
ncz : J22, J23, J24
nrz : J25
ncc, ncc* : J27, aC, J28, J29, J30, J31
ncr, ncr* : J32, J33
nrr, nrr* : J34, aD
nc=c, nc=c*: J35, J36, eC, J37, J38, J39
nc=r, nc=r* : J40, J41
nr=r, nr=r* : J42, J43
nczc : J44, J45, J46
nczr : J47
nrzr : J48
もちろんそれぞれの多面体には英語でも日本語でも立派な名称が付いていて、たとえば「nc=c*」であれば和名は「異相双n角台塔柱」ですが、今回は省略します。
ジョンソン立体第1類に含まれるのにここから除外されている多面体が1種類あります。
J26(2cc*) です。
Gyrobifastigium - Johnson solid - Wikipedia
これは1本の稜を「正2角形」と見なしているために面と稜の数が合わなくなるからです。
次に、「新たな記号法」で表すことができるのに凸にならないために第1類に含まれない多面体が次の2種類あります。
3z>, 3<z>,
「凸にならない」といっても、凹(concave)になる場合と隣り合う2面が同じ平面上に位置する「共平面(coplanar)」となる場合がありますが、この2種類はどちらも共平面のケースです。
多面体の面(face)の枚数をF、頂点(vertex)の数をV、稜(edge)の本数をEで表します。
また、上で登場した多面体の構成要素となり得る面は、正3角形、正方形、正5角形、正n角形、正2n角形の5種類です。
これらの面の枚数をそれぞれ、F3, F4, F5, Fn, F2n と表します。
ここで、nは 3,4,5 のいずれかの値をとることもあれば、より大きい値をとることもあり得ます。
同じく頂点の価数は、3価、4価、5価、n価の4種類です。
これらの頂点の数をそれぞれ、V3, V4, V5, Vn と表します。
整凸多面体では、面のnが取り得る範囲が大きいのに対し、頂点では 3≦n≦5 という狭い制限があります。
このため、以下の表では面の数Fを先にし、その次に頂点数Vを置きます。
以下の表では、F3, F4, F5, … ,V3, V4, V5 以外にFn, F2n, Vn の欄を設けています。
その理由を説明します。
Fn, Vn の例示として、正3角錐 3> (正4面体T)、正4角錐 4>、正5角錐 5> をとります。
記号: F V E ; F3 F4 F5 ; V3 V4 V5 .
3>: 4 4 6 ; 4 - - ; 4 - -
4>: 5 5 8 ; 4 1 - ; 4 1 -
5>: 6 6 10 ; 5 - 1 ; 5 – 1
これら3種類は同じ規則性をもつはずですが、このままでは規則性がよく見えません。
Fn と Vn の項を設ければ、その規則性が浮かび上がってきて、次の1行にまとめて表記できることが分かります。
記号: F V E ; F3 F4 F5 Fn;V3 V4 V5 Vn
n>: n+1 n+1 2n ; n - - 1 ; n - - 1
F2nの例示として、正3角台塔 3c、正4角台塔 4c、正5角台塔 5c をとります。
記号 F V E ; F3 F4 F5 F6 F8 F10;V3 V4
3c : 8 9 15 ; 4 3 - 1 - - ; 6 3
4c : 10 12 20 ; 4 5 - - 1 - ; 8 4
5c : 12 15 25 ; 5 5 1 - - 1 ; 10 5
これらも、F6, F8, F10 といった“余計な”項をF2n項にまとめて、次の1行に綺麗に整理できることが分かります。
記号: F V E ;F3 F4 F5 Fn F2n; V3 V4 V5 Vn
nc:2n+2 3n 5n ; n n - 1 1 ; 2n n - -
Fn, F2n, Vn のいずれも、主軸が通るという共通点があります。
それでは、角柱、反角柱とジョンソン立体第1類の構成要素数を表の形で示します。
表頭の記号の意味は次の通り。
F : 面の枚数
V : 頂点数
E : 稜の本数
Fn:正n角形の枚数
Vn:n価の頂点数
すべて非負の整数値をとります。
角柱、反角柱とジョンソン立体第1類の構成要素数
番号 記号: F V E ;F3 F4 F5 Fn F2n;V3 V4 V5 Vn
1.n> :n+1 n+1 2n ; n - - 1 - ; n - - 1
2.n<> : 2n n+2 3n ; 2n - - - - ; - n - 2
3.n= : n+2 2n 3n ; - n - 2 - ; 2n - - -
4.nz :2n+2 2n 4n ; 2n - - 2 - ; - 2n - -
5.n=> :2n+1 2n+1 4n; n n - - - ; n n - 1
6.nz> :3n+1 2n+1 5n; 3n - - 1 - ; - n n 1
7.n<=>: 3n 2n+2 5n ; 2n n - - - ; - 2n - 2
8.n<z> : 4n 2n+2 6n ; 4n - - - - ; - - 2n 2
9.nc : 2n+2 3n 5n ; n n - 1 1 ; 2n n - -
10.nr : 3n+2 4n 7n ; 2n - n 1 1 ; 2n 2n - -
11.nc= : 4n+2 5n 9n ; n 3n - 1 1 ; 2n 3n - -
12.nr= : 5n+2 6n 11n ; 2n 2n n 1 1 ; 2n 4n - -
13.ncz :6n+2 5n 11n ; 5n n - 1 1 ; - 3n 2n -
14.nrz :7n+2 6n 13n ; 6n - n 1 1 ; - 4n 2n -
15.ncc :4n+2 4n 8n ; 2n 2n - 2 - ; - 4n - -
16.ncr :5n+2 5n 10n ; 3n n n 2 - ; - 5n - -
17.nrr :6n+2 6n 12n ; 4n - 2n 2 - ; - 6n - -
18.nc=c :6n+2 6n 12n ; 2n 4n – 2 - ; - 6n - -
19.nc=r :7n+2 7n 14n ; 3n 3n n 2 - ; - 7n - -
20.nr=r :8n+2 8n 16n ; 4n 2n 2n 2 - ; - 8n - -
21.nczc : 8n+2 6n 14n ; 6n 2n - 2 - ; - 2n 4n -
22.nczr :9n+2 7n 16n ; 7n n n 2 - ; - 3n 4n -
23.nrzr :10n+2 8n 18n ; 8n – 2n 2 - ; - 4n 4n -
(注) ここで、nは3以上の整数。
この表で成り立つ式は次の6本です。
オイラーの多面体公式: F +V -E = 2.
面の合計 : F = F3 +F4 +F5 +Fn +F2n.
頂点の合計 : V = V3 +V4 +V5 +Vn.
面と稜の関係式 : 3F3 +4F4 +5F5 +nFn +2nF2n = 2E.
頂点と稜の関係式: 3V3 +4V4 +5V5 +nVn = 2E.
主軸の関係式 : Fn +F2n +Vn = 2.
これらは検算に使えます。
(他にも不等式だとシュタイニッツの定理などがあるのですが、不等式は検算向きではありません。)
このうち主軸の関係式は初出なので、説明しておきます。
ジョンソン立体第1類の多面体は、いずれもその対称性(Cnv, Dnh, Dnd, Dn)により主軸(Cn軸)を1本もちます。
その主軸が通る面あるいは頂点は、 Fn, F2n, Vn の3種類に限られています。
3種類のいずれかが「上」「下」2か所にあるので、合計が必ず2となるわけです。
計算例:「13.ncz 正n角台塔反柱」
面と稜の関係式 ; 3×5n +4×n +n×1 +2n×1 = 22n = 11n×2.
頂点と稜の関係式; 4×3n +5×2n = 22n = 11n×2.
次回は、第2類の構成要素数にするか、第1類の構成要素の「つながり方」を取り上げるか、迷っています。
★ 今日のロジバン 不思議の国のアリス162
bu'u la fagzda lolgai
暖炉のじゅうたん気付
fagzda : 暖炉/炉床/炉辺だ,f2(燃料)のための f3(酸化剤)で燃えている/と反応している。<- fag+zda, fag<- fagri, zda<- zdani
fagri : 火/炎だ,x1は x2(燃料)・x3(酸化剤)による。-fag- f3のデフォルトは空気/酸素
zdani : 巣/家/ねぐら/アジトだ,x1は x2の(ための)。-zda- 拡張すれば「家庭」も
lolgai : じゅうたん/床張り/フローリングだ,g1は g3=l2の g2=l1(床)を覆うための <- lol+gai, lol<-loldi, gai<- gacri
loldi : 床/底面だ,x1は x2の。-lol-, -loi-
gacri : 覆い/蓋/カバーだ,x1は x2の;x1はx2に被さっている。「仮面」なども。-gai-
アリスが自分の右足宛に出す手紙の表書きの2行目です。
暖炉をlujvoで「火の住まい」と表現するのが面白いです。
出典は、