超準解析入門の入門1:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12538313977.html
超準解析入門の入門8:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12541524136.html
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8 実数の超準モデルと無限小
最後に、実数の超準モデル *R について簡単にみておきます。
その基礎となる2階算術については、『数学基礎論序説』では有力な公理系が5つ紹介されていますが、ここでは省略します。
アルキメデス的の定義 : 順序体Aがアルキメデス的(Archimedian)であるとは、任意の正の元a,b∈Aに対し、十分大きな自然数n∈Nが存在して、
b < a+a+・・・+a
└- n個 -┘
となることである。
「アルキメデス的」の意味については、昔書いた次の記事を参考にしてください。
算数の世界8:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12471784532.html
「第10章 量 「量の三要件」 (3)アルキメデスの公理」の箇所です。
・実数の標準モデルR は、アルキメデス順序体である。
定理 : 実数の超準モデル *R は、非アルキメデス順序体である。
証明:アルキメデス的の定義においてa=1,b=*Rの元(1, 2, 3, ・・・, n, ・・・)と置くと、
b < a+a+・・・+a
└- n個 -┘
をみたす自然数n∈Nは存在しない。//
無限大、有限、無限小の定義 : *R の元aが無限大(infinite)であるとは、
∀b∈R b<|a|
となることをいう。
無限大でない元を有限(finite)であるという。
*R の元aが無限小(infinitesimal)であるとは、
∀b(>0)∈R |a|<b
となることをいう。
例として、最初に登場した [(1, 2, 3, ・・・, n, ・・・)] は無限大であり、[(1/1, 1/2, 1/3, ・・・)] は無限小です。
・無限小全体は、演算+と・に関して閉じている。
証明:ε,δを無限小とする。標準実数 0<b<2 を任意にとる。無限小の定義から、
-b/2 < ε, δ < b/2
であり、順序体の性質より -b <ε+δ, ε・δ < b となる。したがって、ε+δ,ε・δは無限小である。//
・ a が無限大であることと、 1/a が無限小であることは同値である。
証明: aは無限大 ⇔ ∀b∈R b<|a| ⇔ ∀b>0(∈R) |1/a|<1/b ⇔ ∀b>0(∈R) |1/a|<b ⇔ 1/aは無限小.//
*R の元a,bに対し、
a~b ⇔ a-b は無限小
と定義すれば、~は同値関係であり、演算+と・を保存しています。
・有限実数 a∈*R に対し、 a~b となる b∈R がただ1つ存在する。
この b を a の標準部分(standard part)と呼び、 st(a) で表す。
a-st(a) は無限小なので、
・すべての有限超実数 a は、標準実数 st(a) と無限小 a-st(a) の和として一意に表される。
・ 数列 s=(ai)∈Rω について lim ai = a ならば、 [s] ~ *a である。
★ 今回の連載も、ようやくこれで終わりです。途中から急に難しくなった感がありますが、本来難しいものに分かりやすい導入部を付けたので、まあ仕方ないですね。