銀河の形状と分布で検証する初期宇宙のゆらぎ | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 アストロアーツ12月27日付記事、元はカブリIPMUです。

 銀河の形状と分布で検証する初期宇宙のゆらぎ - アストロアーツ (astroarts.co.jp)

 

 概要>100万個の銀河の形状と空間分布の同時解析から、1億光年以上離れた2つの銀河の形状にインフレーション理論が予言する相関が見つかった。宇宙全体の構造形成の種となった「原始ゆらぎ」の性質に制限を与える研究成果だ。

 

 >現在広く受け入れられている標準宇宙理論は、宇宙マイクロ波背景放射や宇宙の大規模構造の精密観測と解析によって、宇宙の主要なエネルギー成分として冷たいダークマター(Cold Dark Matter; CDM)とダークエネルギー(Cosmological Constant; Λ)の2つを持つ「Λ-CDM(ラムダ・シーディーエム)モデル」として確立されている。このモデルでは、インフレーション期と呼ばれる初期宇宙の急加速膨張期に、星や銀河、銀河団、さらにそれらの空間分布といった、宇宙のあらゆる構造の種である「原始ゆらぎ」が生成されたと考えられている。

 

 標準宇宙論が「Λ-CDMモデル」であることが、読み方まで含めて説明されています。

 ΛとCDMの間に「-」を入れたかなぁ?

 

 「原始ゆらぎ」が宇宙のあらゆる構造の種となったというのですね。

 

 >原始ゆらぎの性質は初期宇宙の物理によって決定されるが、最も標準的で最も単純なインフレーションモデルである「単一場インフレーション」で生成される原始ゆらぎの場合、データが平均値の付近に集積し、その平均値を中心に左右対称となるような「正規分布(ガウス分布)」に非常に近い統計性を持つと予言されている。このガウス分布からの「ずれ」(原始非ガウス性)が観測データから有意な水準で検出されれば、初期宇宙における原始ゆらぎの生成プロセスの理解が飛躍的に進展し、「宇宙がどのように始まったか」という疑問の解明に繋がると期待される。

 

 インフレーション理論もたくさんのバリエーションがあり、これまではあまり絞れていませんでした。

 今回の研究は「原始ゆらぎ」の性質に制限を与えるという点が重要です。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の上の画像をご覧ください。

 原始ゆらぎの統計性を視覚化した例です。

 画像ですが、説明を読まずに眺めているだけでは理解が深まりません。

 中央列の図(上段・下段ともに共通)が基準となるガウス分布のゆらぎです。

 色のグラデーション(青色~黄色)は、その場所でのゆらぎの値(低~高密度領域)に対応します。

 左右の図は、ガウス分布から少しずれたゆらぎである「非ガウス性」を持つゆらぎの例です。

 括弧内の符号はガウス性からのずれを表し、左列が負(-)のずれ、右列が正(+)のずれに対応します。

 上段は「等方」な非ガウス性の例です。

 中央に比べて左図では大きな負(暗い青色)の領域が増えていますが、右図では大きな正(明るい黄色)の領域が増えています。

 このような「等方」な非ガウス性は、銀河の空間分布を用いて探索できます。

 下段は「非等方」な非ガウス性の例です。

 全体的な明暗は中央図のガウスゆらぎから変わらないものの、それぞれの領域の「形状」が変化しています。

 たとえば、ゆらぎが正の場所(黄色領域)に注目すると、左図では丸みを帯びた構造に変化するのに対し、右図では細く尖った構造に変化することがわかります。

 このような「非等方」な非ガウス性は、銀河の形状を用いて探索できます。

 

 つまり、「等方」な非ガウス性は銀河の空間分布を用いて探索でき、「非等方」な非ガウス性は銀河の形状を用いて探索できるので、両者を組み合わせれば両方わかるということです。

 

 >原始ゆらぎは生成直後は非常に小さいが、重力不安定によって増幅され、非一様性が大きくなる。最初は小さな領域のゆらぎが重力に引かれて成長し、星や銀河が形成され、現在観測されている銀河の空間分布「宇宙の大規模構造」が作られたと考えられる。この大規模構造を調べることにより、原始ゆらぎの性質に迫る研究が行われた。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の真ん中の画像をご覧ください。

 すばる望遠鏡が観測した、ろくぶんぎ座方向にあるCOSMOS領域です。

 様々な色や形の銀河が1000個以上写っています。

 こうした銀河の空間分布や形状の向きは、完全に一様かつ等方な分布ではなく、インフレーションを含む標準宇宙理論から予言される統計的な相関を示します。

 

 >独・マックス・プランク天体物理学研究所の栗田智貴さんとカブリIPMUの高田昌広さんは、銀河の空間分布を示す分光データと個々の銀河形状をとらえた撮像データを組み合わせ、銀河の形状パターンに含まれる主要な統計的情報の抽出を可能にする「銀河形状パワースペクトル」の測定手法を開発した。この手法を、世界最大規模の銀河サーベイである「スローン・デジタル・スカイ・サーベイ」で得られた約100万個の銀河に適用して、銀河形状パワースペクトルを測定した。

 

 SDSSで得られた約100万個の銀河データについて、銀河形状パワースペクトルを測定したと。

 

 >その結果、1億光年以上離れた2つの銀河の向きが統計的に有意に揃っていることが検出された。見かけ上独立で因果関係がないように見える遠い銀河間に、相関が存在することを示す結果である。この相関はインフレーション理論が予言するものであり、銀河の形状を通してその予測が確認されたことを意味する。さらに、最も標準的なインフレーション理論が予言する相関と矛盾しないこと、つまり原始ゆらぎが非ガウス性を示さないことも確認された。

 

 次の結果が示されたのですね。

 ・1億光年以上離れた2つの銀河の向きが統計的に有意に揃っている

 ・原始ゆらぎが非ガウス性を示さない

 

 「ガウス性を示す」という肯定的表現ではなく、「非ガウス性を示さない」という二重否定になっています。

 厳密なのでしょうけど、分かりにくいですね。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の下の画像をご覧ください。

 離れた2つの銀河の相関を示します。

 青色の点とその誤差棒は、実際のデータから測定した「銀河形状パワースペクトル」の値です。

 縦軸は、離れた2つの銀河形状の相関の強さです。

 形の向きの揃い具合に対応します。

 横軸は、2つの銀河間の距離です。

 灰色の点は、非物理的な見かけの相関(観測や測定、解析などが不完全である場合に生じる可能性があるもの)です。

 誤差の範囲内で0であることから、青色の測定点が確かに宇宙物理由来のシグナルであるといえます。

 黒色の曲線は、最も標準的なインフレーションモデルによる理論曲線です。

 実際のデータ点とよく合致し、宇宙初期の原始ゆらぎがガウス分布に非常に近い分布に従っていた場合と整合します。

 

 >「銀河の形状を用いて初期宇宙の物理を探る研究は先例がほとんどなく、データ解析に至る一連の研究過程は試行錯誤の連続でしたが、それらをやり遂げることができて嬉しく思っています。この成果は、『銀河の形状を用いた宇宙論』という新たな研究分野を切り拓く第一歩となると考えています」(栗田さん)。

 

 『銀河の形状を用いた宇宙論』という新たな研究分野が切り開かれたということです。

 更なる研究成果を期待しましょう。

 

 

 ★ ここ数日真冬の寒さが戻ってきています。寒々しい雨も降り続けましたが、洗濯物が溜まっていたので、洗濯機を回して室内干し。天気予報を見ながら計画的に洗濯しないといけませんね。

 

 ★★ 今日のロジバン 不思議の国のアリス163

           nea lo fagjue

   暖炉の金網付近

 ne’a : ~の近隣に。間制詞(空間・方向)FAhA3類

 fagju’e : ストーブフェンス/熱(火花)よけついたてだ,j1は f2(燃料)を使う f3(酸化剤)で燃えて/反応している暖炉のための <- fag+ju’e, fag<- fagri, ju’e<- julne

 julne : 網/フィルターだ,x1は x2を通し x3を遮る x4(特性)の。-ju’e- 「濾過器」「遮光器」「ふるい」「こし器」なども

 

 アリスが自分の右足宛に出す手紙の表書きの3行目です。

 出典は、

 lo selfri be la .alis. bei bu'u la selmacygu'e (lojban.org)