フラーレンの5角形の面は必ず12枚 | 宇宙とブラックホールのQ&A

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2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

前回の記事「サッカーボールとフラーレン」で
>5角形と6角形のみから構成される多面体については、5角形の面の数は常に12個となり他の面はすべて6角形となることが数学的に証明されており、もちろん実際のフラーレンもそういう構造となっています。
(これはオイラーの定理を前提とすれば中学生でも理解できる証明なので、ご希望があれば掲載します。)
https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12471780589.html

と書きましたが、ご希望がなくても掲載することにします(^_^

正5角形の内角は108°、正6角形の内角は120°です。
したがって、問題とする多面体の各辺の長さがほぼ一定であれば、一つの頂点に集まる面の数は3枚に限られ、一つの頂点に集まる辺の数もすべて3本となります。
フラーレンは炭素原子の単体ですからこの条件を満たしています。

以下では「面が5角形と6角形のみからなりかつ頂点がすべて3価である多面体」の5角形の面の数が必ず12枚となることを証明します。
途中まで多面体一般について成立する定理として証明を行い、最後にこの多面体独自の条件を入れることとします。

面の数をF、辺の数をE、頂点の数をVで表すことにします。
(それぞれface、edge、vertexの頭文字です。)

3角形の面の数をF3、4角形の面の数をF4、一般にn角形の面の数をFnで表します。
面の数Fはそれらの合計ですから、次の式が成り立ちます。
  F = F3 +F4 +F5 +F6 +F7 +・・・

3角形の面は3辺で囲まれており、4角形の面は4辺で囲まれており、一般にn角形の面はn本の辺で囲まれています。
一辺は2枚の多角形にはさまれていますから、辺の数EとF3等々の間に次の式が成り立ちます。
  2E = 3F3 +4F4 +5F5 +6F6 +7F7 +・・・
     ≧ 3(F3 +F4 +F5 +F6 +F7 +・・・) = 3F
ゆえに
  2E ≧ 3F
これを握手定理といいます。
なお、等号が成り立つのは、面がすべて3角形であるときです。
(こちらの握手定理は以下では使いません。)

ある頂点から出ている辺の数がn本のとき、その頂点をn価の頂点である、あるいはその頂点の価数はnであるということにします。
3価の頂点の数をV3、4価の頂点の数をV4、一般にn価の頂点の数をVnで表します。
頂点の数Vはそれらの合計ですから、次の式が成り立ちます。
  V = V3 +V4 +V5 +V6 +V7 +・・・

n価の頂点からはn個の辺が出ていますが、1本の辺の両端には2個の頂点があります。
したがって、辺の数EとV3等々の間に次の式が成り立ちます。
  2E = 3V3 +4V4 +5V5 +6V6 +7V7 +・・・
     ≧ 3(V3 +V4 +V5 +V6 +V7 +・・・) = 3V
ゆえに
  2E ≧ 3V
これもまた握手定理といいます。
なお、等号が成り立つのは、頂点がすべて3価であるときです。

オイラーの定理 F -E +V = 2 の両辺を3倍すると
  3F -3E +3V = 6
∴ 3V = 3E -3F +6
この式を握手定理 2E ≧ 3V に代入すると、
  2E ≧ 3E -3F +6
両辺を整理して
  3F ≧ E +6
Eを移項して両辺を2倍すると
  6F -2E ≧ 12
等号が成り立つのは、頂点がすべて3価であるときだということを思い出してください。
次の2つの式を左辺の両項に代入します。
  6F = 6F3 +6F4 +6F5 +6F6 +6F7 +・・・
  2E = 3F3 +4F4 +5F5 +6F6 +7F7 +・・・
すると、
   6F -2E = 3F3 +2F4 +F5 -F7 -・・・
         ≧ 12
∴ 3F3 +2F4 +F5 -F7 -・・・ ≧ 12
6の項がきれいに消えていることにご注目ください。

ここで、「面が5角形と6角形のみからなりかつ頂点がすべて3価である」という条件を加えます。
面の条件から
  F3 = F4 = F7 = ・・・ = 0
これを代入して
  F5 ≧ 12
一方、頂点がすべて3価なので、等号が成り立ちます。したがって、
  F5 = 12
証明終わり。


多面体の連載など一覧:https://ameblo.jp/karaokegurui/entry-12598605490.html

★ 数学の証明を載せるのは当ブログにそぐわないかもしれませんが、「ご希望があれば」とかいうのはもったいぶった気がした(^^;ので、出し惜しみしないことにしました。

なお、リサ・ランドールさんのピンク本は厚さを含め大変充実しているため、予想外の苦戦中です。
でも、理解できないということではないので、時間をかければ読了はできると思います。