半正多面体のご紹介1 | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

目次
 1.半正多面体と正角柱・反正角柱
 2.正多面体から反正多面体を「つくる」
  (1) 切頂(せっちょう)―5種類
  (2) 中央切り     ―2種類
  (3) 二重切り     ―2種類
  (4) 離面       ―2種類
  (5) 捻(ねじ)り切り ―2種類
 3.半正多面体とアルキメデス・タイリングの数学的導出
  (1) 半正多面体
  (2) アルキメデスの平面タイリング
  (3) 実際の計算
 4.おわりに


 1.半正多面体と正角柱・反正角柱
前回は正多面体をご紹介しました。
正多面体のご紹介1:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12471786136.html

正多面体のご紹介2:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12471786143.html

正多面体の連載など一覧: https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12598605490.html

 

正多面体に関連する立体として半正多面体というのがあります。

「半正多面体」(semi-regular polyhedron、セミレギュラー・ポリへドロン)とは、「面が複数の種類の正多角形からなりかつどの頂点周りも同じ形(合同)」で、正角柱でも反正角柱でもない多面体のことです。

「正角柱」(regular prism、レギュラー・プリズム)とは、天井と底面が同じ正n角形で側面がn枚の正方形からなる多面体のことです。
(多面体にはもともと決まった上下など存在しませんが、この記事では文章で描写しやすいように多面体をもっとも見かけがきれい(対称性がある)で安定的な置き方で平面上に置いたとして天井、底面、側面という言い方をしています。)
(側面が長方形の場合も正角柱と呼ぶことも多いと思いますが、今回の連載で扱う多面体はすべてが正多角形からなる(整凸多面体な)ので、上の定義となります。)
正角柱は、「面が複数の種類の正多角形からなりかつどの頂点周りも同じ形(合同)」という条件を満たしています。
別名は、「アルキメデスの角柱」(Archimedean prism、アールキミーディアン・プリズム)です。
正4角柱は立方体なので、正多面体に含めます。
正角柱については、たとえば次のサイトの中くらいをご覧ください。
http://mathworld.wolfram.com/Prism.html
左上の正3角柱から右下の正10角柱まで並んでいます。
正n角柱では頂点はすべて3価、頂点数Vは2n個、稜の数は3n本、面の数Fはn+2枚、うち正方形がn枚、正n角形が2枚です。

「反正角柱」(regular antiprism、レギュラー・アンチプリズム)とは、天井と底面が同じ正n角形で側面が2n枚の正3角形を上下交互に並べたものからなる多面体のことです。
反正角柱も、「面が複数の種類の正多角形からなりかつどの頂点周りも同じ形(合同)」という条件を満たしています。
別名は、「アルキメデスの反角柱」です。
正角柱は小学生でも知っていますが、こちらは馴染みのない方がほとんどでしょう。
しかし、その重要性は同程度です。
正3角反柱は正8面体なので、正多面体に含めます。(この場合、「反」の字は語呂で「角」と「柱」の間に入れます。)
たとえば、次のサイトをご覧ください。
http://mathworld.wolfram.com/Antiprism.html
左上の正3角反柱から右下の正10角反柱まで並んでいます。
正n角反柱では、頂点はすべて4価、頂点数Vは2n個、稜の数Eは4n本、面の数Fは2n+2枚、うち正3角形が2n枚、正n角形が2枚です。
正n角柱と対比すると、側面が正方形ではなく正3角形のため、2倍の枚数必要です。
また、天井と底面の正n角形は、正n角柱では垂直に平行移動した配置なのに対し、正n角反柱では半分ずれた、つまり1/2n回転した配置となっています。
高さ(底面から天井までの距離)を比較すると、正n角反柱は正n角柱よりも低いです。

ここで、正角柱と反正角柱について、その構成要素をまとめておきます。
     頂点の価数 頂点数V 稜の数E 面の数F 面の内訳      .
正3角柱   3     6    9    5    F3=2,F4=3
(立方体)   3     8    12    6    F4=6
正5角柱   3     10    15   7    F4 =3,F5=2
 ・・・
正n角柱   3     2n   3n  n+2   F4=n,Fn=2
 ・・・
(正3面体)  4     6    12   8    F3=8
正4角反柱   4     8    16   10   F3=8,F4=2
正5角反柱   4     10    20   12   F3=10,F5=2
 ・・・
正n角反柱  4     2n    4n  2n+2  F3=2n,Fn=2
 ・・・

半正多面体のことを「アルキメデスの立体」(Archimedean solid)ともいいます。
ただし、広い意味では正角柱も反正角柱もアルキメデスの立体に含むことがあります。
正角柱と反正角柱を半正多面体から除外するのは、いずれも無限系列(無数に存在する)であり、また対称性が半正多面体よりも劣るためです。
半正多面体の対称性は、正多面体よりは低く、正角柱・反正角柱よりは高いのです。
半正多面体、正角柱、反正角柱のいずれも、その頂点の価数(頂点からでている稜の本数)はすべて同じ値です。

半正多面体は、数え方にもよりますが、通常次の13種類とされます。
・切頂4面体(truncated tetrahedron)
・立方8面体(cuboctahedron)、切頂立方体(truncated cube)、切頂8面体(truncated octahedron)、斜方立方8面体(rhombicuboctahedron)、切頂立方8面体(truncated cuboctahedron)、変形立方体(snub cube)
・20・12面体(icosidodecahedron)、切頂12面体(truncated dodecahedron)、切頂20面体(truncated icosahedron)、斜方20・12面体(rhombicosidodecahedron)、切頂20・12面体(truncated icosidodecahedron)、変形12面体(snub dodecahedron)
(和名の細部については一部議論のあるところですが、最後は私流です。)

半正多面体の具体的な形を見てもらうために、3つのサイトを挙げておきます。
a.http://mathworld.wolfram.com/ArchimedeanSolid.html
数学では定評のあるWolframMathWorldのサイト(英文のみ)ですが、小さいのが難点。
b.http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%8A%E6%AD%A3%E5%A4%9A%E9%9D%A2%E4%BD%93
日本語wikiですが、回り続けるのが難点(^^;
c.http://en.wikipedia.org/wiki/Archimedean_solid
英文wikiです。個々の立体をクリックすると、拡大します。

13種類の立体を正多面体との関係で分類すると、切頂4面体のみ正4面体の系列、立方8面体~変形立方体の6種類は立方体と正8面体の系列、20・12面体~変形12面体の6種類は正12面体と正20面体の系列です。
切頂や斜方という用語の意味については、後で解説します。
これらのうち、立方8面体と20・12面体の2つは特に対称性が高く、正多面体との中間的存在と考えられるので、「準正多面体(quasi-regular polyhedron)」と呼ばれます。

("quasi"にはクウェイザイあるいはクウェイサイという読みとクォージという読みとがあって、数十年前の朧な記憶ではイギリス英語とアメリカ英語の違いだったと思うのですが、どちらがどちらかは確認できていません。)

ただし、半正多面体が13種類しかないことも数学では証明されなければならず、図を眺めたのはやはりカンニングです(^_^


 2.正多面体から半正多面体を「つくる」
さて、まず正多面体から半正多面体をどうやって「つくる」かを説明したいと思います。
正多面体から半正多面体を「つくる」操作には次の5つがあります。
以下は、半正多面体の実際の姿を見ながらお読みください。

  (1) 切頂(せっちょう)-5種類
これは元の正多面体の頂点周りを平面で切り取り、新たな面をつくる操作です。
切り取られてできた多角形の辺の長さがすべて等しくならなければならないので、切り取り方は正多面体ごとに一通りに決まります。
切頂以外にも切頭、切隅、端欠、角切などの訳語がありますが、私は切頂が一番よいと思います。
(端欠はtruncatedトランケイティッドの音訳で「たんけつ」と読み、「端(はし)が欠ける」の意)

元の正多面体を{p,q}、その頂点、稜、面の数をそれぞれV,E,Fとします。(以下、(2)~(5)も同様)
正p角形だった元の面F枚は正2p角形となり、元の頂点に新たにできる面は正q角形でV枚です。
したがって、面の数は合計でF+V=E+2枚となります。
一方、頂点の数は元の頂点1つごとにq個の頂点ができるので、qV=pF=2E個となります。
頂点はすべて3価です。
また、稜の数は、E+qV=E+pF=3E本です。

正多面体の数が5種類なので、この操作によってできる半正多面体も次の5種類です。
以上の考察から得られる頂点、稜、面の数(V',E',F')も載せておきます。
      E        価数 V' E' F'   面の内訳   . 
正4面体   6 → 切頂4面体  3  12 18 8  F3=4,F6=4
立方体  12 → 切頂立方体 3  24 36 14  F3=8,F8=6
正8面体  12 → 切頂8面体  3  24 36 14  F4=6,F6=8
正12面体 30 → 切頂12面体 3  60 90 32  F3=20,F10=12
正20面体 30 → 切頂20面体 3  60 90 32  F5=12,F6=20

半正多面体の中でもっとも馴染みがあるのは、サッカーボールに使われている切頂20面体でしょう。(細かいことを言うと、多面体そのものではなくて、球面に投影したものになっています。)
この立体は、正5角形の面12枚と正6角形の面20枚からなります。
なお、次の記事も参考にしてください。
サッカーボールとフラーレン:http://blogs.yahoo.co.jp/karaokegurui/60927657.html

  (2) 中央切り-2種類
正多面体の同じ頂点に連なる各稜の中点を結んで平面で切り取り、新たな面をつくる操作です。
(1)の切頂で切られる部分をドンドン大きくしていった極限と見なすことができます。
この操作でできる多面体は、いずれも準正多面体です。

半正多面体{p,q}から中央切りによってできる準正多面体の面の数は、正p角形の面がF枚、正q角形の面がV枚で合計F+V=E+2枚です。
その頂点数は元の稜の数E個に等しくなり、価数は4です。
同じく稜の数はqV=pF=2E本となります。

正4面体にこの操作を行うと、正8面体ができます。
また、双対多面体からもこの操作で同じ種類の準正多面体ができます。
したがって、この操作で新たにできる多面体は2種類です。
                   E 価数 V’ E’ F’  面の内訳  . 
立方体   → 立方8面体 ← 正8面体 12  4  12 24 14 F3=8,F4=6
正12面体 → 20・12面体 ←正20面体 30 4  30 60 32 F3=20,F5=12
(参考
正4面体 → 正8面体          6   4  6  12  8 F3=8=4+4 )

名称ですが、、立方8面体(cuboctahedron)では立方(cube、F=6)が8面(octa、F=8)よりも先に来るのに対し、20・12面体(icosidodecahedron)では20面(icosi,F=20)が12面(dodeca,F=12)よりも先に来ます。
何かルールがあるのか分かりませんが、案外英語の語呂で決まったのかもしれませんね。

立方8面体を半分に割ったものは正3角台塔といい、後で出てくるジョンソン立体の一種(J3)です。

正3角台塔の底面は正6角形で、言い換えると立方8面体は正6角形により2分されます。

立方8面体を2分する正6角形は、全部で4枚あります。
20・12面体を半分に割ったものは正5角丸塔といい、これもジョンソン立体の一種(J6)です。

正5角丸塔の底面は正10角形で、言い換えると20・12面体は正10角形により2分されます。

20・12面体を2分する正10角形は、全部で6枚あります。

  (3) 二重切り―2種類
中央切りでできる準正多面体に続けて切頂を行う操作です。
(ただし、そのままでは稜の長さが等しくならないので、多少調整します。)
切る操作を2回繰り返すので、二重切りといいます。

大本の正多面体を {p,q}、その頂点、稜、面の数をV,E,Fとします。
(1)と(2)から、正2p角形の面の数はF枚、正2q角形の面の数はV枚、正方形の数はE枚なので、面の合計は F+V+E=2E+2枚です。
頂点の数は4E個で、その価数は3価です。
稜の数は、6E本です。
双対正多面体 {q,p} に二重切りを行ってできる半正多面体が、元の {p,q} からできる半正多面体と等しいのは明らかです。

準正多面体が2種類なので、二重切りでできる半正多面体も2種類です。
     E              価数 V' E' F'  面の内訳    . 
立方体  12 →立方8面体→切頂立方8面体  3 48 72 26 F4=12,F6=8

                              ,F8=6
正12面体 30 →20・12面体→切頂20・12面体 3 120 180 62 F4=30,F6=20

                              ,F10=12

  (4) 離面―2種類
{p,q} の各面を切り離して稜のすき間に正方形を挿入し、頂点のすき間に正q角形を挿入する操作です。
元の面は正p角形のままで変わりません。
正多面体 {p,q} の各稜を削って正方形とし、合わせて頂点を削って正q角形とする操作(削稜)ということもできます。
(挿入してつくるのと削ってつくるのでは、できた立体の大きさが違うだろうと思われるでしょうが、本稿では稜の長さに対する相対的な大きさしか問題としないので、同じことになります。)

正p角形の面の数はF枚、正q角形の面の数はV枚、正方形の面の数はE枚なので、面の数は合計で F+V+E=2E+2枚です。
頂点の数は pF=qV=2E個で、その価数は4です。
稜の数は、pF+qV=4E個です。

正多面体 {p,q} とその双対 {q,p} に離面を行った結果は、同じ種類の半正多面体となります。
また、正4面体に離面を行うと、立方8面体となります。
したがって、離面で新たにできる半正多面体は2種類だけです。
                   E 価数 V’ E’ F’  面の内訳      .
立方体 →斜方立方8面体← 正8面体  12 4 24 48 26 F3=8,F4=18=12+6 
正12面体→斜方20・12面体←正20面体 30 4 60 120 62 F3=20,F4=30

                              ,F5=12
(参考
正4面体 → 立方8面体        6 4 12 24 14 F3=8=4+4

                              ,F4=6   )
なお、離面によりできる半正多面体の面は本来3種類あるはずですが、斜方立方8面体ではそのうちの2種類が一致してともに正方形となっています。

離面によりできる立体には別の(より複雑な)名称もあるのですが、挿入された正方形は元々の面と頂点の位置にできた面のいずれに対して斜めになっているので、名称としては頭に「斜方」と付くのが自然だと思います。
英名は"rhomb-"という接頭辞が付きますが、これは通常は「ひし形(の)」という意味です。
しかし、この場合には「斜方」という訳の方が適切でしょう。

斜方立方8面体は、向かい合う2つの正4角台塔(J4)とそれらに挟まれた正8角柱という3つの立体に分解することができます。(台塔についてはジョンソン立体のところで解説します。)
斜方20・12面体からは、切り方により正5角台塔(J5)を2個あるいは3個切り出すことができ、残りも別のジョンソン立体となります。

  (5) 捩(ねじ)り切り
元の正多面体 {p,q} の面を切り離して、それらの間に正3角形を挿入します。
各正p角形の面に1枚ずつ、その頂点に2枚ずつ正3角形が接するようにします。
正3角形のうち pF=2E枚は元の稜の位置にあって、正p角形の面に接していますが、残りのV枚は元の頂点の位置でたの正3角形の面にしか接していません。
正3角形は全部で 2E+V枚となりますが、役割の異なる2種類の正3角形は本来異なるものと考えられます。
また、正p角形は正3角形を挿入したことにより、お互いの位置と向きが少しずつずれています。
これが「捩り切り」という名称の由来です。
捩り切りにより挿入される正3角形の帯は正p角形の間に、反正角柱の側面の帯のように連なっています。

正p角形はF枚、正3角形は 2E+V枚なので、面の数は合計F+V+2E=3E+2枚。
頂点の数は、 qV=pF=2E で、価数は5。
稜の数は、2E+3qV/2=5E本。

捩り切りは、その頂点に正3角形を挿入するため頂点が3価の正多面体にのみ適用され、できた立体の頂点は5価です。
捩り切りを正4面体に適用すると、正20面体になります。
したがって、捩り切りによって新しい半正多面体ができるのは、立方体と正12面体だけです。
      E         価数 V'  E' F'   面の内訳      .
立方体   12 → 変形立方体 5  24  60 38 F3=32=24+8,F4=6
正12面体 30 → 変形12面体  5  60 150 92 F3=80=60+20,F5=12
(参考
正4面体   6 → 正20面体  5  12  30 20 F3=20=(12+4)+4

捩り切りによりできる半正多面体は2種類ですが、ただし、これらはキラル(chiral)です。
すなわち頂点、稜、面の種類などが等しいにもかかわらず、鏡映(平面による反転)によってしか重ならないものが存在します。
(chiralは英語読みではカイラルで、物理でもカイラルとしますが、化学ではキラルと表記するので、そちらに従います。)
これらを区別すれば、捩り切りにより生じる半正多面体の種類は4種類です。

変形正多面体の「変形」に当たる英単語は "snub" で、さまざまな意味をもちますが、この場合は「しし鼻の」(鼻が短く低く上を向いた)、ということはつまり見かけが良くないという意味だと思います(^_^
和名も適当な訳語が見つからず、「変形」でお茶を濁している感がありますね。

離面によりできる半正多面体と捩り切りによりできる半正多面体の関係は、正角柱と反正角柱の関係に対比できます、(これは私の発見?です(^_^

       F'3 F'4 F'5 F"3 F"4 F12 F30 .
斜方立方8面体 8   6  -  -  12  -  -
変形立方体   8   6  -  24  -  -  -
正12角柱     -  - -  -  12   2  -
正12角反柱   -  - -  24  -   2  - 
斜方20・12面体 20  - 12  -  30  -  -
変形12面体   20  - 12  60  -  -  -   
正30角柱     -  - -  -  30  -   2
正30角反柱   -  - -  60  -  -   2
(注) F'3は元の正8面体、正20面体の面の位置に対応する正3角形の面の数、F'4は元の立方体の面の位置に対応する正方形の面の数、F5は元の正12面体の面の位置に対応する正5角形の面の数、F"3はF'3以外の正3角形の面の数、F"4はF'4以外の正方形の面の数。

まとめとして元の正多面体と操作の組合せでできる半正多面体の分類表を載せておきます。
 つくり方による半正多面体の分類
操作   正4面体   立方体  正8面体   正12面体   正20面体
切頂   切頂4面体 切頂立方体 切頂8面体 切頂12面体 切頂20面体
中央切り (正8面体)    立方8面体       20・12面体
二重切り         切頂立方8面体     切頂20・12面体
離面   (立方8面体)   斜方立方8面体     斜方20・12面体
捩り切り (正20面体)   変形立方体        変形12面体


 3.半正多面体とアルキメデス・タイリングの数学的導出
2では(1)~(5)の操作により13種類すべての半正多面体をつくることができました。
しかし、それら以外にも半正多面体の条件をみたす立体が存在するかもしれません。
そこで次に、数式によって半正多面体が13種類しか存在しないことを証明します。

  (1) 半正多面体
さて、正多面体はシュレーフリ記号により、たとえば正8面体であれば {3, 4} と表しました。
正多面体では面をなす正多角形がすべて同じ種類だったのでこれでよかったのですが、複数の種類の正多角形で構成される半正多面体の場合には別の記号が必要です。
半正多面体では頂点周りはすべて合同なので、1つの頂点の周りに集まる正多角形を(たとえば)一番小さい正多角形から始めて隣り合う順にすべて記載すれば立体全体を特定できることになります。
たとえば、正8面体では1つの頂点に正3角形が4つ集まるので、〔3333〕 とすればよいわけです。
同様にして、5種類の正多面体は、
 正4面体 :{3,3}=〔333〕
 立方体  :{4,3}=〔444〕
 正8面体 :{3,4}=〔3333〕
 正12面体:{3,5}=〔555〕
 正20面体:{5,3}=〔33333〕
なお、二桁の面が出てくる場合だけ、〔4,6,10〕 のようにコンマで区切ります。

次に頂点周りがみたすべき半正多面体の条件を考えます。
1つの頂点をつくっている正多角形の辺の数を p1,p2,・・・,pr とします。
ここで r は「価数」で、正多面体のときのqと同じ役割を果たしますが、複数の正多角形を使用するため別の記号にしておきます。
このとき、整数の組合せ 〔p1p2・・・pr〕 が半正多面体を構成する条件は次のa~dの4つです。
a.p1≧3,p2≧3,・・・,pr≧3.これは各面が正多角形からなることを意味する。
b.p1=p2=・・・=pr ではないこと。これは正多面体ではないことを意味する。
c.1つの頂点をつくっている正多角形の内角の和が2π(=360°)より小さいこと。これは頂点が凸であることを意味する。
式で書けば、
  (1-2/p1)π +(1-2/p2)π +・・・ +(1-2/pr)π < 2π
∴ 1/p1 +1/p2 +・・・ +1/pr > r/2 -1
d.r=3 のとき、pi のすべてが偶数か、または番号をうまく付け替えるとp1が奇数、p2=p3 で偶数である。
r=4 のとき、番号をうまく付け替えると、p1=3、かつ p2=p4 が成り立つ。
条件dの意味は、正奇数角形の周りに相異なる辺数の正多角形が来ると、それらを交互に並べても最後に同一の正多角形が並んでしまいうまくいかないので、周りにすべて同じ辺数の正多角形が来るようにするためです。
組合せの求め方の詳細は後で説明することにして、とりあえずa~dの条件を満たす解を r の値別に示します。

------------------ 続 く ------------------

半正多面体のご紹介2:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12471786170.html

 

★ 10月29日、半正多面体のイメージが掲載されている英文wikiと多面体ギャラリーのページのurlが落ちていたので、追加。
★★ 2017年9月2日、「つくり方による半正多面体の分類」の表を追加。