書評で取り上げた本の分類5 | 宇宙とブラックホールのQ&A

宇宙とブラックホールのQ&A

2019年6月6日にYahoo!ブログから引っ越してきました。よろしくお願いします。

これまで書評で取り上げた計56冊を難易度別に整理したものです。
随時更新することとしていて、今回が5回目。
*印を付けた本が今回新たに取り上げたもので、計5冊。その他下線部分を追加・修正。

書評自体は、URLを貼ると字数がすぐオーバーするので、恐れ入りますが書庫「書評」の「リスト」から探していただきたいと存じます。

1.まったくの素人でも読める入門書、科学に関連する文芸本など。9冊
『宇宙を読む』:中公新書。カラーも多く、天文の入門に最適。
『カラー版 宇宙はきらめく』:岩波ジュニア新書。ハッブル宇宙望遠鏡による美しいカラー天体写真集。
『カラー版 すばる望遠鏡の宇宙』:岩波新書。すばるによる画像と建設時のエピソードを責任者が紹介。
『宇宙をうたう』:中公新書。天文に関係する詩歌を集める。科学書ではないがいい本。
『人物で語る物理入門(上・下)』:岩波新書。読みやすい。物理の入門に最適。
『疑似科学入門』:岩波新書。疑似科学批判。複雑系科学に対する言及が目新しい。
『科学を短歌によむ』:岩波科学ライブラリー。理工系に対する短歌のすすめ。科学者の詠んだ短歌を多数紹介。
*『和算小説の楽しみ』:岩波科学ライブラリー。日本の江戸時代の数学を担った市井の数学者たちを題材とした小説分野のブックガイド。

2.数式のない啓蒙書。ある程度知識があるほうが読みやすい。19冊
『宇宙旅行ガイド』:太陽系から宇宙論まで天文学各分野の専門家が分かりやすく分担執筆。二色刷り。
『宇宙物理学入門』:ブルーバックス。入門レベルの無難な教科書。縦書き。
『宇宙はどこまで明らかになったのか』:サイエンス・アイ新書。最前線の研究成果を分かりやすく紹介。カラー図版が多い。
『人類の住む宇宙』:シリーズ現代の天文学第1巻(導入の役割)。ハードカバーの本格的な天文学入門書。読みやすく内容は深い。
『宇宙に果てはあるか』:新潮選書。科学史家の書いた20世紀宇宙論の試行錯誤と論争の歴史。
『地球システムの崩壊』:新潮選書。地球惑星科学とそれに基づく文明論を一般向けに解説。
『宇宙を哲学する』:岩波双書哲学塾。科学ではなく哲学書。近代自然哲学、特にカントのアンチノミー(二律背反)が中心。
『暗黒宇宙で銀河が生まれる』:サイエンス・アイ新書。間違いが多く、あまりお勧めできません。
『歴史を揺るがした星々 天文歴史の世界』:Einstein Series。前半が天文歴史、後半が天文史跡の紹介。
『宇宙の一生 最新宇宙像に迫る』:Einstein Series。シリーズのまとめとして宇宙論、銀河、恒星の一生、星間物質、惑星系などについて解説。
『銀河進化の謎』:UT Physics。銀河の入門書決定版。このシリーズとしては例外的にやさしい。
『宇宙のエンドゲーム 誕生から終焉までの銀河の歴史』:ちくま学芸文庫。文庫の啓蒙書ながら本格的大著。宇宙の遠い未来までの予測。
『ブラックホールを見る!』:岩波科学ライブラリー。ブラックホールの入門書決定版。
『カンブリア爆発の謎』:知りたい!サイエンス。進化=古生物学。古生代の動物40種以上の復元図など図版が多く、それだけで楽しめる。
『江戸の天文学者 星空を翔ける』:知りたい!サイエンス。江戸時代の天文学者たちを興味深く記述。主に当時の天文儀器や天文観測記録の面からアプローチ。
『ヨハネス・ケプラー』:ちくま学芸文庫。天文学者ケプラーの生涯と業績を詳細に紹介。古代・中世と近代科学の分水嶺にまたがると評価。
*『アストロバイオロジー 宇宙が語る<生命の起源>』:岩波科学ライブラリー。生命の起源の問題に宇宙からアプローチ。『宇宙生物学入門』よりやさしく読みやすい。
*『最新地球史がよくわかる本』:図解入門。地球史入門の決定版。紙数のわりに値段が安い。
*『大人の時間はなぜ短いのか』:集英社新書。心理学的時間論の入門書。

3.理系向けの啓蒙書。数式をある程度含む。10冊
『暗黒宇宙の謎』:ブルーバックス。暗黒をキーワードにした天文・宇宙論。
『宇宙の灯台 パルサー』:Einstein Series。パルサーについて簡単な実験を引合いに出して解説。中性子星にはほとんど触れない。
『ブラックホール天文学 基礎編・応用編』:Einstein Series。福江純さんがブラックホールの諸側面について2冊使って解説。
『空間の謎・時間の謎』:中公新書。「時空の関係説」に関する論争と現代的復興を紹介した科学哲学・科学史の本。
『元素はいかにつくられたか』:岩波講座物理の世界。最先端の研究者たちが星の進化と超新星爆発について元素合成の観点から丁寧に解説。
『相対論の正しい間違え方』:パリティブックス。相間対策の必読基本文献(笑)
『いまさら宇宙論?』:パリティブックス。宇宙論の重鎮による批判と反省の本。相当クセがある。3の中では難しいほう。
『ものの大きさ』:UT Physicsシリーズ第1巻(導入の役割)。物理全般だが、各種天体を一通り取り上げている。レベルは3と4の中間。
『宇宙生物学入門 惑星・生命・文明の起源』:地球外知的生命だけでなく、前提となる恒星進化、惑星系形成、地球史、進化論など非常に幅広い分野をカバー。

4.専門書。高度な数式が多く難しい。6冊
『宇宙論II 宇宙の進化』:シリーズ現代の天文学。観測的宇宙論、ゆらぎによる構造形成。
『銀河I 銀河と宇宙の階層構造』:シリーズ現代の天文学。銀河の形態分類、形成と進化、相互作用。銀河団。
『銀河II 銀河系』:シリーズ現代の天文学。銀河系と局所銀河群(アンドロメダ銀河、大小マゼラン雲など)
『一般相対論の世界を探る』:UT Physicsシリーズ。重力波と数値相対論。
『太陽系と惑星』:シリーズ現代の天文学。このシリーズとしては例外的に数式が少なく読みやすい。レベルは3と4の中間。
*『ブラックホールと高エネルギー現象』:シリーズ現代の天文学。コンパクト星と付随する降着円盤・宇宙ジェット、宇宙線、ニュートリノ、重力波、ガンマ線バースト。

5.教科書。9冊
 5-1 高校レベル
『新しい高校物理の教科書』:ブルーバックス。物理。左巻健男さんのグループ。
『新しい高校地学の教科書』:ブルーバックス。地学(含む天文)。左巻健男さんのグループ。

 5-2 大学レベル
『新版 天文学史』:ちくま学芸文庫。本格的な分厚い教科書。学史なので数式なし。
『ゼロからの力学II』:物理。力学初歩の後半で、角運動量、ケプラーの法則など。
『新感覚物理入門』:力学と電磁気学に関し新しい見方を提供。流体物理学の大家が執筆。
『趣味で物理学』:ネットで超有名な"EMANの物理学"のうち力学と電磁気学を書籍にしたもの。物理学入門レベルの教科書として最適。
清水『熱力学の基礎』:熱力学を一貫性と論理的明快さをもって展開。エントロピーが温度より先に出てくる。
田崎『熱力学 現代的な観点から』:培風館新物理シリーズ。マクロな仕事を主役とする操作的な視点から熱力学全体をとらえる。ネット上でも名著の誉れ高い。
『キーポイント フーリエ解析』:数学。波を分析するのに不可欠なフーリエ解析について要点を解説。

6.データ集など。3冊
理科年表2007年版:日本が世界に誇るコンパクトな自然科学データ集。
理科年表2008年版:同上の最新版。
『パソコンで宇宙物理学 計算宇宙物理学入門』:掲載プログラムを自分で打ち込んで計算する本。CD-ROMなし。計算結果は数値のみでグラフィックなし。範囲は広い。


参考:各シリーズの紹介
  新書・文庫・啓蒙書シリーズなど
・岩波新書、中公新書、講談社現代新書、集英社新書:それぞれ岩波書店、中央公論社、講談社、集英社が発行する新書。文系のテーマのものが多い。岩波、中公、講談社現代は新書の3大老舗。
・ブルーバックス:講談社の出している実績ある理工系の新書。横書きがほとんど。
・サイエンス・アイ新書:ソフトバンク・クリエイティブが最近刊行を始めたシリーズ。横書き。カラー図版が多く、全般的にブルーバックスよりもやさしい。テーマは理工系だが、文系の読者も狙う。
・ちくま学芸文庫:筑摩書房。学術書の古典を収録。理系のものも多い。分厚いものも薄いものもある。
・岩波科学ライブラリー:岩波書店。縦書きの科学啓蒙書シリーズ。B6判(新書と縦が同じで横幅が広い)。比較的薄い。\1,000~¥1,300
知りたい!サイエンス:技術評論社。縦書きの科学啓蒙書シリーズ。「雑学本より奥が深く入門書よりやさしい」というウリ。B6判。¥1,580
*図解入門:秀和システム。2色刷。シリーズ名どおり図版が多い。書名に「よくわかる」が含まれるものが多い。A5判。千円台前半~二千円台前半。

  専門書のシリーズ(原則横書き)
・シリーズ現代の天文学:日本評論社。日本天文学会が創立100周年を記念して総力を挙げて刊行する教科書シリーズ。ハードカバー。篤志家の寄付により内容とページ数の割りに値段が相当抑えられている。菊判(A5判よりやや大きい)。2千円台。
・EINSTEIN SERIES:恒星社厚生閣。天文学。啓蒙書の一つ上を狙うのはいいが、本文各ページにカラーを入れているため、値段がやたら高いのが欠点。A5判。\3,300。
・パリティブックス:丸善。同社の発行している物理学雑誌「パリティ」の連載などをまとめたシリーズ。読み物風で、縦書き、横書き両方ある。四六判(B6判よりやや縦長)。1千円台。
・岩波講座物理の世界:岩波書店。物理各分野の入門から最先端までを全85冊でカバー。一冊ごとのページ数は比較的薄い。四六判。1千円台。
・UT Physicsシリーズ:東京大学出版会。物理の最新研究成果を紹介しており、レベルが高い。A5判。\2,400.

  その他
・新潮選書:新潮社。文系向け。1千円台前半。