藤井聡太八冠、王将防衛ほか(2024/2/8) | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 目次

  1.藤井聡太八冠、4連勝で王将防衛

  2.藤井聡太八冠のタイトル戦の軌跡

  3.藤井聡太八冠の2023年の獲得賞金・対局料

  4.棋王戦第1局について

 

 

  1.藤井聡太八冠、4連勝で王将防衛

 

 昨日と本日(2月7、8日(水木))、東京都立川市「オーベルジュ ときと」で藤井聡太王将に菅井竜也八段が挑戦する第73期ALSOK杯王将戦七番勝負第4局が行われました。

 後手番菅井八段が三間に飛車を振りましたが、直後藤井王将が角を交換し、力戦となりました。

 封じ手の時点ではあまり差が付いてはいませんでしたが、二日目午後には藤井王将が龍、馬、銀、桂馬で菅井陣を抑え込む展開となり、ジリジリと攻め入って121手で菅井八段を投了に追い込みました。

 

 これで、藤井王将の4連勝となり、ストレートで王将を防衛しました。

 藤井王将は、2年前の第71期王将戦で4連勝して渡辺明王将(当時)から王将を初めて奪取しました(2022年2月12日)。

 昨年は、羽生九段の挑戦を受けて4勝2敗と(藤井八冠としては)苦戦したものの初防衛に成功しました。

 そして、今回は3連覇を果たしたわけです。

 

 菅井八段も、A級棋士でありかつ竜王ランキング戦1組、そして並みいる強敵を倒して王将戦挑戦者となったわけで、トップ棋士であることは間違いありません。

 それにもかかわらず、藤井八冠は全く紛れのない勝ち方で葬ってしまうのですから、圧倒的な力量の差を感じさせます。

 

 ファンの前で菅井八段が「明日からも頑張っていくしかない」と語っていたのが印象的でした。

 

 今期王将戦の対戦成績をまとめておきます。

 

  第73期ALSOK杯王将戦七番勝負(2024年1~2月)

   王将 藤井聡太八冠 vs. 挑戦者 菅井竜也八段

   2日制・持時間8時間・ストップウォッチ

   主催 毎日新聞、スポニチ  特別協賛 ALSOK

  通算 王将戦 日にち     先後  戦型  手数 勝敗 

 421 第1局 24/1/7,8(日,月祝) 後手 三間飛車 116 ○

 424 第2局 24/1/20,21(土,日) 先手 三間飛車 113 ○

 426 第3局 24/1/27,28(土,日) 後手 向飛車   94 ○

 429 第4局 24/2/7,8(水,木)  先手 三間飛車 121 ○

 (注) 通算は藤井王将の通算対局数。先後と勝敗は藤井王将から見て。

 

 王将戦   場 所              

 第1局 栃木県大田原市「ホテル花月」

 第2局 佐賀県上峰町「大幸園」

 第3局 島根県大田市「国民宿舎さんべ莊」

 第4局 東京都立川市「オーベルジュ ときと」

 

 

 第4局の対局場所となった「オーベルジュ ときと」は、過去に王将戦が行われた「SORANO HOTEL」の姉妹施設です。

 基本的には食事を提供する施設ですが、広くて高級な客室が4室あり、今対局の両対局者と中村修立会人が宿泊したとのことです。

 また、両者の経営母体である(株)立飛ホスピタリティマネジメントは、2023年に創設された「達人戦立川立飛杯」の特別協賛となっています。

 「立飛」は「たちひ」と読みます。

 

 なお、「オーベルジュ」はフランス語Aubergeで、主に郊外や地方にある宿泊設備を備えたレストランを意味します。

 

 

  2.藤井聡太八冠のタイトル戦の軌跡

 

 今回の王将防衛で、藤井八冠はタイトル20期獲得となりました。

 これまでは全ての番勝負について日程、相手、勝敗、結果をまとめた表をつくっていたのですが、一度も失冠しないためどんどん長くなるので(^^;今回はコンパクトにまとめます。

 

   藤井八冠のタイトル戦の軌跡

年度 叡王 名人 棋聖 王位 王座 竜王 王将 棋王 タイトル数 同累計

2020       奪取 奪取               2    2

2021 奪取    防衛 防衛    奪取 奪取      5    7

2022 防衛    防衛 防衛    防衛 防衛 奪取   6    13

2023 防衛 奪取 防衛 防衛 奪取 防衛 防衛  ?   7以上 20以上

 (注) 2023年度の棋王戦は、現在番勝負中。

 

 叡王から棋王までの順序は、タイトル戦の年間スケジュールによります。

 ただ、2021年度の叡王戦だけは、コロナ禍のため3か月遅れとなりました。

 

 ご覧いただけば分かるように、挑戦すれば奪取、それ以後は必ず防衛成功で、挑戦失敗や失冠は一度もありません。

 一度取ったタイトルは二度と手放さないということです、これまでは。

 

 なお、タイトル戦20連覇はタイトル連続獲得の最多記録更新です。

 >これにより(故)大山康晴十五世名人の保持していたタイトル連続獲得期数の記録(19期)を更新しました。

 藤井聡太、タイトル連続獲得期数の記録を更新|将棋ニュース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

 

 

 次は、歴代タイトルホルダーとの獲得数比較です。

 

  将棋界の歴代タイトルホルダー獲得数比較表

 順位 棋士  獲得数 生年 没年 プロ入り 初獲得 

 1 羽生 善治  99 1970  ―  1985  1989

 2 大山 康晴  80 1923  1992  1940  1950

 3 中原 誠   64 1947 (2009) 1965   1968

 4 渡辺 明   31 1984  ―  2000  2004

 5 谷川 浩司  27 1962  ―  1976  1983

 6 藤井 聡太  20 2002  ―  2016  2020

 7 米長 邦雄  19 1943  2012  1963  1973

 8 佐藤 康光  13 1969  ―  1987  1993

 9 森内 俊之  12 1970  ―  1987  2002

 10 加藤 一二三  8 1940 (2017) 1954   1968

 10 木村 義雄   8 1905  1986  1920  1937

 (注) 没年欄の ( ) 内は引退年。没年の記載がないのは存命中の棋士。

 

 王将戦防衛により、藤井八冠は単独6位に浮上しました。

 1年後には谷川浩司十七世名人を抜いて5位に、1年半後には渡辺明九段を抜いて4位まで上がることが予想されます。

 普通はこういうことを書くと「捕らぬ狸の皮算用」なのですが、藤井八冠に限っては決められた王道を淡々と進む感があります。

 

 

  3.藤井聡太八冠の2023年の獲得賞金・対局料

 

 2月5日に日本将棋連盟が『年間獲得賞金・対局料ベスト10』を発表しました。

 2023年獲得賞金・対局料ベスト10|将棋ニュース|日本将棋連盟 (shogi.or.jp)

 

 まずは2023年と前年のベスト10を並べてみます。

 

  獲得賞金・対局料 (万円)

     2023年            2022年

 順位 氏名  段位     額    氏名  段位  額  

 1 藤井 聡太 竜王・名人 18,634  藤井 聡太 竜王  12,205

 2 渡辺 明 九段     4,562  渡辺 明 名人   7,063

 3 永瀬 拓矢 九段    3,509  豊島 将之 九段  5,071

 4 広瀬 章人 九段    3,066  永瀬 拓矢 王座  4,668

 5 羽生 善治 九段    2,604  齋藤 慎太郎 八段 2,362

 6 豊島 将之 九段    2,223  広瀬 章人 八段  2,166

 7 菅井 竜也 八段    1,959  菅井 竜也 八段  1,970

 8 佐々木 大地 七段   1,881  佐藤 天彦 九段  1,819

 9 稲葉 陽 八段     1,781  山崎 隆之 八段  1,770

 10 伊藤 匠 七段     1,728  稲葉 陽 八段   1,580

 

 以下、獲得賞金・対局料を賞金額と略称します。

 羽生九段、大地七段、匠七段の3人は、昨年は11位以下でしたが、今年ランク入りしました。

 羽生九段は以前は常連だったので、戻ってきたという表現が適当でしょう。

 大地七段は棋聖戦、王位戦の挑戦、匠七段は竜王戦の挑戦が大きかったはずです。

 逆に、渡辺、永瀬、豊島の各九段が賞金額を落としたのは、タイトルを藤井八冠に奪われた影響だと思います。

 

 次に、各年の賞金額第1位と藤井聡太現八冠の賞金額を2010年から見てみましょう。

 

   獲得賞金・対局料ベスト10の推移から   (単位:万円)

 暦年    第1位            藤井聡太

     棋士名  肩書   金額   順位 肩書   金額 

 2010 羽生 善治 名人    11,576   ――

 2011 羽生 善治 二冠     9,886   ――

 2012 羽生 善治 三冠     9,175   ――

 2013 渡辺 明 二冠     10,255   ――

 2014 羽生 善治 名人    11,499   ――

 2015 羽生 善治 名人    11,900   ――

 2016 羽生 善治 三冠     9,150   ――

 2017 渡辺 明 棋王      7,534   ――

 2018 羽生 善治 九段     7,552  12位 七段   2,031

 2019 豊島 将之 竜王・名人  7,157  9位 七段    2,108

 2020 豊島 将之 竜王    10,645   4位 王位・棋聖 4,554

 2021 渡辺 明 名人      8,194  3位 竜王    6,996

 2022 藤井 聡太 竜王    12,205   同左

 2023 藤井 聡太 竜王・名人 18,634   同左

 (注) 藤井八冠のデビュー戦は2016年12月。

 

 2022年、2023年は藤井八冠が第1位なので、第1位のみ表示しています。

 

 さて、われらが藤井八冠は2022年に続いて第1位、またその金額は大幅増の1億8,600万円台となったわけですが、この額をどう判断するかです。

 将棋界の8つのタイトル全てを保持し、かつ一般棋戦4つも優勝して、ネット上では実質12冠という表現も見受けられました。

 それなのに2億円にも達しないというのは寂しい、という声がネット上で多かったように感じましたし、私もそう思います。

 400年の伝統を誇るとはいえ、基本的には日本国内のみに限定されるボードゲームなので、仕方ないのですかね。

 

 一方で、藤井八冠ばかり勝つと、他の棋士の収入が減るのではないかという意見もあります。

 参考までに、1位~10位の棋士10人の賞金額を合計すると、2010年以降ほぼ4億円前後で推移し大きな変動はありません。

 (詳しくいうと、3億7千万円~4億2千500万円の範囲です。)

 したがって、藤井八冠のタイトル独占は、トップ棋士の賞金額には影響するけれども、それ以外の棋士の賞金額には影響しないと評価してよいでしょう。

 

 ちなみに、棋士の収入には賞金額以外に、道場などでの指導料、他棋士の対局の解説(ネット、現地大盤など)、本の執筆に伴う印税などもあります。

 特に、藤井八冠についてはCM出演料が賞金額よりも多いだろうと想定されます。

 藤井八冠が初めて棋士になり29連勝で話題になった頃から将棋人気は盛り返し、道場も盛況になったので、ほとんどの棋士はその恩恵を受けているはずだと思います。

 

 

 賞金額の歴代トップ3は、次のようになっています。

 1位 18,634万円 藤井聡太 2023年

 2位 16,597万円 羽生善治 1995年

 3位 16,145万円 羽生善治 1996年

 

 1995年は羽生七冠となった年ですが、そのときより2千万円しか増えていないというのも寂しいように感じます。

 

 

  4.棋王戦第1局について

 

 最後に、先日2月4日(日)に行われた第49期棋王戦コナミグループ杯五番勝負第1局について触れておきます。

 先手藤井棋王、後手挑戦者伊藤匠七段で、戦型は角換わり腰掛銀となりました。

 匠七段の作戦で双方入玉となり、藤井八冠のタイトル戦では初の持将棋となりました。

 

 これについてネットの一部では匠七段を批判する声もあるようです。

 しかし、私は批判はおかしいと思います。

 持将棋は将棋のルールに認められているもので、反則でも何でもありません。

 将棋はわずかながら先手有利のゲームであることが知られており、後手番としては引き分けにもっていければ十分、という考え方は棋士の間に以前からあります。

 まして先手番勝率9割を誇る藤井八冠が相手であれば、むしろ持将棋に誘導できた匠七段を讃えるべきではないでしょうか。

 

 なお、棋王戦第1局はこれにより引き分けとして決着しました。

 第1局の指し直しはなく、次局は第2局で匠七段の先手となります。

 また、勝率の計算には第1局を含めないということです。