コクセター『幾何学入門 上・下』の内容紹介第2弾です。
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平面ユークリッド幾何学の等長変換の応用例として、もっとも簡単でかつ面倒な絵を描かなくても理解できる7種類の無限「1次元」対称変換群をご紹介します(p.108-111)。(本当は「1次元」ではなく「1.5次元」です。)
無限「1次元」対称変換群
パターン 生成元 抽象群 .
1.・・・LLLLLL・・・ 併進1個 C∞
2.・・・LΓLΓLΓ・・・ 併進鏡映1個 C∞
3.・・・VVVVVV・・・ 鏡映2個 D∞
4.・・・NNNNNN・・・ 半回転2個 D∞
5.・・・VΛVΛVΛ・・・ 鏡映1個と半回転1個 D∞
6.・・・DDDDDD・・・ 併進1個と鏡映1個 C∞×D1
7.・・・HHHHHH・・・ 鏡映3個 D∞×D1
パターンとは、左右に無限に伸びている帯状模様、すなわち1次元図形であるとします。
「生成元」とは、ここではパターンをそれ自身に移す変換操作のうちで、組み合わせて他の変換操作をすべて生じることのできるものです。
ここには、生成元として「併進」、「鏡映」、「併進鏡映」、「半回転」という4種類の変換が登場しています。
1の生成元は、右に1個分動かす併進です。これをn個組み合わせれば右にn個分動かすことになります。
nが負の数であれば左に動かすことになります。
また、nが0であればまったく動かさない恒等変換になります。
2の生成元は、右に1個分動かしてから上下引っくり返す併進鏡映で、Lを右隣のΓに、Γを同じくLに写します。
この併進鏡映を2回あるいは偶数回繰り返すと、ただの併進になります。
3の生成元は、鏡に映すようにある直線を軸としてその左右あるいは上下を引っくり返す鏡映です。
鏡映の軸はVの中心を上下に貫く線(鉛直線)と2つのVの間の鉛直線の2種類です。
この2つを組み合わせると、併進になります。
4の生成元は、半回転です。
回転の中心は、Nの中心と2つのN間の中心の2種類です。
この2つを組み合わせると、併進になります。
5の生成元である鏡映の軸はV(あるいはΛ)の中心を貫く鉛直線で、同じく半回転の中心はVΛ(あるいはΛV)の中心です。
6の生成元の鏡映の軸は、すべてのDの中央を貫く水平な直線です。
7の生成元の鏡映軸は、Hの中心を通る鉛直線、2つのHの中心を通る鉛直線、すべてのHの中心を貫く水平な直線の3本です。
1~7はすべて対称性が異なることを確認してください。
「抽象群」というのは、変換群の幾何学的な性質を捨象したときの演算の構造のことです。
C∞は「無限巡回群」といい、整数の加法群Zと同じ構造です。
たとえば、1の併進ではLを右に1個動かす操作が+1 に対応し、Lを左に1個動かす操作が-1 に対応します。
D∞は、「無限2面体群」といいます。
たとえば、3のVの中心を通る鉛直線を軸とした鏡映を a、2つのVの間を通る鉛直線を軸とした鏡映を b、恒等変換を e とします。
このとき a2=e、b2=e が成り立ちます(対合の性質)。
また、異なる鏡映の組合せ ab は併進になります。
(2021/5/16追加)
6と7の D1 は、C2 と同じ群です。(D1 という表記はあまり見かけないかと。)
D1 = C2.
位数2で、自明群を除き最も簡単な群であり、コインの裏表をひっくり返すような変換操作が当てはまります。
この場合は、どちらも横軸に関する鏡映に相当します。
★ 2018/8/2追加。川崎徹郎『文様の幾何学』では無限「1次元」対称変換群の代わりに「帯群」と呼び、1~7を順に
ノコギリ、足跡、合せ鏡、ロープ、サインカーブ、むかで、線路
と呼んでいます。的確かつイメージの湧く洒落た表現だと思います。
https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12471786492.html