羽生世代のまとめ(2022/3/12) | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 将棋の話題ですが、今回は藤井聡太竜王ではなく、羽生世代を取り上げます。

 将棋界を代表する棋士と言えば、今でこそ藤井聡太竜王ですが、数年前までは羽生善治九段(永世七冠)でした。

 それぞれの時代を代表する天才であるお二人を比較すると、時代の違いは当然ですが、羽生九段にあって藤井竜王にないものがあります。

 それは同世代のライバルの存在です。

 羽生九段には若い頃から切磋琢磨しタイトルを争う同世代棋士が多数いて、彼らは「羽生世代」という言葉で括られます。

 今回は、羽生世代の棋士についてまとめてみました。

 資料出所は、主に将棋連盟のHPとwikiです。

 将棋ファンの方々にとっては目新しい情報はないと思いますが、頭の整理くらいにお考えください。

 間違いを見つけた際にはご一報いただけるとありがたいです。(他の記事も同じですが)

 

 このブログで羽生世代と呼ぶのは、A級在籍経験のある6+2名の棋士です。

 本来はお一人お一人の棋風や人柄のご紹介をすべきところですが、今回は基本的なデータを表の形で示し、それに基づく議論を行います。

 順序は、基本は棋士番号順です。

 

   生年月日、年齢など

 番号 氏名   よみ       段位   生年月日  年齢 四段昇級 

 175 羽生 善治 はぶ・よしはる   九段   1970/9/27  51 1985/12/18

 182 佐藤 康光 さとう・やすみつ  九段   1969/10/1  52 1987/3/25

 183 森内 俊之 もりうち・としゆき 九段   1970/10/10 51 1987/5/13

 194 丸山 忠久 まるやま・ただひさ 九段   1970/9/5  51 1990/4/1

 195 郷田 真隆 ごうだ・まさたか  九段   1971/3/17  50  1990/4/1

 198 藤井 猛  ふじい・たけし   九段   1970/9/25  51  1991/4/1  

 180 村山 聖  むらやま・さとし 九段(追贈) 1969/6/15 死去 1986/11/5

 185 先崎 学  せんざき・まなぶ  九段   1970/6/22  51  1987/10/19 

 235 渡辺 明  わたなべ・あきら  九段   1984/4/23  37  2000/4/1

 307 藤井 聡太 ふじい・そうた   九段   2002/7/19  19  2016/10/1

 (注) 村山九段は1998年8月8日死去。享年29歳。

   番号は、棋士番号。以下同様。

 

 羽生世代と対比するために、渡辺明名人と藤井聡太竜王についても載せました。

 藤井竜王は、羽生世代と30歳以上の差があることが分かります。

 

 羽生世代の棋士は全員九段で、しかも今はタイトルホルダーはいないので、○○九段とお呼びします。

 藤井猛九段は竜王3期の実績がありますが、ここでは藤井九段とし、藤井竜王は藤井聡太現竜王を指します。

 また、佐藤、村山姓の棋士も他にいますが、ここは羽生世代以外は取り上げません。

 

   出身と師匠など

 棋士番号 氏名  出身       師匠        弟子     

 175 羽生 善治 埼玉県所沢市  (故)二上達也九段    ―

 182 佐藤 康光 京都府八幡市  田中魁秀九段      ―

 183 森内 俊之 神奈川県横浜市 勝浦修九段     竹俣紅(女流、退会)

                            野原未蘭(女流)

 194 丸山 忠久 千葉県木更津市 (故)佐瀬勇次名誉九段  ―

 195 郷田 真隆 東京都     (故)大友昇九段     ―

 198 藤井 猛  群馬県沼田市  西村一義九段      ―      

 180 村山 聖  広島県安芸郡  森信雄七段       ―

 185 先崎 学  青森県     (故)米長邦雄永世棋聖  ―      

 235 渡辺 明  東京都葛飾区  所司和晴七段      ―

 307 藤井 聡太 愛知県瀬戸市  杉本昌隆八段      ―

 

 出身は関東地方が多いですね。

 師匠は全く重なりません。

 弟子をとっているのは森内九段だけです。

 プレイヤーとしての能力と後進を育てる能力は必ずしも一致しませんが、もうお一人くらい師匠になる方がいてもいいように思います。

 

   竜王戦・順位戦のクラスとタイトル獲得など

 棋士番号 氏名 竜王戦 順位戦 タイトル 一般  永世称号     

         組 期 級 期  期 期  回

 175 羽生 善治 1 33 A 29 99 137 45 十九世名人、永世七冠

 182 佐藤 康光 2 28 A 25 13 37 12 永世棋聖

 183 森内 俊之 2 18 F 22 12 25 13 十八世名人

 194 丸山 忠久 1 23 B2 14  3  10 12  -

 195 郷田 真隆 2 18 B1 13  6  18  7  -

 198 藤井 猛  2 16 B2 10  3   7   8   -        

 180 村山 聖  - 4 -  3  0  1  2   -

 185 先崎 学  5  6  C1 2  0 0  2   -        

 235 渡辺 明  1 16 名人 12 29 41 11 永世竜王、永世棋王

 307 藤井 聡太 竜王 1 B1 -  7  7  5  -

 (注) 「竜王戦」は、現在の組と1組以上在籍期数。

  「順位戦」は、現在の組とA級以上在籍期数。

  「タイトル」は、獲得回数と登場回数。「一般」は、一般棋戦優勝回数。

  森内九段は、2017年3月に順位戦フリークラス転出を宣言。

  次期順位戦で、羽生九段と丸山九段はB1、藤井竜王はA級となるが、他は変更ないことが決まっている。

 

 羽生九段の永世七冠というのは、永世名人以外は次の通りです。

   永世竜王、永世王位、名誉王座、永世棋王、永世王将、永世棋聖

 なお、永世称号の就位は原則引退後です。(永世名人だけは「就位」ではなく「襲位」と書きます。読みは同じです。)

 永世称号はそれぞれ取得条件が異なりますが、今回は省略します。

 

 羽生世代8人の棋士番号は 175~198 で、次の順となっています。

   羽生、村山、佐藤、森内、先崎、丸山、郷田、藤井

 棋士番号は四段昇段(プロ入り)の順で、同時であれば三段リーグの成績順です。

 

 羽生世代8人の生年月日は 1969/6/15~1971/3/17(約1年9か月)で、2学年にまたがり、次の順となっています。

   村山、佐藤、先崎、丸山、藤井、羽生、森内、郷田

 

   獲得タイトルの内訳

 番号 氏名  竜王 名人 王位 王座 棋王 叡王 王将 棋聖  計  永世 

 175 羽生 善治 7  9  18  24  13  -  12  16  99  7

 182 佐藤 康光 1  2  -  -   2  -    2   6   13  1

 183 森内 俊之 2  8  -  -   1  -    1   -  12  1

 194 丸山 忠久 -   2  -  -   1  -   -  -  3  -

 195 郷田 真隆 -  -   1   -  1  -    2   2  6  -

 198 藤井 猛  3  -  -  -  -  -  -  -  3  - 

 235 渡辺 明  11  2   -   1   9  -   5   1  29  2

 307 藤井 聡太  1  -  2  -  -  1    1   2   7   -

 (注) 下線は永世称号を獲得したもの。「永世」は永世称号の数。

 

 99期は将棋ファンの常識ではありますが、やはり羽生九段の実績は別格だと改めて感じます。

 これからは、藤井竜王が毎年どのくらいのペースで羽生九段の金字塔に迫っていけるかが、注目ポイントでしょう。

 

   通算対局数、勝数など

         ┌── 通算──┐   ┌──今年度──┐

 番号 氏名  対局数 勝数  勝率   勝率 レート 同順位

 175 羽生 善治 2147 1495 0.6969 0.4000 1764 16

 182 佐藤 康光 1753 1079 0.6155 0.5526 1727 26

 183 森内 俊之 1547  949 0.6134 0.6800 1695 36

 194 丸山 忠久 1534  966 0.6297 0.6944 1801 10

 195 郷田 真隆 1515  925 0.6109 0.5405 1737 24

 198 藤井 猛   1230  703 0.5715 0.4705 1617 66 

 180 村山 聖   557  356 0.6391  ―

 185 先崎 学   1234  690 0.5591 0.2727 1441 132 

 235 渡辺 明   1068  704 0.6591 0.5526 1894  3

 307 藤井 聡太  317  265 0.8359 0.8125 2066  1

 (注) レートと同順位は次のサイトのものである。

 将棋連盟 棋士別成績一覧(レーティング) (kishibetsu.com)

 

 

 さて、以上のデータに基づいて、大変僭越ながら8人の格付けを行うことにします。

 以下の論旨には賛成できないという方も当然いらっしゃるでしょうが、一ファンの酔狂な試みとしてどうか大目に見てやってください。

 

 まず村山九段は、もともと病気持ち(ネフローゼ)であり、膀胱がんの転移によりA級在籍のまま29歳の若さで夭折されたので、除くことにします。

 (村山九段の壮絶な生涯は、大崎善生さんの名著『聖の青春』で見事に描かれており、私も読みました。同書は映画化もされています。村山九段は他にもさまざまなメディアで取り上げられています。)

 

 残り7人のうち、先崎九段以外の6人は、いずれも

 ・竜王戦1組以上在籍16期以上

 ・順位戦A級以上在籍10期以上

 ・タイトル獲得3期以上

 ですが、先崎九段は順に、6期、2期、なし なので、6人を比較することにします。

 (先崎九段は文筆家で多数の著書があり、そちらでもファンを獲得しているようです。ご自分の闘病記録を綴った『うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間』はラジオやテレビでドラマ化されていて、私も読みました。うつ病で将棋の指し手が全く読めなくなり、詰将棋も七手詰くらいしかできなかったというのですが、病気とは無縁の私は五手詰も苦戦することがしょっちゅうあります(^^;)

 

 6人のタイトル獲得実績をみると、次の3グループに分かれると思います。

 ・羽生九段           ・・・ 99期

 ・佐藤九段、森内九段      ・・・ 十数期

 ・丸山九段、郷田九段、藤井九段 ・・・ 一桁

 

 羽生九段のタイトル獲得99期という数字は歴代最高であり、圧倒的です。

 (2位は大山康晴十五世名人の80期)

 その最初は1989年(平成元年)12月27日の竜王獲得、最後は2017年(平成29年)の竜王獲得でそれにより永世竜王となり永世七冠を達成しましたが、翌2018年(平成30年)12月20日には広瀬八段に敗れて失冠します。

 まさに、平成という時代の覇者だったといえるでしょう。

 (もちろん今後再度タイトルに挑戦して奪取し100期を達成する可能性は皆無ではありませんが、現状では困難だと思います。)

 

 それでは、第2グループ、第3グループ内の序列はどうなるでしょうか。

 佐藤九段と森内九段は、タイトル獲得数ではそれぞれ13期と12期でほぼ同じです。

 また、永世称号も一つずつもっています。

 2017年には一緒に紫綬褒章を受けています。

 ただ、一口に8つのタイトルといっても、竜王と名人は別格です。

 森内九段は名人8期であり、十八世名人の称号をもっています。(羽生九段は十九世名人)

 (どちらも襲位はまだで、60歳になってからと思われる。)

 また、竜王2期です。

 それに対し、佐藤九段は名人2期、竜王1期であり、もっている永世称号は永世棋聖です。

 したがって、森内九段の方が上とするのが通常の見方かと思います。

 

 佐藤九段の方が明らかに上回っている点も挙げておきます。

 ・特別将棋栄誉賞受賞(通算1000勝)。これは歴代9人目(8人目が羽生九段)

 ・現在も順位戦A級在籍。それに対し、森内九段はフリークラス宣言している

 

 (棋士としてのキャリアについては以上の通りですが、将棋界に対する貢献全体をみると、佐藤九段は日本将棋連盟会長として近年のさまざまな改革を進めてきており、間違いなく上だと思います。

 藤井聡太竜王と将棋界の現在(2021/12/3) | 宇宙とブラックホールのQ&A (ameblo.jp)

 「2.佐藤康光会長の功績」参照)

 

 次に、丸山九段、郷田九段、藤井九段のお三方を比べると、タイトル獲得数では、郷田九段が6期、あとの二人が3期です。

 ただ、丸山九段が名人2期、藤井九段が竜王3期であるのに対して、郷田九段は名人も竜王もとったことがありません。

 それを勘案すると、タイトル獲得に関しては実質的に3人に差はないと思います。

 なお、丸山九段がタイトルを獲得したのは2000~2002年の3年間、同じく藤井九段は1998~2000年の3年間なので、お二人のピークは短かったという見方もできます。

 一方、郷田九段は初タイトル獲得が1992年(王位)、最後が2015年(王将)であり、またタイトル戦登場回数も18回と3人の中では一番多いので、羽生世代として最初から認知され長年タイトル戦に関わってきたと言えるでしょう。

 

 3人を分けるのは、通算の成績です。

 丸山九段と郷田九段はいずれも通算対局数が1500台、勝数が900台、勝率が6割台(森内九段も3つとも同じ)なのに対し、藤井九段は同じく1200台、700台、5割7分と明らかに離されています。

 また、今期順位戦では、郷田九段はB1残留を決め、丸山九段はB2からB1へ昇級を決めましたが、藤井九段はB2で降級点1が付きました。

 今年度勝率をみても、前2者は5割を超えているのに対し、藤井九段は5割を切っており、上下の方向の違いは明らかです。

 

 というわけで、6人は次の順番になるというのが私の結論です。

   羽生 >> 森内 > 佐藤 >> 丸山=郷田 > 藤井

 (藤井九段は、対居飛車穴熊の藤井システムなど独創的な戦法の開発で定評があり、升田幸三賞を2回受賞しています。

 藤井システムは竜王三連覇の原動力となりました。

 また、味のある棋戦解説でファンも多く、「てんてー」という愛称で親しまれています。)

 

 

 それでは、藤井聡太竜王には同世代でライバルになりそうな存在はいるのでしょうか?

 藤井竜王と同世代(19歳)には、四段の2人がいます。

   藤井竜王と同世代の今年度成績

 番号 氏名     対局勝敗数   勝率      備考        

 307 藤井 聡太 64戦52勝12敗 0.8095 対局数1位、勝数1位、勝率2位                         連勝数1位

 324 伊藤 匠   52戦43勝 9敗 0.8269 勝率1位、勝数2位、対局数同率5位                         連勝数同率6位

 328 高田 明浩 31戦18勝13敗 0.5806

 

 今のところ、ライバルになりそうなのは、伊藤匠(たくみ)四段一人です。

 順位戦では3月10日の最終局でC2の1期抜けを決めました。

 棋士番号で見る限り、藤井竜王と伊藤四段の差は、羽生九段と丸山、郷田、藤井という3人の差と同程度です。

 伊藤匠四段の今後に期待したいと思います。

 

 もう一人の高田明浩(あきひろ)四段は、今年度勝率が6割に達せず、また順位戦C2 の成績は5勝5敗だったので、当面ライバルになりそうにはありません。

 現在10代の棋士は、この3人だけです。

 藤井竜王を脅かすような強い若手棋士の誕生が望まれます。

 

 

 ★ 今日のロジバン 関心 .a’u

   .a’u ta mo 「アフ タ モ」

  わぁ、なぁにそれ?

   .a’u ma ba'o se lifri do 「アフ マ バホ セ リ゚ㇷリ ド」

  どんなことがあったの?

 .a’u : 関心。それに好奇心を覚えて惹きつけられる気持。心態詞UI1類

 mo : 疑問代述詞。与えられた項たちの関係/項の性質となる述語を尋ねる。代述詞GOhA類

 ma : 疑問代項詞。何が(を、に)。代項詞KOhA7類

 ba’o : 完了/事後「すでにし終わっている」。相制詞ZAhO類。

 lifri : 経験する,x1(者/事)は x2(事)を;x1は x2に 見舞われる;x2は経験的/実験上/実証可能だ。-lif-, -fri-

 

 最初の文の述語は mo、そのx1が ta です。

 第2の文の述語は { ba’o se lifri } 、そのx1が ma 「何」、x2が do 「あなた」です。

 .a’u は疑問文に付けて、関心を表すことが多いようですね。

 出典は、

 ma'oste bau la'o by 日本語 by ji'u la <a href='http://jbovlaste.lojban.org'>jbovlaste</a> de'i li 2022-02-01 (guskant.github.io) a’uの項