「ひとみ」の運用断念ほか | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

JAXAの4月28日付発表です。
・X線天文衛星ASTRO-H「ひとみ」の今後の運用について
http://www.jaxa.jp/press/2016/04/20160428_hitomi_j.html

> X線天文衛星ASTRO-H「ひとみ」については、異常事態発生後、理事長を長とする対策本部を設置し、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)をあげて不具合の全容解明を行うとともに、衛星状態の把握に努め、衛星の機能回復に向け全力を尽くしてまいりました。しかしながら、JAXAとして技術的に検討した結果、以下2つの結論に至りました。
(1) 物体の分離に至る推定メカニズムについてシミュレーションを含めた解析の結果がほぼ確定し、構造的に弱い部位である太陽電池パドルが両翼とも根元から分離した可能性が高いこと。
(2) 物体が分離した後も電波を受信できていたことを根拠とし、通信の復旧の可能性があると考えていたが、得られた電波の周波数が技術的に説明できないこと等から、受信した電波はASTRO-Hのものではなかったと判断されること。
>また、複数の海外機関からも太陽電池パドルの両翼分離を示唆する情報を得たことから、これらの情報に基づき、今後衛星が機能回復することは期待できない状態にあるとの判断に至りました。
>以上の判断を踏まえ、衛星の復旧に向けた活動は取りやめ、今後、今回の異常に至った原因究明に専念することとし、ASTRO-Hとしての設計/製造/検証/運用の各段階において今回の事態に至った要因を調査し、背後要因も含めた原因を徹底的に究明いたします。
>この衛星の観測成果に期待し、応援いただいてきた多くの国民の皆さま、NASAをはじめ国内外の協力関係機関の皆さま、観測を進めようと計画されていた国内外の天文学の研究者の皆様に対しまして、ASTRO-Hの運用を断念せざるを得ないことについて、深くお詫び申し上げます。
>これまで衛星状態の把握のために、地上からの観測等のご協力をいただいた国内外の関係機関の皆様には厚く御礼申し上げます。

まあ、分かりやすくまとめると、今回の事故により太陽電池が本体から切り離されてしまったため復旧の見込みはなくなったので、今後の運用を断念します、ということですね。
ウーム、期待が大きかっただけに非常に残念です。

残念なのはいくつかの面があって、
第一に、期待されていたブラックホール研究や宇宙論への貢献が不可能となったこと。
また、日本がこれまで築きあげてきたX線天文衛星の輝かしい伝統が途切れてしまうこと。
第二に、日本の宇宙開発技術の信頼性が揺らぎかねないこと。
原因がスペースデブリ(宇宙ゴミ)の衝突とか外部にあったなら、まだましだったのですが。
第三に、JAXA主体の日本の宇宙開発に対して、特に予算面からの批判が想定されること。
300億円かけたプロジェクトがパーになったのですから、仕方ありませんが。


今日は、海外の宇宙開発ニュースが二件あります。
・火星に無人宇宙船 米ベンチャーが再来年打上げへ
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160428/k10010501721000.html?utm_int=news-culture_contents_list-items_009

>アメリカの宇宙開発のベンチャー企業が、火星に向けて無人の宇宙船を再来年にも打ち上げる計画を発表し、アメリカが目指す火星の有人探査に向けた大きな一歩となるか注目されます。
>これは、アメリカのベンチャー企業スペースX社が27日、ツイッターの公式アカウントで明らかにしたものです。
それによりますと、スペースX社は、現在開発を進めている宇宙船「ドラゴン2」を火星に向けて、再来年にも打ち上げる計画だということです。
>「ドラゴン2」は、エンジンを地上に向けて噴射することで、ヘリコプターのように狙った場所に着陸できるのが特徴で、宇宙飛行士が乗り込める有人の宇宙船として開発していますが、今回の計画では無人で打ち上げ、火星での着陸を目指すとしています。
>スペースX社は、計画の詳細をことし9月に発表するとしていて、「火星に大きな宇宙船を着陸させるのに必要な技術を実証してくれるだろう」とコメントしています。
>NASA=アメリカ航空宇宙局は、2030年代に火星に人類を送り込む計画を打ち出していて、予算に制限があるなか、民間企業による技術開発やコストダウンに大きな期待を寄せています。
>今回の計画でも、NASAとスペースX社は技術協力の契約を結んだということで、アメリカが目指す火星の有人探査に向けた大きな1歩となるか注目されます。

アメリカは、宇宙開発の主体を民間企業に移していくとしています。
これまで失敗もありましたが、着実に進んでいるのですね。


・ロシア 新しい宇宙基地でロケット初打上げ
NHKオンラインです。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160428/k10010502001000.html?utm_int=news-culture_contents_list-items_008

>ロシア政府が極東地域に完成させた新しい宇宙基地で、28日、初めてのロケットが打ち上げられ、打ち上げは成功しました。ロシアとしては、日本を含む各国の宇宙飛行士もいずれ利用する可能性があるこの基地を拠点に、宇宙開発に一層力を入れたい考えです。
>ロシア政府は、隣国カザフスタンのバイコヌール宇宙基地に代わる新しい宇宙開発の拠点として、4年前から極東のアムール州でボストーチヌイ宇宙基地の建設を進め、このほど完成させました。そして日本時間の28日午前11時すぎ、3つの人工衛星を載せたソユーズロケットがこの基地から初めて打ち上げられました。
>ロシア宇宙庁によりますと、ロケットは順調に飛行を続け、およそ10分後、高度500キロ付近で予定の軌道に人工衛星を投入し、打ち上げは成功したということです。
>現地を視察したプーチン大統領は「ロシアの宇宙開発にとって非常に大きな前進だ。しかし、有人のロケットなどの打ち上げに向けて、やるべき仕事はまだたくさんある」と述べ、基地の機能の拡大を急ぐ考えを示しました。
>ロシア宇宙庁はこの基地の整備をさらに続け、早ければ2024年に有人のロケットを打ち上げる計画です。日本を含む各国の宇宙飛行士もこの基地をいずれ利用する可能性があり、ロシアとしてはこの基地の運用の実績を積んで宇宙開発に一層力を入れたい考えです。

近年ロシアの宇宙開発は、失敗が続き、その原因はソ連崩壊による技術継承の断絶だったと考えられています。
それでも、北朝鮮のミサイル発射と違って、肝心のところで成功させるのは見事なものです。
日本の宇宙飛行士もお世話になりそうなので、とりあえず成功してよかったと思います。