将棋の話題です。
昨日から木村一基(かずき)王位と第61期王位戦七番勝負第4局を戦っていた藤井聡太棋聖は、本日8月20日(木)17時頃、80手で勝利し、4勝0敗のストレートで王位を奪取しました。
おめでとうございます!
藤井棋聖は現在18歳1か月であり、これは二冠獲得の最年少記録となります。
(これまでの記録は羽生善治九段の21歳11か月、棋王と王座の二冠)
また、二冠獲得により八段に昇段されましたが、これも八段昇段の最年少記録です。
(これまでの記録は加藤一二三九段の18歳3か月、A級昇段による)
ただし、タイトルを保持しているときはそのタイトル名で呼ばれるため、藤井八段と呼ばれることはおそらく今後ともないと思います。
なお、タイトル戦が始まったときはまだ藤井七段という肩書でしたが、並行して戦っていた棋聖戦で勝利したため、第3戦からは藤井棋聖と呼ばれるようになりました。
木村一基前王位は、昨年2019年9月26日、第60期王位戦七番勝負にフルセットで勝って、王位となりました。
自身初のタイトルであり、またそのときの46歳3か月という年齢は初タイトル獲得の最年長記録です。
これまで好きな言葉として「百折不撓(ひゃくせつふとう)」を挙げられ、扇子などに揮毫されています。
その言葉通りの苦労人ですが、46歳で王位獲得の快挙により、世間的にも「中年の星」として注目されるようになりました。
ちなみに、従来からの愛称は「千駄ヶ谷の受け師」「おじさん」「おじおじ」など。
今回、1年でタイトルを失うこととなり、しかもストレート負けなので、落胆したファンは多かったようです。
本日の第4局2日目、朝開封された後手藤井棋聖の封じ手は「8七同飛成」でした。
本局の副立会人である豊川孝弘七段のtwitter「同飛車大学」がトレンドランキング1位となったことが話題になっています(^_^
お二人の棋士データを将棋連盟のサイトなどに基づきまとめておきます。
棋士番号 氏名 生年月日 年齢 四段昇段 順位戦 竜王戦 師匠
222 木村 一基 1973/6/23 47 1997/4/1 B1 1組 故佐瀬勇次名誉九段
(5期) (10期)
307 藤井 聡太 2002/7/19 18 2016/10/1 B2 3組 杉本昌隆八段
(注) 順位戦と竜王戦の ( ) 内はそれぞれA級在籍期数、1組在籍期数。
棋士番号 氏名 対局 勝 負 勝率 レート
222 木村 一基 1047 661 385 0.6319 1801(8位)
307 藤井 聡太 222 187 35 0.8423 1989(1位)
(注) 昨日までの結果による。レートは「将棋連盟 棋士別成績一覧(レーティング)」に基づく。
今回の七番勝負のデータを振り返っておきます。
局 日にち 先後と勝敗 戦法 手数 対局場所
1 2020/7/1,2 ▲○ 角換り腰掛銀 95 愛知県豊橋市「ホテルアークリッシュ豊橋」
2 2020/7/13,14 △○ 相掛かり 144 北海道札幌市「ホテルエミシア札幌」
3 2020/8/4,5 ▲○ 矢倉 149 兵庫県神戸市「中の坊瑞苑」
4 2020/8/19,20 △○ 相掛かり 80 福岡県福岡市「大濠公園能楽堂」
(注) 先後と勝敗はどちらも藤井棋聖の側から見て、先後は▲が先手、△が後手、勝敗は○が勝利、●が敗北。
タイトル戦は、普段の対局場所である将棋会館(東京・大阪)を離れて、全国を転戦します。
(先の棋聖戦は、コロナ禍のため将棋会館での対局が多くなり、残念でした。)
王位戦は、新聞三社連合の主催のため各新聞社の地元で対局が行われるわけです。
新聞三社連合の三社とは北海道新聞社、中日新聞社、西日本新聞社を指しますが、王位戦の開催についてはさらに神戸新聞社、徳島新聞社が加わっています。
次は“将棋飯”です。王位戦は二日制なので、食事の回数が多いです。
局 日にち 対局者 将棋飯
1 2020/7/1 藤井七段 三河鮮魚の海鮮丼
木村王位 同上
7/2 藤井七段 冷やしきしめん御膳(キノコ抜き)
木村王位 新城源氏和牛カレーセット
2 2020/7/13 藤井七段 中華セットランチ
木村王位 天丼とそばセット
7/14 藤井七段 ビーフステーキセットランチ
木村王位 ビーフシチューセットランチ
3 2020/8/4 藤井棋聖 神戸牛すき鍋膳
木村王位 うな重膳(ご飯少なめ)
8/5 藤井棋聖 肉うどん膳
木村王位 玉子とじそば膳
4 2020/8/19 藤井棋聖 玄海産車海老と九州産野菜の天丼、冷やし能古うどんセット
木村王位 玄海産車海老と九州産野菜の天丼、ぶっかけおろしそばセット
8/20 藤井棋聖 高菜ピラフ(スープ、サラダつき)
木村王位 糸島ポークカツカレー(サラダつき)ライス少なめ
名称に御膳(膳)やセットと付いているものが多いですが、地方転戦のため、いずれもご当地の名物が盛り沢山の豪華な食事です。
もちろん、食事も主催者持ちです。
藤井棋聖も食事を楽しんだと思いますが、普段から苦手なキノコは抜いてもらっていますね。
今回のタイトル戦は、最年少タイトル記録をもつ藤井棋聖と最年長タイトル記録をもつ木村王位という点が注目されましたが、藤井棋聖にとっては初の二日制タイトル戦という面もありました。
現在、将棋界には8大タイトル戦がありますが、そのうち二日制なのは、
竜王戦、名人戦、王位戦、王将戦
の4つで、持時間は名人戦のみ一人9時間、あとの3つは一人8時間です。
藤井棋聖は、時間が長ければ長いほど長考を重ねて最善手を目指すので、初めての二日制棋戦にもまったく臆するところは見受けられませんでした。
そして、いったんタイトルを獲得してしまえば、番勝負で藤井棋聖に勝ち越すのは至難の業と考えられます。
また、棋聖戦第2局から着始めた和服姿も板についてきたように思います。
将棋はボードゲームの一種ではありますが、江戸時代から400年という長い伝統があり、伝統文化という一面ももっています。
畳の上で正座して対局することには、膝や腰への負担など賛否があろうかと思いますが、日本の伝統の一翼を担っている点も忘れてはならないでしょう。
そういえば、藤井棋聖は初手を指す前に必ずお茶を一口飲んでから指されます。
(いわゆる初手お茶)
飲み物の嗜好は人により異なり、本来良し悪しはありませんが、これがコーヒーでなくて良かったと思うのは、私だけではないと思います。
本日現在のタイトルホルダーは、藤井棋聖の王位奪取により次の4人になりました。
棋士番号 名前 タイトル 生年月日 年齢
235 渡辺 明 名人(棋王、王将) 1984/4/23 36
264 豊島 将之 竜王 1990/4/30 30
276 永瀬 拓矢 二冠(叡王、王座) 1992/9/5 27
307 藤井 聡太 二冠(王位、棋聖) 2002/7/19 17
(注) 複数冠保持している場合には、竜王と名人が含まれている場合はそれを名乗る。それ以外は二冠や三冠のように数で表す。
王位を除けば、棋聖獲得時とは名人位が豊島竜王から渡辺三冠に移っている点が異なります。
あのときは藤井棋聖の豊島竜王への挑戦も期待していたのですが、7月24日の竜王戦決勝トーナメント1回戦で羽生世代の丸山忠久九段に敗れ、今年の挑戦はなくなりました。
対丸山戦は、藤井棋聖の時間の使い方(中盤でも惜しみなく時間を投入する)という弱点を、一手損角換わりの研究で突かれた形でした。
ただ、まだ18歳の藤井棋聖は負けるたびに成長していくので、今後もタイトルを一つずつ獲得し、いずれは竜王と名人を含め八冠制覇することを期待したいと思います。
改めて、王位獲得おめでとうございました。