一番近いブラックホール | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 ・「一番近いブラックホール」の記録更新

 アストロアーツ11月10日付記事、元はマックス・プランク天文学研究所です。

 「一番近いブラックホール」の記録更新 - アストロアーツ (astroarts.co.jp)

 

 概要>位置天文衛星「ガイア」による観測で、地球から1560光年の距離にブラックホールが見つかった。現在知られているブラックホールの中で最も私たちに近いものとなる。

 

 ガイアは、欧州宇宙機関が2013年12月に打ち上げたアストロメトリ専用衛星。

 地球を挟んで太陽とは反対側のラグランジュ点L2に留まって、全天サーベイ観測を続けています。

 アストロメトリは伝統的に位置天文学と訳されますが、天体の位置だけでなく運動、表面温度、光度その他も測定します。

 ただ、カタカナでアストロメトリと書いても何のことか分からないので、位置天文衛星と呼ばれるわけです。

 

 >米・ハーバード・スミソニアン天体物理学センターおよび独・マックス・プランク天文学研究所のKareem El-Badryさんたちの研究チームは、従来と異なる新しい手法を用いて、へびつかい座の方向約1560光年の距離に位置する、既知のブラックホールの中で地球に最も近いブラックホールを発見した。

 

 ドイツには、量子論の父と呼ばれる偉大な物理学者マックス・プランクの名前を冠した研究所が全部で84もあります。

 日本とは異なり連邦制で地方分権の国なので、それらの所在地は多数の都市に分散しています。

 マックス・プランク天文学研究所(独 MPI für Astronomie)はその一つで、略称はMPIA、所在地はハイデルベルグです。

 天文学関係は他にも、マックス・プランク天体(宇宙)物理学研究所、マックス・プランク地球外物理学研究所、マックス・プランク電波天文学研究所などがあります。

 

 へびつかい座は、夏の星座です。

 トレミーの48星座の一つで、黄道上に位置していますが、黄道十二星座には含まれていません。

 北から反時計回りに、ヘルクレス座、わし座、へび座(尾)、いて座、さそり座、てんびん座、へび座(頭)によって囲まれています。

 もともと蛇使い(医師アスクレピオス)が蛇を持っている姿ですが、へびつかい座とへび座に分かれているため、へび座は頭と尾に2分されています。

 

 >これまでで最も近いとされていたブラックホールまでは約3000光年であり、その距離を半分程度縮めたことになる。2020年には約1000光年の距離にブラックホールが見つかったとする発表があったが、後に否定されている。

 

 「約1560光年の距離」がどのくらいかですが、銀河系の円盤部の厚さが約1000光年とされるので、その1.5倍程度です。

 いずれにしろ、地球から行き来のできる距離ではありません。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の上の画像をご覧ください。

 今回見つかったブラックホール「ガイアBH1」の想像図です。

 重力レンズ効果で周囲の光をゆがめていますが、地球から観測できるような光は発していません。

 

 >研究チームは、太陽のような恒星とブラックホールが互いの周りを回る連星系を探し求め、ヨーロッパ宇宙機関の位置天文衛星「ガイア」のデータを調べた。ガイアは膨大な数の恒星の位置を精密に測定している。その中には、時間とともに星の位置がぶれている事例が約17万件あった。このようなぶれは連星が回ることで生じている可能性がある。

 

 「従来と異なる新しい手法」とは、恒星とブラックホールの連星系探しだったのですね。

 

 >このデータのなかから、恒星が見えざる天体に振り回されているように見える事例を探したところ、6つの候補が残った。これらの候補に対して他の観測データも合わせて分析したところ、「ガイアBH1」と名付けた天体だけはブラックホール連星の可能性が高いと判断された。そこで地上の大型望遠鏡を動員して追観測を実施し、ブラックホール抜きでは観測結果が説明できないとの結論に達したという。

 

 約17万件から絞って6つの候補が見つかり、その中の1つだけがブラックホール連星だったというのです。

 努力の成果がゼロで終わらなくて良かったですね。

 

 >「この4年間、ガイアBH1のような連星系を探し続けて、あらゆる方法を試してきましたが、どれもうまくいかなかったのです。ようやくその探索が実を結んだときは、有頂天でした」(El-Badryさん)。

 

 他の方法でも試行錯誤を繰り返したのでしょう。

 お疲れさまでした。

 

 >天の川銀河には恒星質量ブラックホールがおよそ1億個も存在すると推定されているが、現在までの発見数はそれに比べごくわずかだ。既知のブラックホールのほとんどは、近くにある天体からガスを大量に取り込み、そのガスが高温になって発するX線などをとらえることで見つかってきた。ガイアBH1のように、周囲の天体を振り回す以外の活動を示さないブラックホールは数多く潜んでいるのかもしれない。

 

 日本語wikiによると、銀河系に含まれる恒星数は2000~4000億個とされます。

 それに対して、恒星質量ブラックホールの数はおよそ1億個であれば、恒星数の2000分の1~4000分の1ということです。

 

 普通の天体であれば、電磁波(光、電波など)で観測することができます。

 ところが、ブラックホール自体は電磁波を自ら放射せず、また他の天体からの電磁波も全く反射しない天体です。

 ですから、それ自体を電磁波で観測することは不可能です。

 しかし、ブラックホールは強い重力源なので、それに落ち込むガスや塵などの物質がその周りに降着円盤をつくることがあります。

 また、降着円盤からさらにブラックホールに落ち込むときに、一部がジェットとして降着円盤に垂直な方向に放出されます。

 回転の摩擦熱で熱せられた降着円盤の物質やジェットは電磁波で観測することができます。

 

 もう一つ観測に使えるのは、強い重力により周囲の時空を歪めることによる一般相対論的な重力レンズ効果です。

 これによりブラックホールを発見するためには、その背後に光を放つ適当な天体が存在している必要があります。

 

 ここで、アストロアーツ掲載の下の画像をご覧ください。

 天の川を背景としたガイアBH1の位置を示しています。

 3つの拡大パネルは左から順に、ガイアBH1の伴星の実写画像(視野45秒角)、ガイアBH1の周りを回る伴星の軌道のイラスト(視野6ミリ秒角)、ガイアBH1の想像図(視野4ナノ秒角)です。

 順に、実写画像、イラスト、想像図というのが面白いです。

 

 >ブラックホールとともに新たな謎も見つかった。今回の観測結果によれば、ガイアBH1の質量は太陽の約10倍で、その周りを太陽に似た伴星が185.6日周期で公転している。ブラックホールになる前の恒星は、少なくとも太陽の20倍以上の質量を持っていたとされ、その寿命は数百万年しかなかったはずだ。仮に現在見えている伴星も同時に生まれていたのだとすれば、太陽のように一人前の恒星に成長してないうちに、すぐ近くで超巨星になった主星に飲み込まれたことだろう。生き残ったとしても、現状よりずっとブラックホールに近い軌道へ引きずり込まれていたはずだ。

 

 太陽質量の10倍というのは、従来から期待されてきた恒星質量ブラックホールの質量です。

 ただ、その伴星の軌道がかなり離れた距離にあるというのは、連星系の進化を考えたときに説明が付けづらいということです。

 

 >この謎を説明するために、ガイアBH1系の進化についてはかなり特殊なシナリオが提案されている。たとえば、2つの星の距離は元々ずっと遠かったが、別の星との遭遇によって軌道が変わったという可能性がある。また、実はブラックホールが2つあり、伴星の軌道に比べはるかに近い距離で互いの周りを回っているとも考えられるという。大質量星が2つあれば、お互いが超巨星になるのを抑制しつつブラックホールに進化することができるからだ。将来のさらなる観測によって、これらのシナリオの可否を検討することができるだろう。

 

 「大質量星が2つあれば、お互いが超巨星になるのを抑制しつつブラックホールに進化することができる」というのは、具体的なメカニズムが思いつきません。

 いずれにしろ、もともと3重連星だったと考えれば、説明の付けようはありそうです。

 あり得るシナリオをいくつか考えて、将来のさらなる観測によって正解を絞り込むという作業が必要なのでしょう。

 

 

 ★ 今日のロジバン

   mu’i lo nu bilma kei mi zvati lo zdani ca lo culno djedi

 「ムヒ ロ゚ ヌ ㇽ゚マ ケイ ミ ズヴァティ ロ゚ ズニ シャ ロ゚ シュㇽ゚ノ ヂェディ」

  病気だから、一日中家にいた。

 mu’i : ~が動機となって。法制詞BAI類 <- mukti

 mukti : 動機付ける,x1(事)は x2(事)を x3(者)に;x3は x1に鼓舞されて x2をする。 -muk-, -mu’i-

 bilma : 患っている、x1は x2(症状)の x3(病)を。-bi’a-

 zvati : 居る/在る,x1(物/事)が x2(事/所)に。-zva- 本質的な所在でなく、一時的な所在

 culno : 充溢/充満している,x1は x2で -clu- 「満タン」も

 

 主述語は zvati で、そのx1が mi 、x2が { lo zdani } 家です。

 法制節 { mu’i lo nu bilma kei } と間制句 { ca lo culno djedi } 「一日中」も主述語に係っています。

 出典は、.cogas.さんの

 味噌煮込みロジバン: メモ(mu'i) (misonikomilojban.blogspot.com)