超準解析入門の入門9 | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

 超準解析入門の入門1:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12538313977.html

 超準解析入門の入門8:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12541524136.html

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 8 実数の超準モデルと無限小

 最後に、実数の超準モデル について簡単にみておきます。

 その基礎となる2階算術については、『数学基礎論序説』では有力な公理系が5つ紹介されていますが、ここでは省略します。

 

 アルキメデス的の定義 : 順序体Aがアルキメデス的(Archimedian)であるとは、任意の正の元a,b∈Aに対し、十分大きな自然数n∈が存在して、

   b < a+a+・・・+a

      └- n個  -┘

 となることである。

 「アルキメデス的」の意味については、昔書いた次の記事を参考にしてください。

 算数の世界8:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12471784532.html

 「第10章 量 「量の三要件」 (3)アルキメデスの公理」の箇所です。

 

 ・実数の標準モデル は、アルキメデス順序体である。

 

 定理 : 実数の超準モデル は、非アルキメデス順序体である。

 証明:アルキメデス的の定義においてa=1,b=の元(1, 2, 3, ・・・, n, ・・・)と置くと、

   b < a+a+・・・+a

      └- n個  -┘

 をみたす自然数n∈は存在しない。//

 

 無限大、有限、無限小の定義 : の元aが無限大(infinite)であるとは、

   ∀b∈R b<|a|

 となることをいう。

無限大でない元を有限(finite)であるという。

  の元aが無限小(infinitesimal)であるとは、

   ∀b(>0)∈ |a|<b

 となることをいう。

 

 例として、最初に登場した [(1, 2, 3, ・・・, n, ・・・)] は無限大であり、[(1/1, 1/2, 1/3, ・・・)] は無限小です。

 

 ・無限小全体は、演算+と・に関して閉じている。

 証明:ε,δを無限小とする。標準実数 0<b<2 を任意にとる。無限小の定義から、

   -b/2 < ε, δ < b/2

 であり、順序体の性質より -b <ε+δ, ε・δ < b となる。したがって、ε+δ,ε・δは無限小である。//

 

 ・ a が無限大であることと、 1/a が無限小であることは同値である。

 証明: aは無限大 ⇔ ∀b∈ b<|a| ⇔ ∀b>0(∈) |1/a|<1/b ⇔ ∀b>0(∈) |1/a|<b ⇔ 1/aは無限小.//

 

  の元a,bに対し、

   ab ⇔ a-b は無限小

 と定義すれば、は同値関係であり、演算+と・を保存しています。

 ・有限実数 a∈ に対し、 ab となる b∈がただ1つ存在する。

 この b を a の標準部分(standard part)と呼び、 st(a) で表す。

 

 a-st(a) は無限小なので、

 ・すべての有限超実数 a は、標準実数 st(a) と無限小 a-st(a) の和として一意に表される。

 

 ・ 数列 s=(ai)∈Rω について lim ai = a ならば、 [s] a である。

 

 

 ★ 今回の連載も、ようやくこれで終わりです。途中から急に難しくなった感がありますが、本来難しいものに分かりやすい導入部を付けたので、まあ仕方ないですね。