クエーサー直前段階の天体ブルドッグが初期宇宙にも | 宇宙とブラックホールのQ&A

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 ・初期宇宙にも存在したクエーサー直前段階の天体「ブルドッグ」

 アストロアーツ12月22日付記事、元はすばるです。

 初期宇宙にも存在したクエーサー直前段階の天体「ブルドッグ」 - アストロアーツ (astroarts.co.jp)

 

 概要>すばる望遠鏡の観測から、クエーサーの直前段階で塵を吹き飛ばしている天体「ブルドッグ」が見つかった。さらにJWSTの観測で初期宇宙に見つかった極めて赤い天体もブルドッグらしいことがわかった。

 

 >ほぼ全ての銀河の中心には、太陽の数百万倍から~10億倍もの質量を持つ超大質量ブラックホールが存在する。このようなブラックホールが周囲の物質を飲み込み、激しくエネルギーを放射して明るく輝く天体はクエーサーと呼ばれる。その明るさはクエーサーが存在する銀河全体と同等以上にもなるほどで、非常に遠方にあっても観測することが可能だ。

 

 巨大ブラックホールの記事だと、たいてい最初の部分でこのような下限~上限の数値を紹介しているのですが、なぜか毎回数値が異なっており、今回は「太陽の数百万倍から~10億倍もの質量」です。

 まず下限については、われらが銀河系の中心にある巨大ブラックホールの質量が約400万倍とされているので、100万倍の方がよいでしょう。

 上限は、数十億倍という数値もときどき見かけるので、10億倍ではなく100億倍として欲しかったです。

 

 >クエーサー誕生の理論的なシナリオとして、「ガスを多く持つ銀河同士の合体が引き金となる」というものがある。銀河同士が合体して爆発的な星形成が始まり、合体銀河の中心に塵に覆われたクエーサーが形成される。このクエーサーから噴出する外向きのガス流「アウトフロー」によって塵が吹き飛ばされ、クエーサーが明るく見えるようになる、という説だ。ただし、クエーサーが塵に覆われている間は可視光線では極めて暗いため、クエーサーの前段階にあたる天体の発見は非常に困難だった。

 

 ここでの「クエーサー誕生」がどういう意味かですが、巨大ブラックホールの進化(質量の増加)のことではなく、周囲から大量の物質が落ち込んでそれにより解放されるエネルギーで母銀河と同程度以上の明るさで輝くようになること、でしょう。

 

 ところが、クエーサーが誕生しても、大量の塵に覆われていては可視光線では見えないため、発見が難しかったのですね。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の上の画像をご覧ください。

 クエーサーの進化に対する理論的な予想シナリオの図解ですが、重要なのは文章なので抜き出します。

 1) ガスの豊富な銀河どうしが合体する

 2) 塵に覆われた爆発的星形成

 3) 塵に覆われたクエーサー

 4) 塵を吹き飛ばすアウトフローにより青い光が見え出す

 5) 明るく輝くクエーサーとなる

 これら5段階のうち2)~4)がドッグ、4)がブルドッグ。

 

 先に書いたように私は、 1) の段階ですでに、どちらの銀河もその中心に巨大ブラックホールをもっていて、ただしその時点ではクエーサーのような活動をしていない、と理解しました。

 

 >この問題を克服するために「可視光線で暗く中間赤外線で明るい天体」を捜索するという手法が考案され、クエーサーの前段階である塵に覆われた銀河「ドッグ」(DOG; Dust-obscured galaxy)を効率的に探すことができるようになってきた。しかし依然として、アウトフローによって塵が吹き飛ばされているというクエーサーの直前段階にある天体は見つかっていなかった。

 

 可視光線を通さない塵でも赤外線は通すぜ、ということで、「「可視光線で暗く中間赤外線で明るい天体」を捜索するという手法が考案され」たというのです。

 

 クエーサーの前段階である塵に覆われた銀河を、「ドッグ」(DOG; Dust-obscured galaxy)と呼ぶのですね。

 

 英語の”obscure”は、通常は形容詞で「ぼんやりした、はっきりしない、曖昧な」という意味ですが、ここでは「~を見えにくくする、暗くする」という動詞です。

 

 >信州大学の登口暁さんたちの研究チームは、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「ハイパー・シュプリーム・カム(HSC)」を用いた広域探査(HSC-SSP)による可視光線データと、NASAの赤外線天文衛星「WISE」の中間赤外線データを用いて、100億~110億光年彼方の宇宙にドッグを571個発見した。谷口さんたちはここから、「クエーサーは可視光線で青いので、その直前段階では青く光り始めているかもしれない」という点に着目し、青い光の超過をもつドッグを探した。その結果、青く光っている天体が8個見つかった。研究チームはこれらの天体を、青い光が超過していることから「ブルドッグ」(BluDOG; Blue-excess DOG)と名付けている。

 

 黒体放射だとすると、温度が高ければ可視光では青く見えるはず、という点に着目したのですね。

 

 記事名にも出てきたブルドッグって一体何のことかと思ったら、「青い犬」でしたか。

 でも、犬の種類のブルドッグは ”bulldog” と綴ります。

 和製英語的ネーミングで英語圏の研究者に受け入れられるのかな?

 

 ここで、アストロアーツ掲載の下の画像をご覧ください。

 HSCで撮影された「ブルドッグ」です。

 ただ、8個あるブルドッグのうち何座方向のどのくらいの距離にあるものなのか、情報が全くありません。せっかく掲載した画像の価値が下がりますよ。

 

 >すばる望遠鏡の微光天体分光撮像装置「FOCAS」などを用いた観測から、ブルドッグがクエーサーによく似たスペクトルを持つことや外向きにガスが流れ出していると考えられることがわかり、これらがガスや塵を吹き飛ばしながらクエーサーへと進化している段階に相当する天体らしいことが確かめられている。

 

 ガスや塵を吹き飛ばしている途中であることを除けば、ブルドッグはクエーサーとほぼ同様の天体ですから、「クエーサーによく似たスペクトルを持つことや外向きにガスが流れ出している」ことは、今回の研究の想定通りだったことを意味します。

 

 >研究チームはさらに、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測で見つかっている、120億~130億光年彼方の宇宙に存在する極めて赤い天体「ERO」(Extremely Red Objects)にも注目した。EROは超大質量ブラックホールの特徴を示していて、クエーサーの誕生と深い関係があると考えられている新種族の天体で、ブルドッグとスペクトルがよく似ている。

 >EROとブルドッグを詳しく比較したところ、EROもクエーサー直前のアウトフロー段階にある天体らしいことが示された。つまり、EROは初期宇宙におけるブルドッグだと考えられる。両者には相違点もあり、今後の観測研究で相違の理由を含めたクエーサーの形成過程の全容解明が期待される。

 

 「120億~130億光年彼方の宇宙に存在する極めて赤い天体「ERO」(Extremely Red Objects)」ですか。

 巨大ブラックホールの特徴を示していて、ブルドッグとスペクトルがよく似ている天体なので、「初期宇宙におけるブルドッグ」と考えられるということです。

 なぜ「極めて赤い」のかが問題ですが、ぜひその謎も解き明かしていただきたいと思います。

 

 

 ★ 東京23区でも大雪警報が出ました。雪とみぞれの違いは、両方を見ると明らかに違うことが分かります。午後2時過ぎから雪に変わりました。外出から帰ってくるときに明日一日引き籠っていられるだけの食料は買い込んで来たのですが、さてどうなりますことやら。

 9時20分追記。雪が積もり始め、稲妻も何度か光っています。こういうときは次の曲を。

 アリス 冬の稲妻 歌詞 - 歌ネット (uta-net.com) 「動画を見る」をクリックしてください

 

 ★★ 数日前の将棋記事で「ミス日本グランプリ」のことを書きましたが、ご本人と事務所から辞退の申し出があり、2024ミス日本グランプリは『空位』となったとのことです。文春砲に不倫のことを書かれたため。ミス日本は容姿だけでなく品格が問われるので、辞退は当然ではあります。ただ、議論になったウクライナ系かどうかの問題ではなく、不倫で辞退というのは次元がだいぶ下がって残念です。