天文・宇宙の俳句・短歌・漢詩から | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

先週の新聞は読売新聞のみ。産経は該当なし。朝日は俳句短歌欄そのものがなかったのですが、他紙と違い選者全員による選句・歌なので、負担が大きいからでしょう。
あと、学士会の漢詩が注目です。

読売新聞2010年1月3日(月)
俳壇
 宇多喜代子 選
   寒林のさやかな月の光かな        (八王子市) 清水 道弥
・「さやか」は女性の名前にもなっていますが、冴えて明るいこと。
葉のすべて落ちた林の中でしょうか。

 正木ゆう子 選
   佇めばわれ冬星の真中なり        (あきる野市) 戸田 幸雄
・「たたずめばわれふゆぼしのまなかなり」
地上の建物や風景などはすべて消えて、星々の中に自分だけが存在していると感じるのは、至福の瞬間でしょう。

歌壇
 栗木京子 選
   アラスカの大地に沈む太陽の太古の空の太陽にも見ゆ
                             (土浦市) 古目谷 和男
・「見ゆ」は「見える」。異郷の地に沈んでいく太陽だからこそ、ふだんとは違って、「太古の空の太陽」に見えたのでしょう。テレビでご覧になったのかも。

新春詠(選者たちによる)
 年移る 矢島 渚男
   星雲のなか此の星に年移る
・「此の」は「この」。いろいろ考えましたが、どういう意味か分かりませんでした。

 初日 正木 ゆう子
   けそうな星空となり年新た
・斬新な視点です。オリオンが一番弦楽器らしく見えますね(^_^ 次はぎょしゃ座の五角形か。

学士会会報2011年1月号
 関西草樹会詠草十月例会(10月7日(木))
   秋晴やノーベル化学賞二人           宮崎 正
・鈴木、根岸お二人のノーベル化学賞受賞は、10月6日に発表されました。

 短歌会詠草十一月歌会(11月21日(日))
   に篭り虚ろに日々を送る身に 光りまぶしき中秋の月
                                鶴岡 信一
・定年退職し生きがいを失って家に閉じこもっている方が、久々に外に出て中秋の名月を眺めているのかと想像しました。

 裁錦会詩草第227回(9月21日(火))
   作詩論考    空潔 須加井 潔
 時光量子誕詩精  時光の量子に詩精しじょうまれ
 複素空間覺智情  複素空間に智情を覚ゆ
 實在觀聴歡喜韻  実在を観聴すれば歓喜の韻
 心珠氣尚士風清  心珠と気尚士風清し
・k:漢詩の作り方を論じているのかと思いますが、前半二行は量子力学に言及しているようです。
漢詩を作るのに複素空間が出てくるのが凄いと思います(^_^
最後の行の「心珠」、「気尚」いずれも分かりませんでした。
「士風清し」は、サムライのような気風がすがすがしいという意味でしょう。
韻は、精、情、清で下平声九青。

   小惑星探査機「隼」  鷗山 村内 必典
 隼君歸國自星躔  はやぶさ君 星のやどより 帰国せり
 七歳探査夛著鞭  七歳ななとせ探査に 著鞭ちゃくべん多し
 巧緻飛行驚世界  巧緻こうみょうせいちな飛行には世界驚く
 六旬研究大成連  六旬むととせの 研究連なる 大成に
 六旬研究大成連  六旬むととせの 研究連なる 大成に
 廿有餘回排練全  廿有にじゅう余回よかい排練リハーサル 全きところ
 離子機關足推力  推力を 離子機関イオンエンジン おぎないて
 近過金兎増翩翩  金兎つきの近くをとおりすますます翩翩へんぺん
 近過金兎増翩翩  金兎つきの近くをとおりすますます翩翩へんぺん
 到達絲川観測圓  糸川に到達いたりて観測かけるな
 採集細塵若神技  細塵採集 神技のごと
 不圖通信絶相連  図らず通信 相連つながり絶え
 不圖通信絶相連  図らず通信 相連つながり絶え
 宇宙迷兒二月仙  宇宙にて迷児まいごとなりて二月の仙
 被逮四年如隕石  つかまえられて四年たち 隕石のごと
 隼君歸國自星躔  はやぶさ君 星のやどより 帰国せり
・k:大意
はやぶさ君が星の世界から帰ってきた
七年間の探査で世界初の偉業をいくつも達成した
巧妙精緻な飛行には世界が驚いた
事前の六年もの研究がこうした成果に実を結んだのだ
二十数回ものリハーサルを行ったから
燃費のいいイオンエンジンを搭載したので、加速を十分行えた
月の近くを通過してスウィングバイによりさらに加速した(実際は地球スウィングバイ)
小惑星イトカワに到達して十分な観測を行った
まるで神業のようにイトカワの微細なチリを採取した
しかし、予想外のことに通信が途絶
宇宙で迷子になって、二ヶ月も行方不明
それでも、地球との通信がなんとか回復し、四年経って隕石のように
はやぶさ君は星の世界から地球に帰ってきた

よく知らないのですが、16句からなるので「排律」という詩形のようです。
句の繰り返しが4回あります。
韻は、躔、鞭、連、全、翩、圓、仙で下平声一先。
星躔は「せいてん」と読み、星のやどり、星宿(中国式の星座)または星を散りばめた空。
著鞭は「先鞭を著(つ)ける」の略で、人よりいちはやく先に物事に手をつけること。
六旬研究と廿有餘回排練は、研究開発段階のことかと思ったのですが、事実関係がよく分かりません。
離子機関はイオンエンジンの中国語。
二月仙は、二ヶ月間仙人のように雲隠れしたという意味。