平面ユークリッド幾何学の等長変換 | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

Coxeter『幾何学入門 上・下』の内容の一部紹介です。

https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12471780747.html

まず、ユークリッド幾何学を第3の流れである変換の面から捉えている第3章です。


「変換」とは、平面上(あるいは空間内)のすべての点の間の1対1の対応のことです。
平面(空間)を平面(空間)に写す操作といってもよいと思います。
最も基本的な変換は2点間の長さを変えない変換で、「等長変換」といいます。(等長変換という言葉が聞き慣れず違和感がある方は、合同変換と読み替えてください。)

平面上の等長変換の分かりやすい例をいくつか挙げると、まず「併進」(平行移動)があります。
また、1点を中心とする「回転」があります。
回転のうちでも180°の回転である「半回転」は特別に重要です。
さらに、各点を線対称の位置に写す「鏡映」が挙げられます。
これらの変換はすべて等長変換です。

変換の集合が、1.恒等変換、2.変換の積、3.変換の逆 を含むとき、「群」と呼びます。
「恒等変換」とは「何もしない」ということです。
恒等変換は通常 1 で表されます。
2つの変換の「積」とは2つの変換を続けて行うことで、記号では掛け算のように続けて書きます。
一般には変換の順序を入れ替えると、結果は異なります。
   f・g ≠ g・f
すべての変換同士が交換可能(fg=gf)である群を「可換群」と呼びます。
そうでないものは「非可換群」です。
最後に、ある変換gの「逆」g^-1というのは、元の変換と続けて行うと前に戻るもののことです。
   g・g^-1 =g^-1・g = 1

恒等変換は、今の場合、等長変換の特別なものと考えられます。
たとえば、長さ0の併進と考えても、角度0の回転と考えてもよいでしょう。

同じ鏡映を繰り返すと、恒等変換となります。半回転についても同様です。
このことを鏡映と半回転は「対合」であると言い表します。
でも、読み方は「たいごう」なのか「ついごう」なのか分かりません(^^;

2つの等長変換の積は、また等長変換となります。
併進同士の積は併進、回転同士の積は回転、回転と併進の積は回転です。
鏡映同士の積は2本の鏡映軸が平行ならば併進、それ以外の場合には鏡映軸の交点を中心とする回転となります。
ただ、鏡映と併進の積は以上で出てきた変換ではなく、併進鏡映というものになります。
「併進鏡映」(glide reflection)とは、直線aを軸とする鏡映とaに沿った併進の積です(p.100)。
これも等長変換の一種です。

併進、回転、鏡映、併進鏡映の逆は、すべて元の変換と同じ種類の変換になります。
以上から、等長変換の集合は群をなすことが分かります。(少しはしょりましたが、後の表を参照してください。)

変換が「正格」であるとは、右手(左手)を右手(左手)に写すことです。
変換が「変格」であるとは、右手(左手)を左手(右手)に写すことです。
正格変換に+1、変格変換に-1を対応させると、掛け算の規則に従っています。
(変格変換を2回繰り返すと正格変換になるのは、-1×(-1)=1に対応するなど。)
すべての変換は正格と変格のいずれかに二分されます。

変換を特徴付けるものとして、もう一つ不動点があります。
「不動点」とは、名前の通り変換によって動かない点のことです。
回転での不動点は1点ですが、併進では不動点はありません。

また、平面上の等長変換は、すべて3以下の鏡映の積で表すことができます。
恒等変換は、鏡映の数が 0 の場合です。

以上の結果を、説明を省いた点も含め2つの表にまとめておきます。
この表は私のオリジナルです(今後投稿する予定の相似変換の表と空間の表も同様)。

   ユークリッド平面(2次元)の等長変換
         不動点   例(x, y)  鏡映の回数
 恒等変換 正格 全平面   (x, y)       0
 併進   正格  なし    (x, y+1)    2
 回転   正格  1点    (-y, x)     2
(半回転   正格  1点    (-x,-y)   2 )
 鏡映   変格  直線    (-x, y)    1
 併進鏡映 変格  なし    (-x, y+1)  3
(注) この表の見方:ユークリッド平面の等長変換はすべてこれらのうちのいずれかとなる。

   等長変換の積
       恒等変換  併進   回転  鏡映    併進鏡映  
 恒等変換 恒等変換  併進   回転  鏡映    併進鏡映
 併進    併進   併進   回転  併進鏡映  併進鏡映
 回転    回転   回転   回転  鏡映    併進鏡映
 鏡映    鏡映   併進鏡映 鏡映  併進or回転 併進or回転
 併進鏡映 併進鏡映 併進鏡映 併進鏡映 併進or回転 併進or回転
(注) この表の見方:表側の変換に表頭の変換を掛けると、縦横交わる箇所の変換となることを表す。


★ 皆さまのご希望は『ワープする宇宙』の書評の続きだと思うのですが、手こずっているため、コクセターの続きを先に載せます。
かなり長いです(^^;
このシリーズで時間を稼いでいる間に『ワープ』の方を何とかまとめたいと考えています。