貧弱な矮小銀河で星形成 | 宇宙とブラックホールのQ&A

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・貧弱な矮小銀河の内部でパワフルな星形成
アストロアーツ9月16日付記事、元はアルマ望遠鏡のサイトです。
http://www.astroarts.co.jp/news/2015/09/16wlm/index-j.shtml

概要>アルマ望遠鏡で天の川銀河に近い矮小不規則銀河を観測したところ、その内部にコンパクトな星間分子雲の群れが見つかった。星の材料が豊富とはいえない矮小銀河で密集した星団が作られる理由の解明につながる研究成果だ。

われわれの銀河系(天の川銀河)やアンドロメダ銀河のような渦巻銀河(あるいは棒渦巻銀河)と、M87のような楕円銀河は、大規模銀河であり、私は立派な銀河と呼んでいます(^_^
これに対して、ずっと小さい銀河もあって、矮小銀河(dwarf galaxy)と呼びます。
大マゼラン雲が大規模銀河と矮小銀河の境目くらいだと思います。
矮小銀河には形の整っていないものも多く、それらは矮小不規則銀河と呼ばれます。

>WLM(ウォルフ・ルントマルク・メロッテ)はくじら座の方向約300万光年彼方にある矮小銀河で、局部銀河群(天の川銀河、大小マゼラン雲、アンドロメダ座大銀河M31、さんかく座M33、および数十個のより小さな銀河を含む銀河の集団)の外縁に、比較的孤立して存在している。

くじら座はトレミーの48星座の一つで、秋の星座に分類されます。
局部銀河群の外縁にあるというのですから、銀河系のご近所さんですね。

>チリ大学モニカ・ルビオさんたちの国際研究チームはアルマ望遠鏡を用いてWLMを観測し、大きな銀河で星が形成される環境と同等の星形成能力を持つ小さな領域を発見した。星形成を行う星間分子雲で一酸化炭素分子が放出する電波をとらえることによって見つかったものだ。

星間分子雲も、主な成分は水素ガスです。
しかし、水素分子を電波でとらえることは困難なので、通常は分子雲に一緒に含まれている一酸化炭素分子などの電波で検知します。

>これまでWLMや同様の銀河では、その中に見られる新しい星団の量に比べて材料となる物質がじゅうぶんに観測されていなかった。今回の観測から、WLMでは比較的密度の高い一酸化炭素の雲がその周囲を取り囲む原子・分子の薄い雲に比べて非常に小さいという、通常の銀河とは異なる特徴が明らかにされた。このコンパクトさのために一酸化炭素の観測が難しかったというわけだ。

新しい星団が作られるからには、その材料となる物質が存在するはずですが、これまではじゅうぶんに観測されていなかったというのですね。
WLMの場合には、分子雲のうち密度の高い部分がその周囲の密度の低い部分に対して相対的に非常に小さいために、一酸化炭素の観測が難しかったというのです。

>濃縮された一酸化炭素の雲から多くの星が誕生するためには、その周りにある巨大で希薄なガスから圧力を受けている必要がある。まさにそうした領域を発見したことにより、銀河中に見られる印象的な星々が誕生するメカニズムがわかった。

「濃縮された一酸化炭素の雲」とは誤解を招きやすい文章ですが、一酸化炭素は観測しやすいというだけで、あくまでも主成分は水素分子です。
一酸化炭素が集まって星ができるわけではありません。

>今回の発見や今後の観測はさらに、天の川銀河の周縁部(ハロー)に分布する球状星団の形成条件の解明にも役立つのではないかと期待されている。大規模な星団は、元は矮小銀河で形成され、母体となる矮小銀河が分散してしまった後にハローへと移動したかもしれないと考えられているからである。

球状星団とは、数十万個の星が密集してできている天体です。
天の川銀河では、円盤部ではなく周縁部(ハロー)に位置します。
古い赤い星から成り、なぜこのような天体がハローに位置しているのか、由来は分かっていません。

「大規模な星団は、元は矮小銀河で形成され、母体となる矮小銀河が分散してしまった後にハローへと移動した」という仮説がどう検証されるか楽しみです(^_^


★ 残念ながら、昨晩の中秋の名月も今晩のスーパームーンも見られそうにありません(T_T