朝日新聞2020年5月17日(日)
歌壇
馬場あき子 選
防水のマイクを沈めてバリトンのザトウクジラの恋の歌聴く
(越谷市) 黒田 祐花
・クジラは、相当の距離離れていても音でコミュニケーションできるらしいですね。人間だと遠距離恋愛はなかなかうまく続きませんが、クジラは大丈夫なのか。
佐佐木幸綱 選
月光に醸し出されて藤棚の藤が差し出す房のむらさき
(三郷市) 木村 義熙
・選者評:月の光に照らされる藤の花。藤の生命力を浮き立たせる擬人法がうまい。
高野公彦 選
AIは囲碁も将棋も負かすのに新型コロナに打つ手明かさぬ
(香芝市) 中村 敬三
・囲碁や将棋はルールが明確に決まったゲームだからコンピュータは簡単に解けますが、人間の生きている世界の大部分は複雑系なので、難しいのでしょう。
コロナ禍でライトアップはみな中止スーパームーンが夜桜照らす
(山陽小野田市) 秦 一憲
・例年はライトアップされる夜桜ですが、今年はなし。月が通常より大きく見えるスーパームーンは4月8日の明け方でした。
毎日新聞2020年5月11日(月)
歌壇
加藤治郎 選
ばあちゃんの前衛的な行動を読み解くために認知症学ぶ
(広島市) 堀 眞希
・毎日新聞2019年6月11日(火)掲載、同作者同選者の「深夜2時裸体に靴下だけ履いたばあちゃんゆっくり月光まとう」に対して、加藤選者好みの前衛的な短歌だと思ったのですが、詠まれている「ばあちゃん」の実際の行動が前衛的だったのですね。大変失礼しました。
読売新聞2020年5月11日(月)
俳壇
正木ゆう子 選
誕生日桜が咲いて満月で (神奈川県) 金藤 恵子
・桜と満月に祝福される誕生日とは最高ですね。
沈丁花星の見えない夜が好き (枚方市) 小沢 由起子
・星が見えなくとも、沈丁花の香りに取り巻かれています。でも、季節ごとの星座も良いものですよ。
俳句あれこれ はんざきの存在感 角谷 昌子(俳人)
山椒魚(さんしょううお)の中でも大型のものをはんざきと呼ぶ。半分に裂かれても生きているのでこの名がついたとか。気の毒な名称だが、ユーモラスな夏の季語だ。・・・
山椒魚の水に鬱金の月夜かな 飯田龍太
・・・ このように圧倒的な存在感で俳句の世界を深めてくれる。
朝日新聞2020年5月10日(日)
俳壇
大串章 選
戦国の武士の眺めし春の月 (松戸市) 橘 玲子
・選者評:春の月を眺め、戦国時代の武士を思う。
長谷川櫂 選
宇宙史に虹の如くに人類史 (八王子市) 徳永 松雄
・選者評:いわば未完の虹。七色のほか、黒と灰色も必要か。
歌壇
佐佐木幸綱 選
見上げれば微かに光る天の川マスクで曇ったメガネ外して
(甲州市) 麻生 孝
・せっかくの天の川なので、メガネではなくマスクを外したいものですが、そうもいかないのかな。
毎日新聞2020年5月4日(月)
歌壇
伊藤一彦 選
地道なる公衆衛生とふ部署に新型コロナ光を当てぬ
(さいたま市) 長谷川 文彦
・公衆衛生の改善は、医療体制の整備や国民皆保険制度と並んで日本人の寿命を世界最高水準にまで引き上げてきた功労者です。近年は注目されることもなく縮小されてきた分野ですが、今やコロナと戦う最前線の一つ。関係者の皆さんの奮闘に感謝します。
読売新聞2020年5月4日(月)
俳壇
正木ゆう子 選
春満月盆地底まで浮き立たす (秩父市) 浅見 三葉
・秩父盆地ですね。近年は、脚本家岡田麿里(まり)さんの作品によって、アニメの「聖地」となっています。
歌壇
俵万智 選
群青の星をしづめてみづうみのぴたりうごかず人らは群れず
(市原市) 井原 茂明
・晴れて風もなく静まり返った湖畔の夜景。「人ら」が群れないのは、コロナの影響でしょうか。
黒瀬珂瀾 選
子犬を手に飼わんと請いし遠き日の娘 の子が愛でるロボットの犬
(仙台市) 柴田 つや子
・いつの時代も変わらぬ子どもの気持ちと、科学技術によって変わっていく時代と。
朝日新聞5月3日は該当なし。