初期宇宙の棒渦巻銀河 | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

・JWSTで初期宇宙に棒渦巻銀河を複数発見

 アストロアーツ1月13日付記事、元はテキサス大学です。

 JWSTで初期宇宙に棒渦巻銀河を複数発見 - アストロアーツ (astroarts.co.jp)

 

 概要>ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測で、宇宙年齢が現在の2~4割だった時代に棒渦巻銀河が6個発見された。銀河進化のモデルを見直す必要があるかもしれない。

 

 >米・テキサス大学オースティン校のYuchen Guoさんたちの研究チームは、ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)が行った初期観測プログラムの一つ「宇宙進化初期リリース科学サーベイ(CEERS)」で得られた画像から、中心部に棒構造を持つ「棒渦巻銀河」を6個発見した。見つかったのは宇宙年齢が現在の20~40%だった時代だ。

 

 「宇宙進化初期リリース科学サーベイ」のCEERSは、The Cosmic Evolution Early Release Science Survey の頭文字をとっています。

 

 立派な銀河には大別して渦巻銀河と楕円銀河があります。

 このうち渦巻銀河はさらに円盤部の中心に棒構造をもつものともたないものとに区分され、棒構造をもつものを棒渦巻銀河といいます。

 局所銀河群では、アンドロメダ銀河やさんかく座銀河は棒構造をもたない渦巻銀河ですが、我らが銀河系は棒渦巻銀河です。

 

 >今回発見された棒渦巻銀河の一つ「EGS-23205」は、うしかい座の方向約110億光年の距離(赤方偏移z=2.136)にある。その姿は、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の画像では塵に覆われた円盤の形がぼんやりと見える程度だった。しかし、昨年夏に撮影されたJWSTの画像では、明らかに棒構造を持つ美しい棒渦巻銀河としてとらえられている。

 

 うしかい座はトレミーの48星座の1つで、春から初夏の星座。

 アルファ星のアークトゥルスはオレンジ色の1等星で、春の大三角の一角を構成します。

 

 110億光年彼方というと、138-110=28なので、宇宙誕生からまだ28億年後であり、十分に初期宇宙と呼べる時代です。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の上の画像をご覧ください。

 いずれも棒渦巻銀河EGS-23205の姿で、左はHSTによる近赤外線画像、右はJWSTによる中間赤外線画像です。

 JWSTの画像の方が明らかに解像度が高く、棒渦巻銀河であることがはっきり分かります。

 

 >「これらのデータを一目見て、『他のデータは全て後回し!』と言いました。HSTではほとんど見えなかった棒構造がJWSTの画像では際立っており、銀河の基本構造を見る上でJWSTが驚異的な威力を持つことを示しています」(テキサス大学オースティン校 Shardha Jogeeさん)。

 

 >JWSTが遠くの銀河の構造をHSTよりもくっきりと撮影できるのは、HSTより主鏡が大きくて集光力・分解能が高いのと、HSTよりも長波長の赤外線で観測するので塵を見通すことができるためだ。

 

 JWSTは、六角形の鏡を18枚組み合わせた直径 6.5 m の主鏡をもち、赤外線の波長( 0.6~28 μm )で天体を観測します。

 

 >Guoさんたちは、同じく約110億年彼方(z=2.312)にある棒渦巻銀河「EGS-24268」も同定し、EGS-23205とEGS-24268はこれまでに発見された中で最も遠い棒渦巻銀河となった。残る4個も80億光年以上の距離にある。「今回の研究で私たちは、こうしたデータを過去に誰も使ったことも定量的に分析したこともない、全く新しい領域を目にしています。まるで、誰も入ったことのない森に分け入るようなものです」(Guoさん)。

 

 同じ約110億光年彼方といっても、赤方偏移zの数値をみると、EGS-24268の方が遠いはずですが、EGS-23205を先に紹介したのはHSTの画像と比較可能だったからでしょう。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の下の画像をご覧ください。

 JWSTがとらえた6個の棒渦巻銀河です。

 各左上のラベルは銀河の名称とその銀河が存在する時代(Gyr=10億年)を示し、約84億~110億年前の範囲に当たります。

 

 >棒渦巻銀河では、棒構造によって銀河中心部にガスが送り込まれ、他の領域より10~100倍も速く星形成が進む。また、中心部に供給されたガスの一部は、銀河中心にある超大質量ブラックホールの成長にも使われる。

 

 棒構造の役割を解説している重要な箇所です。

 棒構造は銀河中心部にガスを送り込んで、星形成を加速するとともに、巨大ブラックホールも成長させるとのことです。

 

 >「今回、宇宙の初期に棒渦巻銀河が見つかったことで、『棒構造が初期の時代に星形成を加速する』という新たな経路が銀河進化モデルの中に見いだされたことになります」(Jogeeさん)。こうした初期の宇宙にすでに棒渦巻銀河が存在するという事実はまさに、現行の銀河の理論モデルに見直しを迫るものだ。初期宇宙での棒渦巻銀河の存在率を正しく導くように銀河の物理を修正する必要がある。研究チームでは、今後の論文で様々なモデルの検証を行う予定だという。

 

 銀河進化のモデル見直しにつながるとのことです。

 個人的興味としては、初期宇宙の棒渦巻銀河がその後どう進化していくのか、知りたいものです。

 後続研究を期待します。