自然科学の俳句・短歌から | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

朝日新聞2008年11月3日(月)
俳壇
 稲畑汀子 選
   見上げたるシャトルの先の秋の空     (徳島市) 真鍋 万緑
・選者評:スペースシャトルが宇宙にとび立つ形で停められてある上の秋の空は青く今にも発射されそうな雰囲気である。21世紀の一齣を描いて妙。

   金環に抱かれとろけさうな月        (福知山市) 宮本 幸子
・金環とは、ツワブキの品種の一つで葉に美しい金色の縁取りが入ります。
金環の葉の間に月が見えたのでしょうが、「抱かれとろけさう」にニヤリとしました。
日食の一種である金環食とは無関係。

歌壇
 高野公彦、永田和宏 選
   秀才で温和な人と天才肌でやんちゃな人とがノーベル賞受く
                            (名古屋市) 諏訪 兼位
・高野選者評:小林誠氏・益川敏英氏の受賞をことほぐ歌。作者は名大理学部に在職中、同じ学部の院生だった二人の顔をよく覚えているそうだ。

 高野公彦 選
   85万匹100トンのクラゲ調べぬき蛍光の(もと)を突き止めし学者(ひと)
                             (三木市) 清 美佐保
・下村脩さんのノーベル化学賞受賞。
縦書きより横書きが似合う歌も珍しいでしょう(^^

   原人も光源氏も()でたるか淡路島(あわじ)にかかる今宵の月を
                             (神戸市) 内藤 三男
・原人と光源氏の対照が面白いです。

   人類(ひと)なくて地球始まりまた終わるそうだとすればなぜか淋しい
                             (東久留米市) 田村 精進
・私は別に淋しいと思わないのですが。筆者のような感覚が普通なのでしょうか。

 永田和宏 選
   初めての海外旅行がノーベル賞受賞の旅とう学者に乾杯
                             (長崎市) 青木英夫
・益川さんのお人柄に感銘を受けたのでしょう。

   千年を越えたる神の大楠に樹医の塗りたる黒き薬液
                             (大牟田市) 鹿子生 憲二
・千年を超えれば大楠も神の域に達するのでしょうが、百年にも満たない命の人間がその神を助けることもできるのです。
黒い薬液もいいです。

   等高線粗なり密なり久々に古き地図帳出して開けば
                             (坂戸市) 山崎 波浪
・等高線の粗密が傾斜の緩急を的確に表現しているのが地図帳。

読売新聞2008年11月3日(月)
俳壇
 森澄雄 選
   柳散る伊能忠敬記念館             (香取市) 関 沼男
・柳散るは仲秋の季語。
伊能忠敬が名主を務め記念館の建てられた佐原は、今は千葉県香取市の一部となっています。

 小澤實 選
   秋の雨宇宙生まれて拡がりぬ         (東京都) 芹沢 宏樹
・秋雨のそぼ降る中、宇宙の歴史に思いを馳せる。
えーなー。今回の一押し!

日本経済新聞2008年11月2日(日)
俳壇
 黒田杏子 選
   大阿蘇の芋名月でありにけり          (阿蘇市) 井沢 俊子
・選者評:仲秋の名月、十五夜の月を芋名月ともいい、この日、芋を月に供える。
阿蘇のように雄大な景色は、日本にはそうそうないと思います。
「大」を付けるのにふさわしいかと。

   哲学も宗教も過去夜長し             (新潟市) 長谷川 ふさを
・哲学も過去、宗教も過去なら、科学が現在? それとも科学も過去なのかな?

歌壇
 岡井隆 選
   早き瀬の凹凸に添ひ入り組める渦克明に見ゆる秋晴れ
                               (飯能市) 松本 和子
・流体力学です(^_^ カルマン渦とか。

毎日新聞2008年11月2日(日)
俳壇
 大峯あきら 選
   冬瓜の落ちてニュートン正しかり       (平塚市) 吉原 俊一
・万有引力はもちろん林檎の専売特許ではありませんね(^^

歌壇
 加藤治郎 選
   有珠山に神々がいて山肌のいたるところで煙が上がる
                             (生駒市) 宮田 修
・地球科学ですが、こういうアニミズム的発想は日本人に共有されていると思います。

  白黒の映像なのに記憶には色が付いてる「ウルトラQ」
                             (神戸市) 北村行生
・ウルトラマンの2年前に放映されていた懐かしい怪獣番組の元祖。

産経新聞2008年11月2日(日)
歌壇
 小島ゆかり 選
   夕暮に白光はなつ半月は夜へ夜へと明るくなりぬ
                             (川越市) 山本 泰寛
・夕暮の光に負けて白く見えていた南天の空高い上弦の月が、太陽光が薄れるにつれてより明るくなりながら、次第に西に傾いていきます。
「夜へ夜へ」の繰り返しがいいですね。